XRが都市空間を「あそび場」に変える——港区ロクサンひろばで始まった、デジタル遊具の常設インフラ化
公開日
- ヒアリング先
- 株式会社STYLY地域共創プロデューサー澤田 有人 氏
STYLYのサービスの概要、特徴
株式会社STYLY(東京都新宿区、代表取締役:山口征浩)は、不動産デベロッパーやランドオーナーを株主に迎え、創業10年を超えた空間テクノロジー企業です。ミッションに「人類の超能力を解放する」を掲げ、AR(拡張現実)・VR(仮想現実)・MRが融合したXR技術により、町・施設・建物に新たな付加価値を継続的に生み出すことを目指しています。
同社が提供する「STYLY」は、空間レイヤープラットフォームとして位置づけられ、現在、ランドオーナーや街づくりに携わる事業者向けに空間プロデュースやソリューションを提供するほか、個人クリエーターや投資家、自治体と連携しながら新たな文化・産業の創出を目指しています。
STYLYは「その場所でしか体験できない」を意味するLocation-Based Entertainment(LBE)を始めとする事業を展開しています。例えば、東京ドームシティの「Space Travelium TeNQ(スペーストラベリウムテンキュー)」では、VRで体験できる未来の宇宙旅行『THE MOON CRUISE』を開発し、常設での運用実績を誇ります。また、虎ノ門ヒルズTOKYO NODEで開催された『攻殻機動隊展 Ghost and the Shell』の展覧会では、KDDIがプロデュースするARグラス体験『電脳VISION』の体験基盤の提供およびコンテンツ制作を担当し、ARを活用した展示ビジネスの可能性を広げました。今年4月には東急不動産とともに、環境保全を鑑みた常設のエデュテインメントVR『AnimaLOOK!!』を「東急リゾートタウン蓼科」で常設提供をスタートさせ、12月には、JR西日本グループとともに京都鉄道博物館に新設される「VR館」において、鉄道を通して「過去・現在・ミライ」を体感するVRを公開する予定です。
他にも、屋外で手軽に体験できるスマートフォンARも提供しており、屋外での安全面を考慮しながら都市空間にARを重ねて表示するコンテンツを多数展開しています。例えば、ウルトラマンシリーズ60周年を記念して実現した、横浜の街で展開するストーリー没入型ARアクション体験『緊急指令!ウルトラマルチバース 地球防衛大作戦 in 横浜赤レンガ倉庫』は、三菱商事都市開発、STYLY、ローソンエンタテインメントの3社で構成される「ウルトラマルチバース実行委員会」によって開催され、今年11月末まで体験することができます。
また、2022年に東京都のスマート東京プロジェクトに採択されたことを契機に、西新宿タイムズアベニューで都市開発の過去・現在・未来が体感できるAR体験、扇橋閘門の稼働をいつでも見られる『扇橋閘門XRクルーズ』など、観光・学習資源としてのXRコンテンツを自治体と共に創り出す取り組みを続けています。
今年予定している株式会社palanとの経営統合により、アプリインストール不要で体験できる「STYLY WebAR」の提供も開始されました。WebARからLBEまで、事業者を支援するXR体験の包括ソリューションを提供しています。
2. 港区児童遊園「ロクサンひろば」の概要と背景
港区六本木三丁目に位置する「ロクサンひろば」は、その名の通り「ロク(六)サン(三)」の地名に由来する児童遊園です。ロクサンひろばが立地するのは、六本木の繁華街のど真ん中です。本遊園には一つの大きな制約があります。それは「児童遊園」という区分上、遊具を自由に設置できないという点です。広大な公園ならばブランコや滑り台、アスレチックを置くことができますが、都心の限られたスペースかつ周辺環境に配慮が必要な場所では、フィジカルな遊具の整備には限界があります。この課題に対する新しいアプローチがXRコンテンツの常設インフラ化です。
3. 港区児童遊園「ロクサンひろば」の取組のポイント
ロクサンひろばの最大の特徴は、XRコンテンツが「常設」で提供されている点です。スマートフォンでQRコードを読み込むことで誰でも無料で体験でき、2025年4月のオープン以来、いつでもアクセスできる状態を維持しています。STYLYの山口征浩代表は「ARはデバイスを通じないとそこにあることが感じられない。だからこそ常設で置き続けることに意味がある。今後共通のデバイスとアプリを持つ人が増えた際に、そこにXRコンテンツがあることが共通認識になり、楽しい場所だとわかるようになる」と語ります。
2026年現在、ロクサンひろばでは4つのXRコンテンツが常設されています。「ロクサン花火」は、スマートフォンをかざすと公園内にミニチュアの六本木三丁目の街並みが出現し、リアルな街と連動した花火大会をARで楽しめるコンテンツです。「ロクサンギャラリー」は子どもたちが描いた絵を公共の場に展示できる仕組みで、ARで額縁が出現し、子ども自身がアーティストとしてデビューできる体験を提供しています。「ロクサンいきもの探検隊」では、公園内にリアルな動物が出現し、まるで動物園のように観察・撮影が楽しめます。さらに最新のコンテンツとして「水族館」が加わり、南国の楽園を思わせる熱帯魚の水槽や深海の世界が体験できます。水族館コンテンツは、港区と連携協定を結ぶ姉妹都市・福島県いわき市の「アクアマリンふくしま」と共同制作されたもので、地域資源を活かした教育・観光コンテンツとしても機能しています。
ロクサンひろばの取り組みは、新しい都市インフラとしてXRを用いる先進的な事例と言えるでしょう。
また、今後の技術進化も見据えた展望も語られました。現在はスマートフォンARが主流ですが、ARグラス・スマートグラスの技術が急速に進化しており、2026〜2028年頃を目途に移行が始まると見込んでいます。MetaのAIグラスやグーグルとXREALの共同開発のARグラスなど、ビッグテックの参入が本格化しつつある中、STYLYはKDDIとともに、東急不動産HD、JFR、テレビ朝日、MUFGなど業界横断25社が参画して映画に続くグローバル配給網を構築するコンソーシアム「LBEC」を設立しました。今後は場所に紐づいたストーリー・エンターテインメント性の高いコンテンツを配信できるプラットフォームとして存在するだけでなく、ガイドラインの構築を通じて全世界の体験を流通させていくという独自の付加価値でプラットフォームとしての存在感を高めていく方針です。
株式会社STYLY:https://styly.inc/ja/
参考:https://styly.inc/ja/news/rokusan-hiroba-xr/
コメント
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
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今回のヒアリングを通じて、「XRを都市インフラとして常設する」というSTYLYのアプローチに、テクノロジーの社会実装における本質的な視点を見出しました。ロクサンひろばは単なるデジタルコンテンツの展示場ではなく、「子どもたちが来たくなる場所をXRで作る」という意志のもとに設計されています。遊具を置けない都心の公園という物理的制約を逆手に取り、むしろXRだからこそ実現できる遊び場を創出したその発想の転換に、インクルーシブテクノロジーの可能性を強く感じました。
特に印象に残ったのは「常設」にこだわる姿勢です。ARコンテンツはデバイスを通じなければ「そこにある」ことが伝わらない宿命を持ちます。だからこそ置き続けることで文化を醸成し、XRが当たり前のインフラになる未来を先取りする考え方は、看板や信号機が都市空間に当然存在するように、デジタル情報が空間に溶け込む「空間コンピューティング時代」を見据えた戦略です。
水族館コンテンツで姉妹都市・いわき市のアクアマリンふくしまと連携しているなど、地域の文化資源をXRで「可視化」する取り組みも興味深いと感じました。物理的にその場に来られない人、あるいは訪れることが難しい自然・生き物をスマートフォン一つで体験できるという仕組みは、インクルーシブな学びの場の創出という観点でも大きな意義を持ちます。
近い将来、ARグラスやスマートグラスが普及し、空間そのものが情報を纏う時代が来るでしょう。ロクサンひろばはその「走り」として、テクノロジーと地域コミュニティの関係性を再定義する実験場でもあります。XRによって「行きたくなる公共空間」が増えていけば、都市の課題を解決しながら子どもたちの創造力を育む新しいインフラが広がっていく、そのような可能性の手応えを感じたヒアリングでした。障がい者・高齢者・外国人など多様な人々にとっても、デジタルが空間のバリアを取り払う手段として機能し得ることを、このプロジェクトは示しています。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
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それらがシステム上で検証された後に記事にコメントとして表示されています。VCとは
VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。









須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー