インクルーシブデザインで社会とビジネスを変える―PLAYWORKS株式会社が拓く共創の最前線

スタートアップ事例

公開日 

ヒアリング先
PLAYWORKS株式会社代表取締役 タキザワケイタ 氏

障害者や高齢者など、これまでサービス・製品開発のメインターゲットから排除されてきた人々とともにつくる「インクルーシブデザイン」。その専門コンサルティングファームとして、PLAYWORKS株式会社はリサーチからアイデア出し、プロトタイプ制作、ビジネス化まで一気通貫で伴走する独自のスタイルで業界をリードしています。本記事では、同社代表・タキザワケイタ氏へのインタビューをもとに、インクルーシブデザイン・コンサルティングの特徴・強み、そして企業内リードユーザー育成という新たな取り組みについてご紹介します。

1. PLAYWORKSにおけるインクルーシブデザイン・コンサルティングの取組

インクルーシブデザインとは何か

インクルーシブデザインは、1994年に英国ロイヤル・カレッジ・オブ・アートのロジャー・コールマン教授が提唱した概念で、300cこれまで排除されてきた人々とともにつくる参加型デザイン300dを指します。日本では2006年の国際ユニヴァーサルデザイン協議会での認知を経て、2014年にジュリア・カセム氏と九州大学・平井康之教授により書籍が発表され、大手企業を中心に広く実践が進んでいます。

ユニバーサルデザインが「障害者や高齢者も使えるものをつくる(for)」であるのに対し、インクルーシブデザインは「これまで排除されてきた人々と共創する(with)」という発想の転換が核心にあります。視覚障害者を「光のない世界のプロ」、聴覚障害者を「音のない世界のプロ」と捉え、彼らを「未知の未来に導いてくれるリードユーザー」として位置づけ、プロジェクトの最初から参画させていく点が最大の特徴です。

PLAYWORKSの事業領域と主なクライアント

PLAYWORKS株式会社は、20204月設立のインクルーシブデザイン特化型コンサルティングファームです。インクルーシブデザイン・サービスデザイン・ワークショップを活用した新規事業・サービス・製品開発・人材育成・組織開発の伴走支援を事業の核としています。

タキザワ氏によれば、「ダイバーシティ&インクルージョンに取り組みたいが何をしていいかわからない」「宣言したが具体的な手段に迷っている」という大手企業からの相談が多く、PLAYWORKSが選ばれる理由として、ゼロから伴走しビジネス化まで一気通貫でやり遂げられる点が挙げられます。

PLAYWORKSのWEBサイト:https://playworks-inclusivedesign.com/

3つのサービス領域

PLAYWORKSのサービスは大きく3つに分類されます。

  • インクルーシブデザイン・ワークショップ:リードユーザーとの共創や障害体験などの実践的なワークを通じて、インクルーシブデザインへの理解を深め、事業での活用イメージを具現化。参加者20名程度、リードユーザー34名で構成し、4時間〜2日間の複数プログラムを用意。

  • ユーザビリティ・アクセシビリティ調査:既存サービスや製品を障害当事者やリードユーザーが実際に体験し、課題点の抽出および改善策を提示。アンケート・インタビュー・UXリサーチの3形態で対応。

  • インクルーシブデザイン・コンサルティング:新規事業・サービス・製品開発・人材育成・組織開発プロジェクトについて、コンサルティングおよびアドバイザーとして伴走支援。

2. インクルーシブデザイン・コンサルティングの特徴・強みと成功の秘訣

「改善」ではなく「イノベーション」を目指す姿勢

インクルーシブデザインの取組みで陥りがちなのが、「改善止まり」です。障害者と向き合ううちに目の前の困りごとを解決しようとする共感が強まり、結果として既存製品・サービスの改良にとどまってしまうケースが多く見られます。PLAYWORKSはこの点を明確に意識し、「マイナスからプラスを生み出すイノベーション創出」を旗印に掲げています。障害をヒントに新しい価値を生み出す0→1プロジェクトに特化することで、他社との明確な差別化を実現しています。

リードユーザーの選定こそが成否の8割を決める

タキザワ氏が「プロジェクトの成否の8割はリードユーザーの選定で決まる」と断言するように、誰をリードユーザーとしてアサインするかは極めて重要です。しかも、その選定はプロジェクト開始「前」に完了していなければなりません。大手企業がインクルーシブデザインに取り組もうとしたとき、多くの場合、障害者のネットワーク自体を持っておらず、仮にネットワークがあっても「テーマに最適な人材を見極めてアサインする」目利き力がありません。PLAYWORKSが長年のプロジェクトを通じて構築した多様なリードユーザー・コミュニティと、テーマとのマッチング力こそが、最大の競争優位といえます。

リードユーザー・パートナーには多様な専門性を持つ団体・企業が名を連ねており、視覚障害・聴覚障害・肢体不自由・発達障害・LGBTQ・外国人など広範な属性をカバーしています。社内で不足する領域は外部パートナーと連携することで、あらゆるテーマに対応できる体制を整えています。

ものづくりを含む一気通貫の伴走支援

多くのインクルーシブデザイン関連会社がリサーチや研修・調査を提供するにとどまるなか、PLAYWORKSはリサーチアイデア出しプロトタイプ制作ユーザーテストビジネス化まで、すべての工程を一貫して担います。これがなぜ重要かというと、インクルーシブデザインにおけるマネタイズは難易度が非常に高いからです。

「社会的意義があるから」「PRになるから」という理由でプロジェクトは始まりやすいですが、2年目には「それは儲かるのか」という一言でストップするケースが後を絶ちません。そこでPLAYWORKSは、「マイノリティのための価値」を「社会全体の普遍的な価値」に転換する設計を最初から組み込みます。たとえば肢体不自由者向けにリサーチしながらも、最終的なターゲットは高齢者向け製品と定めて開発を進めるといった設計がその典型例です。

3. 認定リードユーザー育成プログラムの取組

なぜリードユーザーの育成が必要なのか

インクルーシブデザインの質はリードユーザーの質で決まります。しかし企業が障害者団体に依頼すると、高い立場の人物が来て新しいものを生み出すよりも権利擁護の文脈に偏りがちです。PLAYWORKSが重視するのは「若く、新しいものに前向きで、自分の障害を客観視して言語化できる」リードユーザー。特に視覚障害を持つ大学生に着目し、「PLAYWORKS認定リードユーザー」として育成するプログラムを運営しています。

育成プログラムの内容と選定基準

認定リードユーザーとして育成するにあたり、PLAYWORKSが重視する適性は大きく2点です。ひとつは「社会人としての基礎力」として、コミュニケーション力・連絡の確実さ・ビジネスマナーなど。もうひとつは「障害の客観視と言語化」で、自分の障害をクライアントが必要としている文脈で的確に変換・伝達できるかどうかです。

育成では主に「リサーチ」と「アイデア出し(アイディエーション)」の2スキルに分けてトレーニングを行います。リサーチでは、Webアクセシビリティの評価(スクリーンリーダーを使ってクライアントサイトを実演)や製品の開封から設定・使用までをオンラインで実演する観察手法を習得します。アイデア出しでは、自分の障害体験をヒントに新しい発想へと転換する思考のトレーニングを実施します。この2つは必要なスキルが全く異なるため、個々の得意・不得意を把握し、案件とのマッチングに活用しています。

詳細はPLAYWORKS認定リードユーザー12期生インタビューもご参照ください。

1期生インタビュー:https://playworks-inclusivedesign.com/column/column-11589/

2期生インタビュー:https://playworks-inclusivedesign.com/column/column-14208/

学生のキャリアと企業のダイバーシティ推進をつなぐ未来像

認定リードユーザー育成の先には、さらに大きなビジョンがあります。企業のインクルーシブデザインプロジェクトに実際に参画することで、学生は実務経験を積み、就職の可能性も広がります。最終的には、リードユーザーとして力をつけた学生が、障害者雇用の文脈でその企業に就職するというキャリアパスも視野に入れています。

おわりに

PLAYWORKSは「インクルーシブデザイン体験ワークショップ」を定期開催するほか、HPでインクルーシブデザイン・コラムを連載し、YouTubeチャンネルも運営するなど、情報発信にも積極的に取り組んでいます。インクルーシブデザインに本格的に取り組みたい、あるいは現在の取り組みに課題を感じている事業者の方は、ぜひ一度問い合わせてみることをお勧めします。

PLAYWORKS株式会社:https://playworks-inclusivedesign.com/

コメント

  • 須藤 慎

    記事作成者

    株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー

    本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。

    コメント

    今回のヒアリングを通じて、インクルーシブデザインの奥深さと、その成功の秘訣を垣間見ることができました。
    まず強く印象に残ったのは、リードユーザーの「質」と「選定」の重要性です。障害者を「光のない世界のプロ」「音のない世界のプロ」として企業が持ちえない視点をプロジェクトの核心に据える発想は、インクルーシブデザインの本質そのものだと感じました。そして、そのリードユーザーを適切にマッチングするネットワークと目利き力こそが、PLAYWORKS様が長年の実践を通じて積み上げてきた最大の強みだということも腑に落ちました。
    次に感銘を受けたのが、「ビジネスとして成り立つかどうか」に向き合う姿勢です。社会課題だから・PRになるからという理由でスタートしたプロジェクトが失速するケースは多々あります。PLAYWORKS様はマイノリティのための価値を社会全体の普遍的な価値へと転換する設計を最初から前提とし、ものづくりも含めた徹底した伴走支援によってビジネス化まで責任を持つ。こうした一気通貫の支援体制は、業界内でも極めて希少な存在だと確認できました。
    さらに、組織内の理解醸成という視点も重要です。バリアフリーの歴史を持つ大手企業でさえ、新しいアプローチを持ち込めば反発が生じます。ワークショップを繰り返してチームの体感・体験を積み重ねることと、トップマネジメントを戦略的に巻き込む設計は非常に重要です。
    そして、視覚障害を持つ大学生を「PLAYWORKS認定リードユーザー」として育成するプログラムは、将来像として大いに納得のいくものでした。障害のある学生が、企業のイノベーションプロジェクトに不可欠なパートナーとして活躍し、その経験が就職へのキャリアにもつながっていく。この循環は、学生のキャリアアップにも企業のダイバーシティ推進にも貢献する素晴らしい取り組みだと感じました。
    インクルーシブデザインに本気で取り組みたい、あるいは取り組んでいるが現状で良いのかもやもやしている事業者の方、リードユーザーに関心がある学生の方は、ぜひPLAYWORKS様に問い合わせてみてください。

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