子育てしながら旅もキャリアも諦めない——Simpleeが提案する、新しいチャイルドケアのかたち

スタートアップ事例

公開日 

ヒアリング先
株式会社Simplee代表取締役CEO 諏訪 実奈未 氏

株式会社Simplee(シンプリー)は、20228月に東京・港区で創業したチャイルドケアのスタートアップです。ベビーシッター派遣・産前産後ケア・MICE向け託児などを、ITと組み合わせたプラットフォーム「CaaSChildcare as a Service)」として提供しています。「旅行中や学会・イベントへの参加時に子どもを安心して預けられる場所がない」という、共働き世代やファミリー層が直面する「非日常の育児課題」に着目し、ホテル・自治体・企業と連携しながら社会全体で子育てを支える仕組みを構築しています。有資格者100%のシッター陣と多言語対応、レベニューシェア型のリスクフリーな導入モデルで、国内外から注目を集めています。

1. Simplee(シンプリー)のチャイルドケアサービスとは

Simpleeは、チャイルドケアの予約・マッチング・決済を一元管理するプラットフォーム「CaaSChildcare as a Service)」を開発・運営しています。単なるベビーシッター派遣にとどまらず、予約管理システムの提供やチャットボットを活用した託児案内など、ITと子育て支援を組み合わせた総合的なサービスを展開している点が大きな特徴です。

主なサービスは次の3つです。

託児付きウェルネス滞在(ベビーシッター派遣)

ホテルや旅行先で、保護者がスパ・アクティビティ・ディナーなど「大人の時間」を楽しめるよう、有資格のシッターが子どもを安全にお預かりするサービスです。マリオットホテルをはじめとする国内外の有名ホテルと連携しており、ホテルの予約サイトから直接Simpleeへの予約が可能な仕組みが整っています。北は北海道・ニセコ(スキーアクティビティとセットでの託児)から、南は沖縄まで展開しています。

都市型産後ケアホテル(産前産後ケア)

ホテルの平日空室を活用し、助産師による24時間サポートを提供する「都市型産後ケア」です。授乳指導・育児相談・夜間の赤ちゃんのお世話などをカバーし、産後のお母さんが心身ともに回復できる環境を整えます。ホテル側にとっては閑散期の稼働率向上・新規顧客開拓にもつながる、双方にメリットのある取り組みです。

③ MICE・学会内チャイルドケア

国際会議・学会・企業セミナーなどのイベント会場内に、一時的な託児スペースを設置するサービスです。港区産業振興センターとの連携事例が起点となり、その後名古屋市(産学連携施設)でも導入されるなど、自治体・産業施設への広がりを見せています。多言語対応スタッフが常駐するため、海外からの参加者も安心して子どもを預けることができます。

これらのサービスはすべて、初期導入費・月額固定費ゼロのレベニューシェア型モデルで提供されており、連携先にとってリスクなく導入できる設計になっています。

2. 解決したい社会課題と市場背景

「非日常」の託児インフラが未整備という課題

共働き世帯の増加に伴い、保育園や日常的なベビーシッターサービスの整備は進んでいます。しかし、旅行・イベント・学会参加など「非日常」の場面での託児については、まだ十分に開拓されていないのが現状です。Simpleeはこの「非日常の育児課題」にこそ大きな社会的意義と事業機会があると考えています。

国内旅行市場は約25兆円規模で、そのうちファミリー層が占める割合は約30%7.5兆円)に上ります。にもかかわらず、「子どもがいるから行けない」「子どもを預ける先がないから参加できない」という理由で、学会・医療受診・産後の休息・観劇といった機会を諦めている親御さんは少なくありません。Simpleeはこの巨大な「機会損失」を解消し、子育て中でも自己実現できる社会の実現を目指しています。

インバウンド需要と「大人の時間」への意識変化

訪日外国人ファミリーの増加も、Simpleeの事業拡大を後押しする市場背景の一つです。利用者の約半数がインバウンドの方々であり、国内にいながら外貨を稼ぐスタートアップとしての注目度も高まっています。また、富裕層ファミリーを中心に、子どもとの時間を大切にしながらもスパや高級ディナーなど「大人だけの時間」を求める消費行動が広がっています。こうした市場の変化に対応するため、ホテルがハードの差別化だけでなく、サービス・体験での差別化を求めている点も、Simpleeの連携が急速に広がっている背景です。

社会全体で子育てを支える「街づくり」への貢献

Simpleeは「社会で子育てをする」という理念のもと、港区立産業振興センターで利用されるなど、自治体との連携も積極的に進めています。港区内の企業が開催するセミナーでの朝の託児提供や、インターナショナルスクール・女性起業家向けのサービス活用など、地域に根ざした事業展開を進めています。港区内に本社を構えるスタートアップとして、港区の産業振興・都市づくりにも貢献している点が、行政や地域コミュニティから高く評価されています。

3. チャイルドケアにあたっての安心・安全への取り組み

大切なお子様をお預かりするサービスだからこそ、Simpleeは安心・安全の確保を最重要課題として位置づけています。

有資格者100%のシッター採用

登録シッターの採用にあたっては、保育士・幼稚園教諭・看護師・助産師などの国家資格保有者、または公認ベビーシッター資格を持つ方のみを採用しています。面接・実技チェック・身元確認を徹底し、質の高いケアを安定的に提供できる体制を整えています。

定期的な研修・訓練の実施

採用後も、SIDS(乳幼児突然死症候群)対策・救命救急講習・アレルギー対応など、定期的な研修を実施しています。現場での緊急時にも冷静かつ適切に対応できるよう、スキルの維持・向上に継続的に取り組んでいます。

万全の保険体制

万が一の事故に備え、対人・対物賠償責任保険に加入しています。ホテルや施設のブランドを守りながら、ゲストが安心してサービスを利用できる環境を整えています。

4. 主な利用者層とニーズ

ホテル・リゾート滞在中のファミリー層

旅行中にスパや食事を楽しみたいが、子どもから目を離せないというご家庭が多く利用されています。「有資格のシッターが子どもを見てくれているので、安心して会議やリラクゼーションに集中できた」という声が寄せられています。テーマパーク同行サービスの利用も増えており、上のお子さんに付き添いたい一方、下の子の対応が難しいといったケースや、出張先で急きょ子どもを預けなければならない場合にも対応しています。

インバウンド(訪日外国人)ファミリー

Simpleeの利用者の約半数はインバウンドのお客様です。日本語・英語・中国語など多言語対応のシッターを手配できるため、言語の壁を気にせず子どもを預けられる点が好評です。訪日外国人が安心して旅行を楽しめる環境づくりに貢献しており、「国内にいながら外貨を稼ぐスタートアップ」として注目されています。

学会・MICE参加者・セミナー受講者

港区立産業振興センター主催のセミナーでは、朝の時間帯に託児スペースを設けることで、子育て中の起業家や女性経営者が安心して参加できる環境が実現しました。インターナショナルスクールの保護者や女性起業家など、多様な立場の方々が活用されています。名古屋市の産学連携施設でも同様の取り組みが導入されており、全国の自治体や学術機関への展開も広がっています。

産後のお母さんと家族

産後の心身回復を目的に、助産師常駐のホテル滞在を利用するケースも増えています。孤立しがちな産後の時間に、専門家によるサポートを受けながら家族全員でゆったり過ごせる環境を提供しています。特に平日の都市型ホテルを活用したプランは、アクセスの良さと中価格帯の料金設定が評価されています。

まとめ

株式会社Simpleeは、「旅やイベントなど非日常の場での子育てインフラが整っていない」という社会課題に正面から向き合い、ITと有資格シッターを組み合わせた独自のCaaSプラットフォームで課題解決に挑んでいます。初期費用ゼロのレベニューシェア型モデルにより連携先のリスクを最小化しながら、ホテル・自治体・企業・医療機関など多様なパートナーと共に「社会で子育てをする」エコシステムを広げています。

インバウンド需要の取り込み・平日空室の有効活用・ファミリー層の満足度向上など、連携先にとっても具体的なビジネスメリットをもたらす点が高く評価されており、今後も全国・グローバルへの展開が期待されます。「子どもがいるから諦める」という選択をなくし、すべての人が自分らしく生きられる社会の実現に向けて、Simpleeの挑戦はこれからも続きます。

株式会社Simplee:https://simplee.jp/

コメント

  • 須藤 慎

    記事作成者

    株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー

    本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。

    コメント

    株式会社Simpleeが提供する「CaaS(Childcare as a Service)」は、現代の育児における新たな解決策として、特に注目すべきサービスです。日本全国で広がる需要に応じたこのサービスは、まさにインクルーシブ都市の実現に寄与するものと感じています。特に、共働き世代やファミリー層が直面する「非日常の育児課題」に対して、Simpleeは独自のアプローチで対応しています。
    Simpleeのサービスは、ホテルや自治体、企業など、さまざまな施設や組織と連携し、子育てを支えるインフラを構築しています。このような取り組みは、地域全体のまちづくりや都市づくりにも密接に関わるものです。特に、産業振興や観光振興、育児支援、女性の活躍促進など、さまざまな分野に横断的に影響を与える可能性があります。
    例えば、旅行中に子どもを預けられる安心感は、観光業界においても大きなメリットをもたらします。訪日外国人ファミリーにとって、言語の壁を気にせず子どもを預けられる環境が整うことで、日本での旅行体験が一層豊かになるでしょう。また、自治体においては、地域の産業振興や育児支援の一環として、Simpleeのサービスを活用することで、地域住民や観光客に対するサービスの質を向上させることができます。
    さらに、女性の活躍を促進する観点からも、Simpleeの取り組みは重要です。育児とキャリアを両立させるための支援策として、女性が安心して仕事に専念できる環境を提供することは、社会全体の生産性向上にもつながります。特に、起業家やビジネスパーソンにとって、子育てを支えるインフラが整うことで、より多くの機会を得ることができるでしょう。
    不動産デベロッパーや観光事業者にとっても、Simpleeのサービスは高い親和性を持っています。地域に根ざしたビジネスモデルを展開することで、地域全体の活性化に寄与する可能性があります。広い視野で本サービスの意義を捉え、地域の特性に合わせた活用方法を考えることで、インクルーシブな社会の実現が進むことを期待しています。

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