生成AI×XRで「誰も迷わせない」施設体験を――VRTalkのARナビゲーションがスタジアム・観光施設を変える
公開日
- ヒアリング先
- VRTALK株式会社代表取締役 張 顕赫 氏
VRTalk株式会社は、デジタルツイン・XR(VR/AR)・生成AIを融合した独自プラットフォームを開発するテクノロジー企業です。3Dスキャナーで現実の施設を丸ごとデジタル化し、ノーコードでXRコンテンツを編集・配信できるほか、生成AIによる対話・案内にも対応しています。スタジアムでスマホをかざすだけで自分の座席までの最短ルートをキャラクターが先導してくれるARナビゲーションや、座席からの見え方をVRで確認できるチケット販売の仕組みなど、スポーツ施設・観光施設・商業施設の「体験DX」を次々と実現しており、実証実験では約9割の来場者が迷わず座席まで到達するという成果も出ています。本記事では、生成AI×XRがひらく「誰も迷わせない」インクルーシブな施設体験の可能性をご紹介します。
1.生成AI×XRによるVRTalkのソリューションの概要、特徴
VRTalkは2018年設立の東京のスタートアップで、3DVR制作・CG制作、XRソフトウェア開発、生成AIソリューション開発、空間認識・VPS技術開発を手がけています。独自の3DCG空間構築方法で特許を取得し、情報セキュリティの国際規格であるISO27001認証も取得。博報堂、ソフトバンク、PayPay、阪急阪神不動産、竹中工務店、名古屋グランパスエイト、福岡ソフトバンクホークスなど、中小企業から大手企業まで幅広い導入実績を持っています。
同社のソリューションの土台となるのが、現実空間の「デジタルツイン化」です。Matterport社の3Dカメラなどの先進機器で施設を丸ごと3Dスキャンし、高品質なバーチャル空間を構築します。構築した空間は、同社が独自開発したノーコードのXR編集プラットフォーム「VRTalk」で編集でき、3Dモデル・画像・動画・タグ・AIナレッジなどを専門知識がなくても配置できます。編集したコンテンツはWebやモバイルアプリで簡単に配信でき、「VRで編集し、ARで体験する」という一連の流れをワンストップで実現できることが大きな特徴です。
さらに、生成AIとの融合が同社ならではの強みです。バーチャル空間に業務知識や施設情報を学習させることで、ユーザーはVR空間内でAIに質問しながら、まるで現地にいるかのように情報を得ることができます。空間内の位置情報に応じて生成AIが画像や動画を自動提示し、必要な情報を分かりやすく案内してくれるため、言語の壁や固定的な質問枠組みを超えて、ユーザーと空間が自然な対話でつながります。
こうした技術を大規模施設で支えるのが、独自開発のARソリューション「PositionX」です。最新のビジュアルAIと空間データ解析技術を組み合わせ、GPSの届かない屋内でも高精度な位置認識とAR表示を実現します。あらかじめスキャンした空間の点群データとスマホのカメラ映像を照合して現在地を計算する仕組みで、数秒ごとに位置情報を補正し続けるため、スタジアム・アリーナ・観光施設・工場といった広大で複雑な環境でも安定したAR体験を提供できます。
2.VRTalkのサービスの活用例
(1)スポーツ施設(スタジアム)での活用
象徴的な事例が、株式会社名古屋グランパスエイトと共同で取り組んでいる「大規模スポーツイベントにおける来場者を迷わせない観戦体験の設計」です。約4万席を擁するスタジアムは、複雑な席種やアクセス規制、広大な敷地に多数の売店・ブースが並ぶ情報量の多さ、人混みによる移動の制約など、初めての来場者にとってハードルの高い空間です。配置できるスタッフの数にも限界があり、観戦体験の価値低下が課題となっていました。
VRTalkはスタジアム全体を3Dスキャンしてデジタルツイン化し、チケット情報を入力するとマスコットキャラクターが自分の座席までの最短ルートを先導してくれるARナビゲーションを開発しました。2026年2月の開幕戦・公式戦で50組の来場者を対象に実証実験を行ったところ、90%が座席まで到達でき、85%が「便利だと思う」、73%が「アプリをダウンロードしたい」と回答するなど、高い評価を得ています。階段のあるエリアではあえてルート表示を控えて安全に配慮するなど、実際の観戦環境を踏まえた細やかな設計もなされています。
また、福岡のPayPayドームでは、約4万席すべての「座席からの見え方」を360°CGで確認できるチケット販売システムのVRソリューションを提供しています。平面図だけでは分からなかった見え方を購入前に確認できるため、来場者は安心してチケットを購入でき、球場側は座席に関する問い合わせ対応の負荷を大幅に削減できました。年間シートのような高額な座席の検討を後押しする効果もあり、球場の業務DX化と生産性向上を実現しています。
(2)観光施設・商業施設・大学などへの広がり
同じ仕組みは、スタジアム以外の施設にも広がっています。観光地では、施設をデジタルツイン化してオンラインで魅力を事前に体験してもらえるほか、現地でスマホをかざすと歴史上の人物がバーチャルで登場し、外国語で解説してくれるといったインバウンド向けのAI観光案内も可能です。商業施設では、ARナビゲーションによる直感的な館内案内で顧客の利便性向上や購買意欲の促進に寄与し、運営効率の向上と施設全体の活性化を同時に実現します。
大学キャンパスへの展開も構想されています。キャンパスをデジタルツイン化すれば、海外在住で来日が難しい学生もオンラインでオープンキャンパスを体験でき、入学後は「あの研究室はどこ?」という新入生の疑問にARナビが答えてくれます。このほか、コンビニエンスストアの店舗をバーチャル化した社内研修システムや、製造業の技術継承・設備保全支援、不動産のオンライン内見など、「現場」を持つあらゆる業種に応用が進んでいます。
3.VRTalkのサービスのインクルーシブ性
VRTalkのソリューションの根底にあるのは、「誰も迷わせない」というコンセプトです。大規模施設で自分の座席や目的地にたどり着けるかどうかは、方向感覚や土地勘、言語、施設への慣れなど、人によって大きく差が出る部分です。スマホをかざすだけでキャラクターが目的地まで先導してくれるARナビゲーションは、案内図を読み解くことが苦手な方や初めて訪れる方でも、他の人に頼らず自分の力で目的地に到達できる手段となります。
言語の壁への対応も進んでいます。日本語の入力が難しい外国人サポーターでも、AIとの対話を通じて「一番近いトイレはどこ?」「イベント会場はどこ?」と母国語で質問すれば、回答とあわせて最短ルートが生成されます。観光地でのAIキャラクターによる外国語ガイドも含めて、生成AIとXRの組み合わせが、国籍や言語に関わらず誰もが施設を楽しめる環境づくりを後押ししています。
また、スタッフによる案内には人数や教育の限界がありますが、来場者が自分のスマホで自己解決できる仕組みが整えば、スタッフはより手厚いサポートが必要な方に力を注ぐことができます。階段エリアでルート表示を控える安全設計のように、テクノロジーの利便性と現実の安心・安全のバランスに配慮している点も、多様な来場者を想定したインクルーシブな設計思想の表れといえるでしょう。
4.VRTalkのサービスを体験された方の声(例)
スタジアムでの実証実験に参加した来場者からは、次のような感想をいただいています。
「初めてのスタジアムで席までたどり着けるか不安でしたが、キャラクターについていくだけで迷わず座席に着けました。階段では表示が控えめになるので、歩きスマホになりすぎない配慮も感じました」(20代・初観戦のサポーター・例)
「子ども連れだと、広い場内で案内図を確認しながら移動するのは大変です。スマホをかざすだけで進む方向が分かるので、子どもと手をつないだまま移動できて助かりました」(30代・家族連れの来場者・例)
「マスコットと一緒にAR写真が撮れるのが楽しくて、試合前からワクワクしました。撮った写真をSNSに上げたら友人にも好評で、また来たくなりました」(20代・エンタメ体験を楽しんだ来場者・例)
実証実験のアンケートでは、90%が「座席まで到達できた」、85%が「便利だと思う」、73%が「アプリをダウンロードしたい」と回答しており、こうした体験価値の高さが数字にも表れています。
関連リンク
VRTalk株式会社:https://www.vrtalk.online
コメント
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
コメント
今回のヒアリングを通じて、生成AI×XRという言葉から想像する以上に、VRTalkのソリューションが「現場で使える」水準に仕上がっていることに驚かされました。核となるのは、施設を丸ごと3Dスキャンした空間データと、スマホをかざすだけで現在地を高精度に認識する独自のAR技術です。GPSの届かない屋内で、4万席規模のスタジアムでも自分の座席まで迷わず案内できる。実証実験で9割の方が座席まで到達し、85%が「便利」と回答したという結果は、このサービスがエンターテインメント性だけでなく、非常に利便性の高いサービスであることの証明だと感じました。
もうひとつ印象的だったのは、この体験価値がそのままビジネスの広がりにつながっている点です。マスコットキャラクターが先導する演出やARフォトスポットは観戦体験を豊かにし、バーチャルの選手やマスコットと撮った写真がSNSで共有されれば、球団やIPの価値向上に直結します。さらにAR空間にはスポンサーの製品や広告を配置できるため、導入する施設・球団にとってはスポンサープロモーションの新しい枠を生み出す手段にもなります。座席からの見え方をVRで確認できるチケット販売の仕組みが問い合わせ対応の負荷を減らしたように、来場者の体験価値向上と、収益機会の拡大・業務効率化という導入組織側のメリットが両立していることは、施設運営に関わる方にとって大きな魅力だと思います。
加えて、日本語が苦手な方もAIとの対話で目的地までのルートを得られるなど、「誰も迷わせない」というコンセプトが言語や施設への慣れの壁を越えて広がっている点は、インクルーシブな施設づくりの観点からも心強い限りです。同社は共創や実証実験にも積極的で、スタジアムから観光地、商業施設、大学キャンパスまで応用の幅は広い。独自技術を核に、楽しさと実用性、そして導入側の経営メリットを兼ね備えたソリューションとして、自信を持っておすすめします。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
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VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。









須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー