「インクルーシブスタートアップと多様なパートナーの事業連携推進交流会」を実施しました。
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株式会社キャンパスクリエイトは、2026年3月27日、中央大学 後楽園キャンパル内の産学連携・社会共創フロアにて「インクルーシブスタートアップと多様なパートナーの事業連携推進交流会」を開催しました。当日の様子をレポートします。
インクルーシブを都市づくりやインフラデザインで実現する事例を紹介
「インクルーシブ(inclusive)」とは、障害の有無、国籍、性別、年齢に関わらず、すべての人が排除されず、社会の構成員として包み込まれ、共に支えあう包摂的な理念のこと。本イベントは、近年関心が高まっている「インクルーシブ」をテーマに、社会課題の解決に取り組むスタートアップによるピッチの登壇、ポスター展示などを通じて、参加者との連携や交流のきっかけ作りを行うことを目的として開催しました。
当日、会場にはインクルーシブ領域での事業展開を検討する企業や、大学研究シーズの活用を検討する方、自治体との実証連携を模索しているスタートアップ、当事者視点を起点としたサービス開発に関心のある方などが多数集まりました。
プログラムの前半は、主催のキャンパスクリエイトによる開会あいさつから始まり、以下のテーマで登壇者がお話をされました。
- 「インクルーシブな都市づくりに関する研究」
中央大学研究開発機構 丹羽菜生准教授
インクルーシブな都市づくりには、段差解消や視覚障害者誘導用ブロックなど目に見える障壁の解消に加え、多様な感覚・認知特性を前提とした環境設計も重要です。これまで空港や公共交通施設では、身体的障害への配慮は一定程度進められてきた一方で、音、光、情報量、人混み、複雑な手続きなどによる感覚的・認知的負担を考慮した環境整備については、なお多くの課題が残されています。丹羽准教授は、こうした困難を個人の障害や特性の問題としてではなく、環境との相互作用によって生じるものとして捉える「障害の社会モデル」の視点から、主に空港をフィールドに研究を進めています。障害当事者や空港事業者などと協働し、搭乗体験会や感覚配慮空間、カームダウン・クールダウン室等の実証・調査を通じて、不安軽減や予測可能性の向上にどのように寄与するか、さらに支援者や職員の理解促進について検討しています。空間整備だけでなく、運用や人的支援も含め、感覚・認知特性の多様性を前提とした環境づくりの必要性が示唆されました。
参考:インクルーシブな空港・観光・都市設計とアクセシブルツーリズムの研究
https://www.campuscreate.com/inclusive-x/column/191/
- 「マイノリティを基点にしたインクルーシブなインフラデザイン」
九州大学芸術工学研究院 羽野暁准教授
インフラ・公共空間デザインにおいては、平均的な利用者だけではなく、障害当事者にリードユーザーとして共創に参画してもらうことで、新たな価値と解決策が生まれるとして、事例が複数紹介されました。たとえば、橋の記憶を継承するプロジェクトでは、当事者参加により居場所(ビロンギング)が形成されています。また、歩道の段差解消において車椅子と視覚障害者間で条件が対立するケースでは、共創により双方にとってよい方法が見つかり、相互理解も促進。ほか、通り抜け可能な駐車場など具体的な不便から新しいインフラを発想した例や、感覚特性に基づく素材や色、静穏空間の設計などの例も紹介されました。
参考:当事者・研究者・実務者の「総合知」でインクルーシブなインフラを——九州大学 らくちんラボの挑戦
https://www.campuscreate.com/inclusive-x/column/128/
- 中央大学の産学連携活動の紹介
中央大学 研究支援室 工藤謙一氏
中央大学の産学連携は、研究成果を特許(知財化)、論文(技術の裏付け)、学会発表(発信)の形で整理し、URAや産学連携コーディネーターが企業との橋渡しを担い、社会実装へとつなげる仕組みをとっています。研究者は研究室HP、展示会、JST事業、科研費採択情報などから探索可能。さらに、企業研究者が参画する研究ユニット制度や、倫理・法・社会的課題を扱うELSI研究など独自の取り組みも紹介されました。産学連携の成否は、適切なテーマ設定と時間軸の理解に加え、最終的には人材同士の信頼関係や相性が大事だと締めくくられました。
インクルーシブな社会を目指すスタートアップ12社がピッチを実施
プログラムの後半は、インクルーシブな社会の実現に取り組むスタートアップ12社によるピッチ(各6分)が行われました。各社が扱う領域は、医療・ヘルスケア、移動・モビリティ、コミュニケーション、社会参加、デザイン・UX、インフラ・仕組みづくりなどであり、移動や情報アクセスの負担および心理的障壁の低減などに取り組む様子が多く見受けられました。
各社の事業概要は以下のとおりです(登壇順)。
■ 株式会社フォーステック
太陽光発電でゴミを自動圧縮し、スマートフォンやタブレットからゴミの蓄積状況を確認できる。満杯になる前に回収通知が届くため、効率的な回収が可能。 太陽光発電で稼働し、ゴミ回収車の運行頻度を減らすことで温室効果ガスの削減にも貢献する。一例として観光地においてはゴミ箱不足の課題があり、外国人観光客のニーズも高い。そのため、多くの自治体や観光施設で導入が進んでいる。
会社ホームページ:https://forcetec.jp/
■ 株式会社menopeer
女性の健康課題や更年期・メンタルケアなどに着目し、ピアサポートやコミュニティを活用した支援サービスを展開。企業向けの福利厚生や個人向け支援を通じ、働きやすさとウェルビーイング向上を目指す。
会社ホームページ:https://www.menopeer.com/
■ MUSVI株式会社
テレプレゼンスシステム「窓」を開発し、遠隔でも対面のようなコミュニケーションを実現する空間接続ソリューションを提供。建設・医療・教育など多分野で活用され、距離や身体的制約を超えた新しい働き方や交流を支援する。
会社ホームページ:https://musvi.jp/
■ PLAYWORKS株式会社
障害者など多様なリードユーザーとの共創からイノベーションを生み出す、インクルーシブデザイン・コンサルティングファーム。ワークショップ、ユーザーリサーチ・アクセシビリティ調査、コンサルティングを通じて、新規事業・製品・サービス開発や人材育成・組織開発を伴走支援する。
会社ホームページ:https://playworks-inclusivedesign.com/
■ 株式会社pono
双子や三つ子を育てる多胎家庭が直面する孤立や負担を軽減し、当事者同士のつながりと支援を実現するプラットフォームアプリ「moms」を提供。企業・自治体との連携を通じた事業を展開し、誰もが安心して子育てできる社会づくりに取り組む。
会社ホームページ:https://moms-app.com/
■ RYDE株式会社
「二次交通をもっとわかりやすく、もっと簡単に」をミッションに、地域交通(二次交通)のデジタル化に特化したモビリティプラットフォーム「RYDE PASS」を企画・運営。鉄道・バス・路面電車・旅客船などの乗車券をスマホで購入・利用できるデジタルチケットとして提供し、地域交通の持続可能性向上と、誰もが移動しやすい環境づくりに取り組む。
会社ホームページ:https://ryde-inc.jp/
■ サイナーズ株式会社
「聴覚障害者が自分らしく生きられる社会をつくる」をミッションに、聴覚障害の多様性に対応した次世代の補聴グラスと、オンデマンド手話通訳サービスを開発。ARグラスに手話通訳や文字起こし字幕をリアルタイムで表示し、ろう者・難聴者のコミュニケーションと情報アクセスを支援する。
会社ホームページ:https://signers.jp/
■ 株式会社STYZ
「民間から多種多様な社会保障を行き渡らせる」をミッションに掲げ、NPO等の資金調達を支える寄付プラットフォーム「Syncable」を運営。あわせて、多様な人々への配慮を起点とするインクルーシブデザインスタジオ「CULUMU」を通じ、企業の製品・サービス開発やUI改善、社会課題起点の事業創出を支援する。
会社ホームページ:https://styz.io/
■ Transreport Japan株式会社
「すべての人が平等に自信を持って移動できる社会」を掲げる英国発スタートアップの日本法人。障がい者や高齢者が公共交通機関の利用時に必要な介助を事前に予約し、アクセスニーズを駅係員などに共有できる介助予約システム「PAパッセンジャー」を提供。英国の鉄道網で広く使われ、日本では鉄道事業者と連携して展開を進めている。
会社ホームページ:https://www.transreport.co.jp/
■ Trim株式会社
ベビーケア・子育て支援領域でサービスを展開。授乳室検索やベビーケアルームなどを通じて、子育て世代の外出・社会参加を支援し、子育てしやすい環境づくりに貢献する。
会社ホームページ:https://trim-inc.com/
■ 株式会社U’eyes Design
ユーザビリティ評価やUXデザイン支援を専門とする。高齢者や障害者を含む多様なユーザー視点で製品・サービスの評価・改善を行い、アクセシビリティと使いやすさの向上を支援する。
会社ホームページ:https://www.ueyesdesign.co.jp/
■ ViXion株式会社
「テクノロジーで、人生の選択肢を拡げる」をパーパスに、見え方の能力拡張に取り組むHOYA発のスタートアップ。対象との距離をセンサーで測定し、レンズ形状を瞬時に変化させてピントを自動調節するオートフォーカスアイウェア「ViXion01/01S」を開発・販売。ロービジョン支援を原点に、近くも遠くも見やすい視覚体験を提供する。
会社ホームページ:https://vixion.jp/
プログラム終了後には、ポスター展示がされた会場で交流会がもたれ、名刺交換も活発に行われていました。「インクルーシブ」というテーマで活動し、また、高い興味・関心を持っている参加者同士が、互いの理解を深め、連携・交流の機会となりました。
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
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【主催者からのメッセ―ジ】
今回の交流会を終えて、あらためて確信したことがあります。
インクルーシブの領域で事業に取り組む方々は、いずれも当事者やその隣にいる誰かの「困った」を出発点にしています。聴こえない、見えにくい、移動しづらい、誰にも相談できないなど、ひとつひとつは、社会全体から見れば少数の声とされてきました。それゆえに市場は小さいと見なされ、事業として立ち上げるまでに時間がかかる。個々の挑戦が孤立しがちなのは、この構造によるものです。
12社のピッチと、お二人の研究者のご講演を続けて伺うなかで、主催者として強く印象に残ったのは、扱う領域がこれほど異なるのに、聴き終えたときに一つのまとまった風景が立ち上がってきたことでした。移動、コミュニケーション、都市空間、働く環境、子育て。それぞれが別々の現場で積み重ねてこられた取組が、並べて聴くことで互いを補い合うように見えてくる。少数の声は、束ねられたとき、社会のあり方を変える力を持ちうる。それを聴き手として実感できたことが、この日いちばんの収穫でした。
同時に気づかされたのは、各社の強みが驚くほど重なっていないことです。デバイスで感覚を補う技術、移動にまつわる不安を減らす仕組み、当事者を設計の段階から迎え入れる方法論、支え合いを可視化するプラットフォーム。組み合わせてはじめて成立する連携の余地が、この場には確かにありました。
そして、こうした連携を事業として続く形にしていくには、大学の知が重要です。当事者の困りごとを研究の言葉に翻訳し、実証の設計に落とし込み、社会に広げていく。その結節点をつくることが、産学連携を担ってきた私たちの役割です。今回のような、異なる領域の実践者と研究者が出会う場を、今後も企画してまいります。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
このコメントと投稿者情報は、「改竄されていないか」や「正当な投稿者か」などを暗号学的に検証できる〈Verifiable Credential(VC)〉によって保証されています。
それらがシステム上で検証された後に記事にコメントとして表示されています。VCとは
VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。





須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー