倉庫DXのプラットフォーム基盤となるSmart Softwareと国産AMR
公開日
- ヒアリング先
- Industry Alpha株式会社代表取締役 渡辺 琢実 氏
Industry Alpha株式会社は、「スマート工場・スマート倉庫をデザインし実現する」をミッションに掲げ、純国産・自社開発のハードウェアとソフトウェアを基盤としたソリューションを提供しています。自社AMR「Kagero」の制御はもちろん、ロボットアームや搬送設備・エレベーターなどの周辺機器ともシームレスに連携できる「接続性」と「拡張性」を備えています。段階的に自動化を積み上げていく独自のアプローチで、小規模スタートから大規模なスマート倉庫の実現まで、一貫して対応しています。
1. Industry Alphaのサービス全体像
Industry Alphaは、ソフトウェア・ロボティクス・運用支援の3つの中核領域を展開し、工場や倉庫の省人化・省力化を実現するソリューションを提供しています。搬送ロボット(AMR)を開発・販売するとともに、製造・物流現場のすべての機器・設備をつなぎ、データを活用して継続的な改善・全体最適化を推進することを目指しています。
3つの中核領域は以下のとおりです。
Smart Software: 搬送ロボットの群制御からエレベーターやロボットアームなどの機器制御、上位システム統合まで、倉庫や工場の自動化に必要なソフトウェア群を自社開発しています。中核となるフリート管理システム Alpha-FMS はメーカーを問わず複数のAMR・AGVを一元管理できるほか、シャッターやエレベーター、ロボットアームなどの機器制御を担うAlpha-ECS(Equipment Control System)、搬送物のロケーション管理をするAlpha-LMS(Location Management System)など、現場の要件に応じて組み合わせる複数のシステムで構成されています。WMSなどの上位システムとの連携にも対応しています。
Robotics: 自社開発の薄型・重可搬AMR「Kagero」シリーズを展開。国内の物流・倉庫現場に合わせた安全設計が特徴です。Kageroシリーズは500kg可搬から1,200kg可搬まで展開し、狭い通路でもかご台車の下に潜り込んで重量物を搬送できるのが独自性です。
Operational Support Systems: フォークリフト作業分析や搬送シミュレーションなど、自動化の前段階で必要となる現場分析・検証ツールを提供しています。AMRの自律走行技術を応用した高精度なフォークリフト動線分析や、QR式AGVの導入前シミュレーションにより、導入リスクを低減し、自動化に向けた最初の一歩を実現します。
2. AMR「Kagero」の強みと倉庫における活用
「Kagero」はどんなAMRか
Industry Alphaが独自開発したAMR「Kagero」は、日本の物流・製造現場の多彩なニーズに応えるために設計された薄型AMRです。隙間の小さいかご台車の下に潜り込んで重量物を運搬できる設計が特徴です。この低床性が倉庫の現場では高いニーズがあります。
Kageroは「国内メーカーの和製AMR」として安全性にこだわった設計を採用しており、狭い通路での運用や日本の現場特有の制約にも対応しています。搬送対象や運用環境に合わせたカスタマイズも可能で、現場の特殊性に柔軟に応じられる点が海外製AMRとの大きな差別化ポイントになっています。
倉庫・工場でのKageroの活用シーン
Kageroの主な活用シーンは、ピッキング済み商品の搬送、製造ラインから検査場への中間搬送、フロア間の台車移動(エレベーター連携)など多岐にわたります。以下に、実際の導入事例として3年間にわたる段階的な拡張のプロセスをご紹介します。
1年目: 製造ラインの完成品を検査場まで自動搬送。1台のKageroによる単純搬送からスタート。
2年目: ロボットアームと連携を追加。製造完了をセンサーが検知すると、ロボットアームが製品を取り出し、Kageroが受け取って検査場まで搬送する工程を自動化。
3年目: エレベーターと連携し、検査完了品を3階から1階に自動搬送する工程を追加。これらすべてを同じソフトウェア基盤上で制御し、設備を追加するたびに拡張するだけでシステムが成長しました。
このように、最初はシンプルな搬送自動化から始め、年を追って接続する設備・システムを増やしていける「拡張性」が、Kageroと組み合わせるSmart Softwareの真骨頂です。
通信インフラとの連携——ローカル5G・RedCapへの対応
AMRが広いエリアを移動し、エレベーターを跨いだり複数台が同時稼働したりする環境では、通信品質が現場の安定稼働に直結します。Kageroは0.1秒単位での無線通信を行っており、わずかな遅延がロボットの渋滞・停止・誤動作につながるリスクがあります。
倉庫のDXにおいて通信が非常に重要であることから、ローカル5GやRedCap(5G Reduced Capability)端末、Wi-Fi HaLowなどの活用に取り組んでいます。ローカル5G環境では多数の機器を接続しても低遅延かつ安定運用可能です。さらにRedCapは、フルスペックのローカル5G端末と比べて消費電力・コストの両面で優れており、AMRのような移動体への搭載に適しています。Industry Alphaはこのような通信インフラの検証を継続的に進めており、ローカル5Gを導入済みの工場・倉庫からのAMR活用やDXに向けた取組の問い合わせも増えています。通信への知見を蓄積していることは大きな強みです。
3. 自社開発ソフトウェア群(Smart Software)の強みと倉庫における活用
搬送を制御し、現場全体を繋ぐソフトウェア群
Industry Alphaは、AMRの群制御からエレベーター・ロボットアーム等の機器制御、上位システム統合まで、物流現場の自動化に必要なソフトウェア群をSmart Softwareとして自社開発しています。中核となるフリート管理システム Alpha-FMS が搬送ロボットの群制御を担い、WMS(倉庫管理システム)などの上位システムからの指示を受け取り、各ロボットに最適なタスクを割り当て、稼働状況をリアルタイムでフィードバックする「現場オペレーションの頭脳」とも言える存在です。
FMSがない場合、AMRは単体で動くだけです。複数台のロボットを連携させたい、エレベーターや自動シャッターとつなげたい、WMSと作業完了情報をリアルタイムで同期したい、こうした要求が出るたびに個別開発が必要となり、高コスト・長納期・保守の複雑化という課題が生じます。Smart Softwareはこれらを一元的に解決するソフトウェア基盤として機能します。
4つの特長
① マルチベンダー対応: Alpha-FMSはIndustry Alpha製のKageroはもちろん、他社(海外メーカー含む)のAMR・AGV、エンドユーザーが内製したロボットとも接続が可能です。「1つのハードウェア・メーカーを選ぶ必要はない」という思想のもと、異なるメーカーの機器が混在する現場でも包括的な群制御を実現します。
② 豊富な周辺機器との連携: エレベーター・シャッター・フォークリフト・ロボットアームなど、倉庫・工場にあるさまざまな機器とI/O接続、API連携、FTP連携などの手法で接続が可能です。工事不要での接続を実現した実績もあります。WMSなどのシステムとのデータ連携により、倉庫全体の作業進捗をリアルタイムで把握・管理できます。
③ 完全内製・透明性の高い設計: 完全に自社開発のため、ブラックボックスがありません。導入者側でも設定・運用が可能であり、搬送対象や環境に合わせた柔軟なカスタマイズが行えます。機体開発の知見を活かし、すべてのロボットの真価を引き出す制御設計が可能です。
④ スモールスタートからの段階的拡張: 1台のAMRから始めて、年を追って接続する設備・システムを増やしていけるコンポーネント設計・拡張性が特徴です。最初から大規模なシステムを構築しなくても、同じソフトウェア基盤のまま段階的に機能・規模を拡張できます。この「拡張性の設計」は、他社製品にはなかなか見られない同社の独自性とも言えます。
WMSとの連携がもたらす効果
Smart SoftwareとWMSを連携させることで、倉庫オペレーションは大きく変わります。従来のWMS単体では、現場への指示は一方向(WMS→現場)に流れるだけで、実際の稼働状況の把握は人手や目視に頼らざるを得ませんでした。Smart Softwareを加えることで、双方向のデータ連携が実現し、ロボットの稼働状況・作業進捗が自動的にWMSに反映されます。
具体的な効果として、ピッキングリストの順序最適化、AGV複数台への最適配車の自動実行、作業進捗・完了状況の自動フィードバックなどが挙げられます。実際の導入事例では、1ピッキングあたりの作業時間が50秒から30秒に短縮(約40%改善)した実績があります。また、問題発生時には代替機器・ルートへの自動切替が行われるため、従来のような手動対応・現場での個別対応が大幅に減少します。
ただ、WMSと一口でいってもベンダーによって仕様が異なり、また、WMSではなく他の名前で呼ばれるシステムと連携することもあります。詳細はお問い合わせください。
このようなお悩みを持つ企業に
Industry Alphaのソリューションは、特に以下のような課題・状況を持つ企業に適しています。
・自動化を進めたいが、どこから始めればいいかわからない
・上長に費用対効果を説明できる自動化案が思いつかない
・パッケージ製品を検討したが、現場の特殊性に合わず導入を断念した経験がある
・複数のロボットメーカーの機器を使っているが、一元管理できていない
・ロボット導入後、通信トラブルや稼働停止が頻発している
まとめ
Industry Alphaは、AMR「Kagero」と自社開発のソフトウェア群(Smart Software)を軸に、倉庫・工場の自動化を段階的・全体最適の視点で推進する独自のアプローチを持つ企業です。単一ロボットの導入にとどまらず、マルチベンダーの機器・周辺設備・上位システムを横断的につなぐ拡張性のある統合制御プラットフォームは、今後の倉庫DX・スマート工場化を本格的に進めようとしている企業にとって、有力な選択肢となります。
人手不足の深刻化、物流2024年問題への対応、そしてローカル5G等の通信インフラの整備が進む中、「まず通信インフラを整え、そこに機器・システムを積み上げていく」という同社のアプローチは、長期的な視点でのスマート化戦略の羅針盤となるでしょう。
コメント
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
コメント
倉庫DXの議論が「ロボットを入れる」段階から、「複数設備をつなぎ、データで全体最適を回す」段階へ進むほど、Industry Alphaの存在感は増していく。今回のインタビューを通じて、改めてそう感じました。私自身、同社とはホワイトペーパーを共著させていただいたご縁もありますが、サービスの「ミソ」は随所にあります。
まずAMR「Kagero」について特筆すべきは、国産であることです。海外製AMRを導入したものの、故障時の部材調達や保守対応、現場に合わせた微調整で苦労したという声はこれまで何度も耳にしてきました。倉庫はレイアウトも運用も千差万別で、場合によってはカスタマイズした方が成果が出ることもあります。その点、国内に拠点があり、相談・改善のサイクルを回しやすいことは大きな優位性です。加えて、「かご台車の下に潜り込める」という分かりやすい強みがあるため、倉庫でAMR導入の話が持ち上がった際には、まずこの一点だけでも相談してみる価値があると感じます。
次にFMS(Alpha-FMS)は、マルチベンダー対応という点が最大の特徴で、この話をすると多くの方が驚かれます。実際、「複数のAMRを入れたが群制御がうまくいかない」といった課題は、現場で繰り返し起きています。さらに「AMRとエレベーターを連携させようとしたら個別開発になり、多額の見積が出た」といった課題もあり、その場合はソフトウェアを拡張して機器制御システム(Alpha-ECS)で制御も可能です。そこまで踏み込んでDXに取り組もうという段階であれば、FMS導入は十分に検討余地があるでしょう。さらに、倉庫DXを進めるほど無線通信の安定性が成否を分ける論点になってきます。ローカル5GやRedCapといった通信領域まで踏み込み、スマート化を支援できる専門性は希少です。
そして何より、FMSとWMSのデータ連携には高い生産性向上効果が期待でき、その先にはWMSがつながるサプライチェーン系データとの連動も見えてきます。倉庫―サプライチェーンをまたがる物流全体のDXを考える上で、FMS(群制御)やECS(機器制御)は基幹的な位置づけになり得ます。特にCLOの方には、これらを「基盤ツール」として据え、段階的に全体最適を積み上げていくアプローチを強くおすすめしたい内容でした。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
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それらがシステム上で検証された後に記事にコメントとして表示されています。VCとは
VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。






須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー