Webアクセシビリティとは ―― 誰も取り残さないWebの実現に向けて、インフォ・クリエイツに聞く
公開日
- ヒアリング先
- 株式会社インフォ・クリエイツ取締役 飯塚 慎司 氏
障害の有無や年齢、利用環境を問わず、誰もがWeb上の情報やサービスを利用できるようにする「Webアクセシビリティ」。その重要性が増す今、企業や大学はどこから取り組みを始めればよいのでしょうか。1993年に創立し、1997年から情報バリアフリーの実現に取り組んできた株式会社インフォ・クリエイツに、その考え方と実践のヒントを伺いました。
Webアクセシビリティとは。必要とされる社会背景
Webアクセシビリティとは、障害の有無や年齢、利用している機器や環境の違いにかかわらず、誰もがWeb上の情報やサービスを利用できるようにすることです。総務省の「みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)」でも、高齢者や障害者を含めて、誰もがホームページ等で提供される情報や機能を支障なく利用できることと定義されています。
今日では、Webが社会参加の入口になっています。大学の入試情報、授業、就職活動に加え、行政手続き、医療、金融、災害情報まで、生活に必要な情報の多くがWebを通じて提供されています。そのため、Webが使えないということは、単に不便というだけではなく、学ぶ機会や働く機会、社会に参加する機会そのものに関わる問題だとインフォ・クリエイツは考えています。
駅の階段にスロープがあれば車椅子利用者が通れ、歩道に点字ブロックがあれば白杖利用者が安全に歩けるように、Webサイトにもアクセシビリティへの配慮があれば、音声ブラウザでの操作、キーボードだけでの操作、画面の拡大表示などが可能になります。いわば「ウェブサイトのバリアフリー化」です。
同社は、ハンディキャップという言葉を社会の側の課題として捉えています。たとえばスクリーンリーダーがあれば視覚に障害があっても新聞を音声で読むことができ、音声認識ソフトを活用すれば会話をテキストにできます。環境を整えることで、機能の障害が「社会的不利」へと連鎖することを防げる ―― これがアクセシビリティの根底にある考え方です。
インフォ・クリエイツは、Webアクセシビリティを単なる技術対応やチェック項目の集合とは考えていません。Webが社会参加の入口になっている以上、そこにある小さな使いにくさは、誰かにとっては学ぶ機会、働く機会、生活に必要な情報へ近づく機会を狭めるものになります。だからこそ、アクセシビリティは特別な対応ではなく、Webを提供する側があらかじめ備えておくべき基本的な姿勢だと捉えています。
Webアクセシビリティを考慮するWebサイトと、考慮しないWebサイトの違いのポイント
両者の違いは、「多様な利用者を、はじめから想定しているかどうか」に集約されます。アクセシビリティを考慮しないサイトは、特定の利用環境を前提に作られがちで、結果として情報の入口が一部の利用者に対して閉ざされてしまいます。インフォ・クリエイツは、利用者の特性ごとに「困ること」と「配慮の例」を整理しています。
たとえば全盲の方の場合、画像や動画の内容がわからない、ページのどこに何があるか把握しづらい、エラーに気づきにくいといった困りごとがあります。これに対しては、画像の内容を説明する代替テキスト(alt属性)を用意する、「右にある赤い丸」のように視覚に依存した表現を避ける、マウスだけでなくキーボードでも操作できるようにする、といった配慮が挙げられます。
弱視・色覚障害の方には、色だけで情報を伝えずテキストでも示す、文字を画像化しない、背景色と文字色のコントラストを確保するといった配慮が必要です。聴覚障害の方には動画への字幕付与、身体障害の方にはマウス以外のツールでの操作受付や時間制限の解除・延長、発達障害の方には動きのあるコンテンツを停止できるようにする、表現をシンプルにするなど、それぞれに有効な工夫があります。
また、自動で切り替わるカルーセル(スライド表示)の扱いは要注意です。動きのある要素は、発達障害のある方の集中を妨げたり、視覚的な処理に負担をかけたりすることがあります。一見便利に見える表現が、利用者によっては障壁になりうる ―― この視点こそ、考慮するサイトと考慮しないサイトを分ける本質だといえます。
インフォ・クリエイツのサービス ―― 診断・研修・コンサルティング・クラウド・Web構築
同社が重視しているのは、検査をして終わりにしないことです。アクセシビリティの課題は、一度確認すれば解決するものではなく、方針を立て、現状を知り、改善し、その結果を確認し、継続的に維持していくことで、はじめて組織の力になります。検査はその出発点であり、組織が自分たちのWebをどう育てていくかを考えるための材料でもあります。同社は「アクセシビリティのあらゆる課題をOne Stopで解決する」という考えのもと、対応方針の策定から診断、修正、適切な状態の維持までを一貫して支援するサービス群を提供しています。
- 診断サービス:プログラム検査、JIS X 8341-3:2016やWCAG 2.2に対応した規格適合性検査、検査証明書の発行など。Webアクセシビリティ検査分野で、日本で初めてISO/IEC 17020:2012(JIS Q 17020:2012)に基づく検査機関認定を取得しており、第三者性のある検査を提供します。
- コンサルティングサービス:方針策定支援、ガイドライン作成支援、技術支援、プロジェクトマネジメントなど、組織としての取り組みを設計段階から伴走します。
- 研修サービス:基礎研修・技術研修に加え、アクセシビリティを担う専門家を育成する研修まで、人材面の支援を行います。
- クラウドサービス:クラウド型検査サービス「AMCC」は、総務省が提供しているmiCheckerを活用し、数万ページ規模でも一括検証が可能です。検査結果からWord形式の報告書を自動生成する機能も備えます。閲覧支援のクラウドサービスも提供しています。
- Web構築・運用:アクセシビリティに配慮したWebサイトの開発、ホスティング、運用保守までを手がけます。
これらを組み合わせることで、「何をすべきか分からない」段階から、継続的に品質を保つ段階まで、企業や大学の状況に応じた支援が可能になっています。アクセシビリティの取り組みは、担当者だけが頑張るものではありません。組織として方針を持ち、制作・運用・調達・広報などに関わる人たちが共通の考え方を持つことで、はじめて日々のWeb運用の中に定着していきます。インフォ・クリエイツは、そのための判断基準や進め方を、現場に合わせて一緒に整えていくことを大切にしています。 
大学におけるWebアクセシビリティ活用の潮流、調査レポート
同社は2024年から、企業の取り組み状況を可視化する「Webアクセシビリティ指数・プログレスレポート」を発表しています。最新の企業版(主要150社対象)では、組織として対応していると評価できるC以上の企業が前年から13社増え、過半数の85社に達しました。アクセシビリティ方針の公開率も39%から49%へと上昇し、取り組みが徐々に可視化され始めています。一方で、検査結果を公開する「実行」の伸びは小さく、方針公開の増加に対して“実行の証”が追いついていないことが課題として示されています。アクセシビリティは、法律や規格に対応するためだけのものではありません。誰もが情報にたどり着けることを当たり前にしていくために、企業や大学が自ら実践し、その姿勢を社会に示していくことが重要です。その積み重ねが、Webに関わる人たちの共通の感覚となり、社会の新しい当たり前を形づくっていきます。
そして2026年には、大学版の実態調査(主要25校対象)が試行的に初めて公開されました。結果は、平均24.2点・中央値20.0点・最高でも49.6点にとどまり、A・Bランクに該当する大学はありませんでした。上位3校は東京工芸大学、川崎市立看護大学、慶應義塾大学でしたが、分布はC〜Eランクに集中しています。
項目別に見ると、ページ品質を測る「評価」には一定の点数が見られる一方、「実行」「報告」「宣言」は低水準で、特に経営層・組織トップによる「宣言」は全大学で得点がありませんでした。これは、個々のページ改善の努力が、大学としての方針・公表・継続的な発信へと十分につながっていないことを示しています。
同社は、この状況を海外との対比でも捉えています。Harvard University、UC Berkeley、Gallaudet Universityの3校を同じ基準で調査したところ、いずれも日本の大学を上回り、ランクはすべてBでした。これらの大学には、Webに限らずデジタル領域全般でアクセシビリティを確保する専門組織が存在し、継続的に活動しているといいます。
こうした調査を踏まえ、同社が一貫して発信しているメッセージが、「アクセシビリティを“教える大学”から、“組織として実践する大学”へ」というものです。大学は、授業の内容だけでなく、その場のふるまいそのものからも学生に影響を与えます。大学が組織としてアクセシビリティに向き合う姿勢を示すことは、学生がやがて社会に出てその感覚を生かしていく ―― 将来の社会を変える種をまくことにもつながる、というのが同社の考えです。
参考リンク
コメント
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
コメント
Webアクセシビリティについて詳しくお話を聞く経験はそうそうなく、大変勉強になりました。視覚・聴覚・身体・発達など、さまざまな障害をお持ちの方がいらっしゃる中で、どのようなWebサイトを構築すべきかを一つひとつ伺うことで、これまで当たり前だと思っていた表現が、人によっては情報の壁になりうるのだと気づかされました。
特に、自動で切り替わるカルーセルが利用者に与える影響などは、言われてみて初めてその意味が腑に落ちるものでした。便利さや見栄えだけでなく、誰にとっても使えるかどうかという視点から、Webサイトの在り方を改めて捉え直す必要性を強く感じました。
インフォ・クリエイツ様が2000年代初期からこうした検討と経験を積み重ねてこられたことには、率直に驚かされます。長年にわたり培われた知見や実績は、障がいのある方への合理的配慮がますます重要になる現代社会において、存分に生かされるべきものだと感じました。検査機関としての認定や、企業・大学を横断した調査レポートの発信など、その取り組みは個々の対応にとどまらず、社会全体の底上げを見据えています。
自社WebサイトのWebアクセシビリティを評価するという発想は、多くの方にとって、これまで考える機会が少なかったのではないかと思います。本記事を通じて少しでも気になった方は、ぜひインフォ・クリエイツ様のサービスを活用されてみてはいかがでしょうか。まず評価を行い、その改善点を見出して一つずつ改善していくことが、利用者の満足度や信頼の向上を通じて、事業の成長につながる機会となるかもしれません。誰も取り残さない情報のあり方を考えることは、これからの組織にとって欠かせない視点になるとインタビューを通じて感じました。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
このコメントと投稿者情報は、「改竄されていないか」や「正当な投稿者か」などを暗号学的に検証できる〈Verifiable Credential(VC)〉によって保証されています。
それらがシステム上で検証された後に記事にコメントとして表示されています。VCとは
VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。













須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー