ロボティクスとAIの両軸で実装するフィジカルAI開発と「AIコワーカー」が拓くロボット導入の新しい入口

基盤技術・サービス

関連分野・業種
製造、物流・倉庫、建設・インフラ、モビリティ、医療・ヘルスケア、介護・福祉、農業・一次産業、小売・店舗

公開日 

ヒアリング先
合同会社WillRobotics代表取締役 田中 健太 氏

合同会社WillRoboticsは、ロボティクスとAIの両領域に精通したエンジニアリング会社として、生成AIROS2・空間コンピューティングを掛け合わせたフィジカルAIの開発を請け負っています。論文ベースの最新研究を現場で使えるかたちに実装する開発スタイルを軸に、フィジカルAIの受託開発に加えて、ロボット導入の検討段階からチャット形式で支援する「AIコワーカー(FabCoWork)」を自社プロダクトとして開発中です。ロボティクスの深い知見とAI実装力を併せ持つ希少な存在として、製造現場のDX・自動化を内側から支えるパートナーとなり得ます。

1.ロボティクスとAIの両方に精通──先端研究を現場に届ける開発力

合同会社WillRoboticsは、代表の田中健太氏が2021年に設立した、フィジカルAI領域の受託開発を主軸とするエンジニアリング会社です。田中氏は京都大学大学院機械理工学専攻を修了後、2008年から12年間にわたり本田技術研究所でロボットの研究開発に従事してきました。ASIMOに代表されるヒューマノイドから、アームロボット、サービスロボットに至るまで、軌道生成・3Dデータ処理・ROSOpenRTMといったミドルウェア導入まで、ロボット開発の中核的なテーマを幅広く担当しています。34名のチームのプロジェクトリーダーとしてコード品質管理やドキュメント整備まで含めた開発推進を経験してきた点も、後の受託開発で大きな強みとなっています。

扱う技術スタックは非常に幅広く、近年急速に注目を集める「フィジカルAI――AIとロボティクスが融合する領域――において、両者を行き来できるエンジニアとして稀有なポジショニングを確立しています。

もう一つの大きな特徴は、海外の先端研究や論文成果を早期にキャッチアップし、開発に組み込むスキルです。たとえばロボット開発では3Dシミュレーション環境の構築が極めて重要ですが、最新シミュレーション環境の動向もウォッチしながら、ユーザーが現場で使いやすい形に落とし込む開発を進めています。模倣学習、VLAVision-Language-Action)、Diffusion PolicySim2Realといった研究領域の手法を、論文の段階で読み解き、現場の制約に合わせて実装に反映できる体制は、フィジカルAI領域の開発パートナーとして大きな安心材料となります。

フィジカルAI受託開発サービス──知覚・思考・行動を一気通貫で実装

WillRoboticsが提供するフィジカルAI受託開発サービスは、ロボットが現実世界で「認識し、判断し、動く」までを支えるパイプライン全体に踏み込む点に大きな特徴があります。同社のWebサイトでは、開発領域を「Perception(知覚)」「Reasoning(思考・計画)」「Action(行動)」の3層に整理し、それぞれに対応するエンジニアリング能力を体系化しています。

Generative AI」レイヤーでは、LLMVLMRAGをベースにしたAIエージェントの設計と、ロボット制御系との統合を担います。たとえば、自然言語の指示をもとにLLMがその場の状況を読み解き、ロボットを動かすためのコードを自律的に生成・修正していく取り組みは、すでに動画として公開されており、ChatGPT水準のLLMをロボット制御に組み込むデモを実現しています。これは特定のVLAVision-Language-Action)モデルに依存するのではなく、汎用LLMが自律的に手順を考えてPythonコードを変更し、制御に反映していく構造で、生成AI時代のロボット制御の一つの方向性を示すものです。

Robotics」レイヤーでは、ROSROS2をベースとしたシステム設計、マニピュレータ制御、動作計画(MoveIt2)、自律移動(Nav2)、組込み統合(micro-ROS)まで、ハードウェアの性能を引き出すコントローラ開発を一貫して提供します。最近では、ロボット業界で広く使われている協働ロボットアーム上で、生成AIによる動作生成と従来型の制御を組み合わせ、より柔軟にロボットを動かすための開発も進めています。

Spatial Computing」レイヤーでは、Isaac SimIsaac LabUnityUnrealThree.jsWebXRなどを駆使した3Dシミュレーション、XRによる遠隔操作UI、デジタルツインの構築を担当します。フィジカルAIの開発はリアル環境だけでなくシミュレーション環境での学習・検証サイクルが重要であり、Sim2Realまで含めた一連の流れを設計できるエンジニアリング力は、研究開発色の強いプロジェクトにおいて大きな価値を持ちます。

実績としては、ブラウザベースのロボット操作インターフェース、LLMによるロボットコード生成と適応制御、自律型AIエージェントを用いたWebサービスの構築など、Webと現実世界をつなぐプロジェクトが多く、デバイスやプラットフォームの制約を越えた遠隔制御・遠隔協調を得意としています。模倣学習、VLA、拡散モデルベースのポリシーといった先端手法を、顧客現場の制約に適応させて実装する「論文を活用する」開発スタンスは、研究機関・大学発スタートアップ・先端領域に取り組む事業会社にとって、相談しやすい外部パートナーとなり得ます。

ロボット導入のための「AIコワーカー」──ベンダーに頼らず検討を始めるための入口

田中氏が新たにプロダクトとして開発を進めているのが、ロボット導入を支援するAIコワーカー「FabCoWork(ファブコワーク)」です。背景にあるのは、田中氏自身が長年のロボット開発の現場で感じてきた、「ロボットは便利だが、誰もが導入できるわけではない」という強い課題感です。

工場の自動化のためにロボットを導入しようとした場合、検討すべきことはアームロボット本体だけではありません。ワークをどう固定するか、安全に動かすために周辺機器をどう配置するか、エンドユーザーごとに異なるグリッパや治具をどう設計するか、レイアウトをどう描くか――こうした検討項目が多岐にわたり、ロボット導入の経験がない事業会社にとっては、「そもそも何から検討すべきか分からない」という状態に陥りがちです。設備導入の頻度は高くなく、社内に専門人材を抱えていない中小製造業の現場では、なおさら入口のハードルが高くなります。

FabCoWorkは、こうした「最初の一歩」をAIで補うことを目的としています。ユーザーは、自然言語のチャット形式で「こういう工程を自動化したい」「このスペースにロボットを設置したい」といった要望を入力するだけで、AIが必要となる設備・周辺機器のリストアップ、レイアウト案、見積もりのたたき台、そして簡易な3Dシミュレーションまでを段階的に提示してくれる――そのような対話型ワークフローを目指しています。バックエンドではChatGPTをはじめとする大規模言語モデルを活用しつつ、CADファイルやExcel、シミュレーション環境を扱うための「AIが現実世界と接続するためのツール群(いわゆるツール/ファンクションコール)」を独自に整備することで、3次元空間や設備リストの理解にも踏み込んだ提案ができるよう設計されています。

 

ユーザーは、ロボットSIerや生産技術エンジニア、そしてロボット導入を初めて検討するユーザー企業の担当者です。SIerにとっては営業活動の中で顧客に「これくらいの構成でこのような動作が実現できる」とイメージを共有するためのツールとして、ユーザー企業にとっては社内検討・ベンダー選定の前段階で議論の土台をつくるためのツールとして活用できます。さらに、AIが既存のロボットメーカーのカタログを参照しつつ、要求される稼働範囲・設置面積に応じた候補機種をリストアップする機能も視野に入れており、ロボット導入における「機種選定」「設備選定」のハードルを下げる方向性も含まれています。

地方の中小製造業や、社内にIT・ロボティクス人材を抱えにくい現場にとって、AIコワーカーが「相談相手」として常に手元にあることの意味は大きく、人手不足・熟練人材不足が深刻化する日本の製造業のDX・自動化を、内側から後押しするポテンシャルを持つサービスといえるでしょう。

会社概要・関連リンク

合同会社WillRobotics(代表:田中健太/所在地:埼玉県和光市丸山台/設立:2021年)

Webサイト:https://willrobotics.com/

AIコワーカー「FabCoWork」:https://fabcowork.ai/

コメント

  • 須藤 慎

    記事作成者

    株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー

    本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。

    コメント

    今回のヒアリングを通じて、フィジカルAI領域の開発パートナーとして合同会社WillRoboticsが持つ強みの輪郭が、はっきりと見えてきました。フィジカルAIは、生成AI・ロボティクス・センサー・制御・シミュレーション・通信など、多様な要素技術の組み合わせで初めて成立する領域です。その中で、柱となるロボティクスとAIの双方に長年腰を据えて取り組んできたエンジニアが、論文段階の研究成果まで自然に視野に収めながら開発に組み込めることは、外部の開発協力者として極めて高い安心感につながると感じました。
    また、自社開発中の「AIコワーカー(FabCoWork)」については、日ごろ製造業のDX支援に携わる立場から、確かなニーズがあると強く感じました。ロボット導入の現場では、「そもそも自社の工程にロボットを当てはめられるのか」「導入をどう進めるべきか」を判断する段階で立ち止まる企業が少なくありません。社内に専門家がいない中で、見積もりを取るだけでも何往復ものやり取りが発生し、検討そのものが頓挫してしまうケースも多いのが実情です。特に、熟練者が長年カバーしてきた工程についてロボット化が現実的に可能なのか、あるいは今後の技術進展次第で実現可能性が出てくるのかなど、専門知識をもとに判断を要する作業は、現場担当者だけでは抱えきれない論点だと感じています。
    ロボット導入に特化して、要件整理・設備のリストアップ・レイアウト案・簡易シミュレーションまでをチャット形式で伴走してくれるAIコワーカーは、まさにこの「最初の一歩」のハードルを大きく下げてくれる存在になり得ます。さらに、開発元であるWillRoboticsがロボット現場の難しさを熟知しているからこそ、原理的には可能でも実装が難しい事項を見極め、堅実な提案にとどめる設計が織り込まれている点も心強く感じました。工場のDX・自動化の重要性がますます高まる今後の製造業において、こうしたAIコワーカーは中小企業や地方の現場まで含めて広く普及していくポテンシャルを持つと考えています。

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