点字ブロックを「デジタル化」する ―― 視覚障がい者を駅で迷わせない音声ナビ「shikAI(シカイ)」
公開日 更新日
- ヒアリング先
- LiNKX株式会社取締役 小西 祐一 氏
新宿駅や大阪駅のような巨大ターミナルで、目的地にたどり着くこと自体が大きな挑戦になる ―― 視覚に障がいのある方が日々直面するこの課題に、QRコードと音声で応えるのがLiNKX株式会社のナビゲーションシステム「shikAI(シカイ)」です。点字ブロックという日本発のインフラを“デジタル化”し、一人での移動を支えるその仕組みと開発の背景を伺いました。
視覚に障がいがある方のためのナビゲーションシステムshikAI(シカイ)のご紹介
駅において視覚障がい者の方が困ることとは
駅や公共施設に設置された点字ブロックは、視覚に障がいのある方の安全で快適な移動を支える重要なインフラです。しかし初めて訪れる場所では、点字ブロックがどこにあるのか、どちらへ進めばよいのかが分からず、迷ってしまうことが少なくありません。特に新宿駅や大阪駅のような巨大ターミナルでは、目的地にたどり着くこと自体が大きな挑戦になります。
実際の利用者からも、「広い駅構内で出口や階段・エスカレーターの場所が分からず、何度も右往左往した挙句に近くの人に尋ねた」「経路を案内するアプリはいくつかあるが、施設の入口までは導いてくれない」といった声が寄せられています。日本には点字ブロックがしっかり整備された環境がありながら、その一部が十分に活用されておらず、「もったいない」状況の解決が、shikAI開発の出発点になりました。
shikAI QRナビゲーションシステムとは。LiNKXが開発した理由
shikAIは、iPhone用のナビゲーションアプリです。駅構内などの点字ブロックに貼ったQRコードを、アプリで起動したiPhoneのカメラで読み取ることで、音声で目的地までカーナビのように経路案内します。目的地と現在位置に基づいて移動経路は自動で計算され、音声ガイドも自動で生成されます。利用者はあらかじめ目的地(出口・改札・乗り換え先など)を選び、点字ブロック上のQRコードをスキャンしながら進むだけで、初めての場所でも一人で目的地まで移動できます。
仕組みは非常にシンプルです。点字ブロックのデジタル地図を作り、分岐点にあたる警告ブロックなどにQRコードを貼ることでサービス環境が整います。いわば「点字ブロックのDX」であり、これにより、どんなに複雑な駅でも、今いる場所から点字ブロックをたどって目的地まで行けるようになります。
shikAI QRナビゲーションシステムの特徴
shikAIには、長年の検証に裏打ちされた数多くの工夫があります。
- 「向き」を捉えられる:無線測位では現在地が円状にしか分からず「どちらを向いているか」を示せません。床面のQRコードと、それを読み取るスマートフォンの向きを前提とすることで、「右へ」「左へ」という案内が初めて可能になります。利用者からは向きこそが最も重要な情報です。
- シンプルな音声+振動ガイド:案内は「右に2メートル」「直進3メートル」といった簡潔な連続で構成されます。振動なしは直進、1回で右、2回で左を示すため、周囲が騒がしくても進行方向が分かります。下り階段などの危険箇所は、一つ手前から警告して注意を促します。
- 高い読み取り精度:決済用などのQRコードと異なり、カメラを動かしながら読み取ることに最適化したネイティブアプリとして開発。多少の小走りでも確実に読み取れる精度を備え、検証では「1000回に1回も読み取りミスがない」水準を目指しています。
- 破損・汚損に強いQRコードとシール:QRコードはもともと工場や倉庫向けに開発され、誤り訂正機能を持つため、一部が汚れたり欠けたりしても誤認識しません。9cm四方のシールを点状ブロックに複数枚貼ることで、移動中でもいずれかが確実に読み取れ、汚損・破損時にも経路案内を継続できます。
- 導入しやすい敷設・メンテナンス性:床面シールの印刷・貼り付けは富士フイルムIS社が担い、床面シール敷設の作業者は全国に多数存在します。特別な訓練を要さず、深夜帯の限られた時間でも、一駅あたり数千枚規模のQRコードを確実に敷設できます。
- リカバリー設計:人混みで読み取れない場合は迂回し、次のQRコードに戻れば再び案内が再開されます。誤った方向へ進むと衝撃的な通知音で知らせるなど、迷っても安全に立て直せる設計です。
- 結節点を優先する展開方針:飲食店やオフィスは膨大で個別対応が難しいため、移動ネットワークの結節点である乗り換え駅・バスターミナル・空港への導入を優先。社会的なインパクトの大きい場所から整備を進めています。
導入後の鉄道会社・利用者の声
shikAIは、実証実験等を通じて累計400人以上の視覚障がいのある方からフィードバックを得ながら開発されてきました。鉄道事業者での導入が進む背景には、「実験中ほとんどすべての参加者が目的地に到着できた」「ほとんどの参加者がこのようなシステムを有用と評価した」という声をいただいたことにあります。
利用者からの反響も具体的です。大阪駅で体験したロービジョンの方は、「階段の上り下りも、何メートル先に上り階段がいくつあるかまで案内してくれ、危険な場所や混雑も注意してくれる。まるで横にガイドさんやヘルパーさんが付き添ってくれているよう」と振り返り、「全国の駅や施設で使えるようになれば、多くの視覚障がい者がもっと自由に一人で出かけられる」と期待を寄せています。
LiNKXが最も手応えを感じているのも、こうした声だといいます。「一人では絶対に使えないようなサイズの大手町駅で、一人で使えるようになった」という利用者の言葉は、開発チームにとって何よりの励みになっているとのことです。なお、この仕組みはエレベーターと平坦な床・スロープだけで移動経路を見つけたい車椅子やベビーカーの利用者の支援にも応用できると見込まれています。
視覚障がい者向けナビゲーションシステム「shikAI」
サービス詳細:https://www.linkx.dev/social-contribution
コメント
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
コメント
shikAIは、長年の検討と検証に基づいて開発されており、非常に丁寧で完成度の高いシステムであると感じました。利用者の向きや方向、到着地に基づいて適切なナビゲーションを行うものであり、QRコードの高い読み取り精度をはじめ、利用上の不便さの解消を徹底されている点に強く感心しました。
広大かつ複雑な構内の駅は数多くあり、私も迷ってしまうことがよくあります。視覚に障がいのある方がそうした場所を一人で移動する場面を思い浮かべると、本システムがもたらす利便性は容易に想像がつきます。今いる場所から目的地までを、カーナビのように導いてくれる安心感は、移動の自由そのものを支えるものだと感じました。
また、QRコードシールの貼り付けの容易さやメンテナンス性、作業を受託できる事業者が全国に多数存在することなど、導入する側の負担にまで細やかに配慮されている点も印象的でした。
交通インフラである駅において本システムが普及することは、誰もが自由に移動できるインクルーシブな地域づくりに大きく貢献するものです。shikAIの今後のさらなる普及に期待しています。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
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須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー