積載効率を高める方法――2024年問題下の輸送能力を支える、計測・設計・運用の実務
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はじめに
積載効率とは、トラックや配送車両の輸送能力に対して、実際にどれだけの貨物を載せて運んでいるかを示す指標です。日本の物流業界では、トラックの積載率は平均で4割前後にとどまるとも言われており、改善余地の大きい領域です。2024年問題によりドライバーの拘束時間が制約された現在、限られた輸送能力を最大限に活かすために、積載効率の向上は最優先課題のひとつとなっています。CLO(物流統括管理者)の主要KPIにも、積載効率は中核指標として組み込まれます。
本記事では、積載効率向上を「現場の地道な改善」だけでなく、CLO主導でサプライチェーン全体・産業エコシステム全体の最適化につなげる経営施策として捉え直し、計測方法、改善の主要施策、推進体制、産学連携の役割までを整理します。倉庫DXナビ編集部として複数の物流DX企業・倉庫運営者・荷主企業を取材し、また「倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト ホワイトペーパー」やForbesJAPAN BrandVoice「CLO(物流統括管理者)が牽引する倉庫DX」での発信を重ねてきた立場から、できるだけ実務目線でお伝えします。
1. 積載効率を理解する
1-1. 積載効率の定義と計測方法
積載効率は一般に、車両の最大積載重量・容積に対する実際の積載量の比率で表されます。重量ベース、容積ベース、パレット枚数ベースなど、複数の計測軸があり、業種・荷姿によって主要指標が変わります。低重量で容積を取る荷物(紙製品、軽量家電等)は容積ベース、高密度の荷物(金属、液体等)は重量ベースで管理することが多くなります。
1-2. 日本の積載効率の現状
国土交通省の統計などでは、日本のトラック積載率は40%前後にとどまるとされています。片道空車回送、低積載運行、繁閑差の大きい配送波動などが、平均積載率を押し下げる主因です。2024年問題で輸送能力が制約された現在、この4割の積載率を1割引き上げるだけでも、社会全体の輸送能力を大きく押し上げる効果が見込めます。
1-3. なぜ積載効率向上が重要なのか
積載効率の向上は、単位輸送コストの削減、CO2排出量の削減、ドライバー1人あたりの生産性向上、車両台数の削減、運送事業者との関係改善といった、複数の便益を同時に生み出します。CLO制度化以降、これらの便益はサプライチェーン全体で評価され、荷主企業の経営機能として位置づけられる方向です。CLO制度については別稿「CLO(物流統括管理者)とは」で整理しています。
2. 積載効率を高める主要施策
2-1. 共同配送・共同輸送
複数荷主の貨物を1台のトラックに合わせて運ぶ共同配送は、積載効率向上の最大レバーです。同業種共同、異業種共同、業界団体主導のプラットフォーム型共同など、多様な類型があります。共同配送の進め方については別稿「共同配送とは」で整理しています。
2-2. 三次元パッキング最適化
トラック・コンテナ内に荷物を最適配置する三次元パッキング最適化は、組合せ最適化の研究領域として広く扱われ、商用ソフトウェアも普及しています。重量制約、荷崩れ防止、先降ろし順序、温度帯などの複合制約を考慮した最適化が、積載率向上に直結します。組合せ最適化の論点は別稿「組合せ最適化の物流応用」で整理予定です。
2-3. 荷姿・パッケージの最適化
商品の梱包サイズ・形状を見直すことで、トラック・コンテナへの積載効率が大きく変わります。過剰梱包の削減、緩衝材の最適化、パレット規格の統一、通い箱の活用などが、荷姿レベルでの積載効率向上策です。荷主企業内の商品開発・設計部門と物流部門が連携することで、設計段階から積載効率を考慮する文化が定着します。
2-4. 配送ルート・配車の最適化
複数顧客への配送ルートを最適化することで、積載効率と配送効率を同時に改善できます。VRP(Vehicle Routing Problem)と呼ばれる組合せ最適化問題として研究されており、商用配車システムの中核機能となっています。動的環境への対応には強化学習も活用されつつあります。
2-5. 中継輸送と幹線・地域配送の分離
長距離幹線輸送と地域配送を分離し、幹線では大型トラックで満載運行、地域配送では中小型車両で多顧客対応とする「ハブアンドスポーク」型の設計は、積載効率向上の構造的な施策です。中継輸送と組み合わせることで、ドライバー拘束時間の削減と積載率向上が同時に実現します。中継輸送については別稿「中継輸送とは」で整理予定です。
2-6. 需要予測と計画的配送
需要予測の精度を高めることで、計画段階で積載効率を最大化できます。AIによる需要予測、過去実績の機械学習、季節・天候・イベント要因の組み込みなど、データ駆動の予測を組み合わせた配送計画が広がっています。
2-7. 帰り便・空車活用
片道空車回送を減らすため、帰り便への積載確保、空車情報のマッチングプラットフォーム活用、複数荷主との連携が施策となります。フィジカルインターネット構想の一部として、業界横断の動的マッチングが研究・実装されています。フィジカルインターネットの論点は別稿「フィジカルインターネットとは」で整理しています。
3. 積載効率向上を前向きに進めるための5つの留意点
3-1. 計測の精度を高める
積載効率の改善は、まず正確な計測から始まります。重量・容積・パレット枚数のいずれを基準にするか、車両ごとの最大積載量を正確に把握しているか、計測のタイミング(出発時、途中、納品時)はどこか、といった点を整理し、データ収集体制を整えます。
3-2. 業種・荷姿に応じたKPI設計
業種によって積載効率の改善余地が大きい指標は異なります。重量基準が効く業種、容積基準が効く業種、パレット枚数基準が効く業種、それぞれ主要KPIを使い分けることで、改善活動の焦点が明確になります。
3-3. 取引先との合意形成を継続する
共同配送、ルート最適化、荷姿標準化などは、荷主・運送事業者・倉庫運営者の合意が前提です。月次・四半期の運営会議、データ共有、共通KPIの設定を制度化することが、長期的な改善基盤となります。CLOが結節点として三者対話を主導する設計が推奨されます。
3-4. 短期コストと中長期効果のバランスを取る
共同配送のプラットフォーム参加、配車システム導入、荷姿変更などは初期投資・調整コストが発生します。単年度の効果ではなく、3〜5年スパンでの累積効果(コスト削減、CO2削減、輸送能力確保、取引関係強化)で評価することが推奨されます。ROI評価フレームは別稿「倉庫DX投資のROI評価フレーム」で整理しています。
3-5. 業界団体・行政施策と連携する
共同配送支援、モーダルシフト推進、共通プラットフォーム整備など、業界団体・行政の施策が積載効率向上を後押ししています。CLOが行政・業界団体との対話を継続することで、補助制度・標準化・モデル事例化のメリットを取り込めます。
4. 積載効率向上のロードマップ
4-1. 最初の半年――現状把握とボトルネック特定
主要拠点・主要区間の積載率を計測・可視化し、改善余地の大きい領域を特定します。空車回送、低積載運行、繁閑差の大きい区間など、優先施策の対象を絞り込みます。
4-2. 半年〜1年――施策計画と試行
優先施策(共同配送、配車最適化、荷姿標準化、需要予測高度化等)を、効果規模・投資規模・実行難易度の3軸で整理し、優先順位をつけます。1〜2施策でパイロット実証を行い、効果と運用課題を把握します。
4-3. 1〜3年目――本格展開と業界横断連携
パイロット成功施策を全社展開しながら、業界団体・取引先と連携した共同配送・標準化の輪を広げていきます。CLO主導で経営会議・取締役会への定期報告を制度化することで、組織的な継続改善の基盤が固まります。
4-4. 3〜5年目以降――フィジカルインターネットへの接続
中長期では、業界横断の共同物流プラットフォーム、フィジカルインターネット構想への参画によって、個社では到達できない積載効率向上を実現します。2040年問題の時間軸では、これが社会インフラとしての物流維持の中核施策となります。
5. 産学連携で広がる積載効率向上の可能性
積載効率向上の中核領域は、研究シーズと深く接続しています。組合せ最適化(三次元パッキング、VRP、施設配置)、強化学習(動的配車、マッチング)、需要予測(時系列解析、機械学習、ベイズ統計)、ゲーム理論・メカニズムデザイン(共同配送の便益配分)、交通工学(ネットワーク設計)など、多様な研究領域が積載効率向上を支えています。
近年は、産業応用に向けた研究として、リアルタイム動的最適化、不確実性下での頑健最適化、CO2やドライバー満足度を含む多目的最適化、業界横断データ標準化、フィジカルインターネット実装研究などが活発に進展しています。
当社は広域TLOとして700テーマを超える産学官連携実績を有しており、積載効率向上を含む物流改善領域でも、大学・研究機関の研究シーズと現場課題の接続を継続的に進めています。先に紹介したホワイトペーパーや、Forbes記事で言及されている「倉庫DX推進AIの開発および参照データとナレッジベースの構築」は、積載効率向上を含む物流改善の知識基盤を、産学連携で育てていく取り組みです。CLOが積載効率向上を進めるうえで、研究シーズの活用視点を持っておくことは、中長期で他社に先んじる差別化要素となります。関連視点は「なぜなに産学官連携」でも継続的に発信しています。
6. CLO主導の積載効率マネジメント
積載効率は、CLOが統括する物流KPIの中核指標のひとつです。月次・四半期の経営会議でレビュー、年次の中期計画への組み込み、取引先との共通KPI化、行政・業界団体への報告など、組織横断で扱う設計が必要です。改正物流効率化法では、特定荷主・特定貨物自動車運送事業者に対して中長期計画の作成・報告が求められており、積載効率はその主要要素となります。改正法については別稿「改正物流効率化法とは」で整理しています。
6-A. 積載効率向上の成功パターン
積載効率向上で顕著な成果を出している企業に共通するパターンとして、次の要素が挙げられます。第一に、積載率を経営KPIとして位置づけ、月次・四半期で経営会議でレビューしている。第二に、運送事業者・倉庫運営者と共通KPIで改善活動を進めている。第三に、商品開発・設計段階から荷姿・パッケージを物流効率観点で設計している。第四に、共同配送・配車最適化・荷姿標準化を同時並行で進めている。第五に、業界団体・行政の施策と連動させている。これらの要素を総合的に組み合わせることが、積載率を現状40%前後から50〜70%へ引き上げる実装の基本となります。
6-B. 積載効率向上と荷役時間削減の相互関係
積載効率の向上は、荷役時間削減と密接に連動します。パレット荷役標準化により積載効率が上がり、同時に荷役時間も短縮されます。共同配送では、積載効率と配送効率が同時に改善します。荷姿・パッケージ最適化は、積載効率と作業効率の両方に効きます。CLOが積載効率と荷役時間を一体で統括することで、投資効果は個別施策の合計を上回る相乗効果を生み出します。荷役時間削減については別稿「荷役時間削減の論点」、荷待ち時間削減は「荷待ち時間削減の進め方」で整理しています。
6-C. 積載効率と運送事業者の経営課題
積載効率の向上は、荷主企業のコスト削減・CO2削減だけでなく、運送事業者の経営を支える重要施策です。低積載運行は運送事業者の単位売上を下げ、ドライバー1人あたりの稼ぎを減らし、結果として人材確保を難しくします。荷主側の積載効率向上の取り組みは、運送事業者の生産性向上を通じて、長期取引関係の強化と業界全体の持続可能性に寄与します。CLOが「自社のコスト削減」だけでなく「業界全体の構造改善」という視座で積載効率向上を捉えることが、社会インフラとしての物流維持につながります。
6-D. 積載効率の国際比較
日本のトラック平均積載率は他先進国と比較しても改善余地が大きい水準とされています。欧州では、共同物流プラットフォーム、フィジカルインターネット実証、業界団体主導の標準化が10年以上前から進み、積載率向上の体系的取組が定着しています。米国では、3PL/4PL事業者主導のネットワーク最適化、データ標準化が進展しています。日本も2024年問題・CLO制度化を契機に、業界横断の取組を加速する局面にあります。海外動向を継続的に観察し、自社の中期戦略に反映する視座が、CLOにとって重要となります。
6-E. 積載効率とデータ標準化
積載効率の議論は、荷姿・パレット・重量・寸法・温度帯といった物品属性データの標準化と一体で進めることが望ましい領域です。業界内で共通マスタが整備されていないと、共同配送マッチングや積載シミュレーションの精度が出にくく、結果として改善効果が限定的になります。経済産業省・国土交通省が検討を進める物流データ標準化ガイドライン、JAN・GS1などの国際標準、業界団体独自のコード体系を組み合わせ、荷主・運送事業者・倉庫運営者が共通フォーマットで情報交換できる基盤を整備することが、積載効率向上の底上げにつながります。
7. 積載効率向上と他DX施策の相乗効果
積載効率向上は、単独で進めるよりも他のDX施策と組み合わせることで効果を最大化します。WMS・TMSのデータ統合で計画段階の精度が上がり、AMR・自動倉庫で出荷準備が前倒しされ、共同配送・モーダルシフトで輸送ネットワークが最適化され、CO2削減指標との連動でサステナビリティ価値が生まれます。これらを統合的に推進する設計が、CLO初年度のロードマップの中核となります。
おわりに
積載効率の向上は、限られた輸送能力で社会全体の物流需要を支えるための直接的な施策です。日本のトラック平均積載率4割という現状は、業界横断・領域横断の取り組みで大きく改善できる余地を示しています。CLOを結節点に、サプライチェーン全体・産業エコシステム全体の共同設計を進めることが、現実的な改善経路です。倉庫DXナビでは、積載効率向上を含む物流改善関連の制度・技術・事例・知見を、継続的に発信していきます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 積載効率はどう計測すれば良いですか。
重量基準(最大積載重量に対する実積載重量)、容積基準(容積活用率)、パレット枚数基準(最大パレット数に対する実積載枚数)など、業種・荷姿によって使い分けます。車両出発時・複数地点・納品時で計測し、平均値・分布・空車回送率なども併せて可視化することが推奨されます。
Q2. 積載効率向上で達成可能な水準はどれくらいですか。
業種・現状値・施策の組み合わせによりますが、現状40%前後の積載率から50〜70%への引き上げは、共同配送・配車最適化・荷姿改善を組み合わせて到達しうる射程です。一気に高水準を狙うよりも、段階的な目標設定が現実的です。
Q3. 共同配送と配車最適化、どちらから始めるべきですか。
社内データだけで進められる配車最適化から始め、効果を確認しつつ、業界団体や取引先との合意形成が必要な共同配送へと展開する流れが一般的です。両者は並行して進めることで相乗効果が出ます。
Q4. 中小荷主でも積載効率向上に取り組めますか。
可能です。クラウド型配車最適化SaaS、業界団体主導の共同配送への参加、取引先運送事業者との対話などが、低コストから始められる施策です。取引先大手荷主の改善要請に応じる姿勢が、取引関係維持にもつながります。
Q5. 荷姿変更は商品設計部門との調整が必要で難しくないですか。
確かに調整は必要ですが、CLO主導で物流戦略を経営アジェンダ化することで、商品開発・設計部門との対話の場を制度化できます。包装コスト削減、CO2削減、輸送費削減といった複合便益を可視化することで、商品設計段階から物流効率を考慮する文化が定着します。
Q6. 積載効率向上はCO2削減にどれくらい効きますか。
直接的に効きます。積載率を1割引き上げることで、トン・キロあたりのCO2排出が同程度削減できる試算があります。Scope3排出の削減施策として、共同配送・配車最適化と並んで主要レバーとなります。CO2削減については別稿「物流のCO2削減施策まとめ」で整理予定です。
Q7. 産学連携で積載効率向上の研究を活用したい場合、どう進めれば良いですか。
大学のオペレーションズリサーチ、運輸工学、情報科学系の研究室、業界コンソーシアムでの実証プロジェクト、TLO経由の研究シーズ紹介などが入り口となります。当社は広域TLOとして、こうした接続支援を継続的に行っています。
本記事は倉庫DXナビ編集部が、複数の物流DX企業・倉庫運営者・荷主企業への取材、ホワイトペーパー制作、BrandVoice記事発信を通じて整理した論考です。関連記事:共同配送とは|CLO(物流統括管理者)とは|フィジカルインターネットとは
