3DシミュレーションソフトFlexSim ~プログラミング不要で現場をリアルに再現。投資判断から人員最適化まで、倉庫DXの意思決定を変える~
公開日
- ヒアリング先
- 株式会社ゼネテックDX事業部 有馬 淳哉 氏
人手不足・設備老朽化・雇用形態の多様化——今、物流・製造現場が抱える課題はかつてなく複雑になっています。「どこに設備を入れると効果的か」「何人でどの時間に作業を完了できるか」
——そうした問いに、勘と経験だけで答えることはもはや限界を迎えています。株式会社ゼネテックが提供する3Dシミュレーションソフト「FlexSim(フレックスシム)」は、倉庫・工場の現場をリアルに3D再現し、設備投資の判断から人員配置の最適化まで、データに基づいた意思決定を可能にするデジタルツインプラットフォームです。プログラミング不要で誰でも扱えるわかりやすさと、98%以上の高い再現精度で、倉庫DXの現場導入が急速に広がっています。
-
倉庫DXにおいて3Dシミュレーション/デジタルツインが必要な理由
なぜ今、物流・製造現場で3Dシミュレーションやデジタルツインのニーズが急増しているのでしょうか。その背景には、日本社会が直面する複数の構造的な課題があります。
(1)人手不足と省人化・自動化の加速
少子高齢化による人口減少と都市部への人口集中により、物流・製造現場の人手不足は慢性化しています。AGV・自動倉庫・ソーターなど自動化機器の導入が加速していますが、「どこに何台入れれば何人削減できるか」「現在の人員で何時までに作業を完了できるか」という問いへの答えは、実際に設備や人員を動かしてみるまでわかりません。限られた人員をどう効率的に配置するか——その試算をデータでシミュレーションする必要性が高まっています。
(2)設備の老朽化と適切な設備選定の難しさ
バブル期に積極的に投資された設備が今まさに更新時期を迎えています。自動倉庫・搬送機器・AGVなど技術は急速に進化していますが、「自社に本当に必要な設備は何か」「どの組み合わせが最も効果的か」はといった全体最適の視点に基づく適切な設備選定は、部分的な見直しだけでは判断が難しくなっています。。限られた設備投資予算を最大限に活かすためには、導入前に複数の構成パターンを比較・検証できる仕組みが不可欠です。
(3)多様な人材の活躍と、直感的な情報共有の必要性
正規社員やパートタイム、多国籍なスタッフなど、物流・製造現場における働き方はますます多様化しています。FlexSimのアニメーション表示は視覚的に作業フローを共有できるため、言語や経験年数の壁を超えて、「今日の目標を効率的に達成するためにどこで何をすべきか」について、チーム全体で素早く共通認識を持つための有効な手段となります。
(4)環境経営・コスト最適化への対応
CO2排出量の削減・廃棄物削減・エネルギーコストの最適化といった環境経営の要求が高まっています。さらに円安による原材料・エネルギー価格の高騰を受け、工場の生産国内回帰も進んでいます。こうした変化の中で、設備投資・人員配置・物流拠点の配置を事前にシミュレーションして最適解を求めることは、今や経営の必須課題となっています。
-
FlexSimの特徴
FlexSimは、物流・生産流通など「モノが流れる現場」において部分最適・全体最適を図るための3Dシミュレーションソフトです。近年は「デジタルツイン」という文脈でも語られる製品で、現実の工場・倉庫を忠実にデジタル空間で再現し、最適化を図るツールとして世界中で活用されています。
特徴①:プログラミング不要で誰でも使える
FlexSimの最大の特長のひとつが、C言語などのプログラミングスキルが不要である点です。Windowsパソコンを日常的に使える方であれば、現場担当者でも扱えるシンプルな操作性を実現しています。複雑な動作フローはフローチャート形式で設定でき、「条件A・B・Cが揃ったら次の工程へ進む」といった現場の複雑なロジックを視覚的に組み立てられます。
このフローチャート形式は、現場スタッフにとっても直感的に理解しやすいため、作業手順の変更や現場改善をシミュレーション上でまず試してから実行するという「改善のPDCAサイクル」を回しやすくします。
特徴②:物流・製造現場をリアルに3D再現
FlexSimは、倉庫や工場に存在する機器・設備のモデルを標準で豊富に内蔵しています。棚・クレーン・コンベア・AGV・ロボット・フォークリフトなどのオブジェクトをドラッグ&ドロップで配置し、実際の動線に沿って接続するだけで3Dモデルが完成します。新たなモデルを0から構築するのではなく、標準オブジェクトをベースに「実際の現場の配置に合わせて調整する」というアプローチで、スムーズにシミュレーション環境が構築できます。
なお、市場に存在しない新製品・特殊設備については、既存オブジェクトのパラメータ調整またはカスタマイズ対応が可能です。積載量や消費電力などのスペック変更はパラメータ変更だけで対応でき、技術の進化に応じて柔軟に対応できます。
特徴③:結果が視覚的にひと目でわかる
シミュレーション結果はアニメーションで視覚的に確認できます。これは単に「わかりやすい」というだけでなく、多様な雇用形態のスタッフや経営層など、現場の専門知識を持たないステークホルダーとも共通認識を持つための重要な機能です。「この動線にすると歩数が25%削減できる」という改善案を、数字だけでなく3Dアニメーションで可視化することで、現場の抵抗感を和らげ、合意形成を円滑に進めることができます。
特徴④:98%以上の高い再現精度
シミュレーションの精度は、入力データの質に依存します。精緻なデータを収集してシミュレーションに入力した場合、実際の現場との乖離が2%以下(98%以上の一致率)を達成した事例も報告されています。
一方、詳細データの収集が難しい場合でも「ざっくりとしたデータで構築し、補正係数を後からかける」アプローチが有効です。休憩前後の準備・後片付け時間など現場特有のロスタイムを補正係数として反映することで、こちらのアプローチでも98%以上の再現精度が達成されています。精度の意味するところは、たとえば「1000ピッキングを完了するのに10時間」という予測に対して、実績が±2%(9時間48分〜10時間12分)の範囲に収まるということです。
-
FlexSimの倉庫における活用方法
FlexSimは倉庫運営のさまざまな場面で活用されています。新倉庫の立ち上げから既存倉庫の改善まで、以下のようなシーンで導入効果を発揮します。
(1)倉庫・工場のレイアウト設計と動線最適化
新倉庫の設計時や既存倉庫のリニューアル時に、自動倉庫・棚・コンベアなどの配置を3Dモデルで複数パターン比較・検証できます。「これだけのSKUを処理するには、どれだけの設備容量が必要か」「どのレイアウトが最も動線ロスが少ないか」を、実際に設備を入れる前に仮想空間で確かめられます。また、既存倉庫に新たな自動化設備を導入するケースでも、現状の作業フローに組み込んだ場合の効果を事前にシミュレーションすることが可能です。
(2)人員配置の最適化とシフト設計
「何人体制でこの出荷量を捌けるか」「ピーク時間帯に人員をどう配置するか」といった問いに、データで答えられます。時短勤務や休暇予定など多様な働き方を条件として入力し、最適なシフト構成を事前に試算できます。作業負荷の偏りやボトルネックとなる工程を可視化することで、効率的な人員配置が実現します。
(3)設備投資判断と費用対効果の試算
高額な自動化設備の導入判断において、「導入前に効果を試算できない」ことが最大のリスクです。FlexSimでは投資候補となる設備を仮想的にモデルに組み込み、スループットの改善度合いや人員削減効果を定量的に比較できます。「設備Aと設備Bでどちらが費用対効果が高いか」という問いに、シミュレーション結果として数値で答えが得られます。
(4)在庫最適化・物流拠点配置の検討
在庫水準の最適化や、複数拠点にまたがる物流ネットワークの効率化にも活用できます。拠点配置や配送ルートを変えた場合のシミュレーションを通じて、全体最適の物流設計を可能にします。
(5)エネルギー消費量・CO2排出量の削減
設備の稼働パターンや搬送ルートの見直しがエネルギー消費量に与える影響をシミュレーション上で試算できます。環境経営の目標達成に向けた施策の優先順位づけや、CO2削減効果の事前評価にも活用可能です。
(6)業務プロセスの可視化と現場改善活動への活用
「現場の作業がデータ化・可視化されていない」という課題は多くの倉庫・工場に共通しています。FlexSimへの入力作業を通じて業務フローを整理・データ化することで、これまで見えていなかった課題や改善余地が顕在化するケースが多く報告されています。「シミュレーションしてみて初めて問題箇所が見えた」というケースも珍しくなく、DX推進の出発点としての業務可視化ツールとしても機能します。
-
FlexSimの活用イメージ:ワコール流通社の導入事例
FlexSimの具体的な活用イメージとして、ワコール流通株式会社(株式会社ワコールのグループ企業。物流を担っている)の事例をご紹介します。同社の事例は日本ロジスティクス協会の改善事例発表大会でも発表された公開事例です。
背景:BtoBとBtoCの混在オペレーション
同社は守山流通センターを増築した際、従来のBtoB(店舗への出荷)に加え、コロナ禍に急増したBtoC(EC・ネット販売)向けのオペレーションを同一拠点で並走させる必要が生じました。これにより2種類の異なる作業フローが混在するという課題が発生しました。
FlexSim活用による改善プロセス
FlexSimを用いて現状の3Dモデルを構築し、動線・作業フロー・棚の並び方・ピッキング開始場所などを複数パターンでシミュレーション。人が移動する歩数やボトルネック工程を可視化しながら、レイアウトと一部設備構成を見直しました。
導入効果
- 移動歩数を約25%削減:動線の最適化により、ピッカーの無駄な移動が大幅に解消されました。
- 生産性向上:一時低下した生産性が、BtoC導入前を上回る水準まで回復・向上しました。
- 作業者の負荷軽減:出荷効率の向上と歩数削減が連動し、作業者の身体的負担が軽減されました。
- 現場の合意形成を円滑化:シミュレーションアニメーションを実際に見ることで効果を実感し、社員全員が生産性について意識するようになりました。
この事例が示すように、FlexSimの活用は単なる数字の試算にとどまらず、「会社全体を巻き込んだDXの推進」という組織的な側面でも大きな役割を果たします。シミュレーション結果を視覚化することで、データに基づく改善案への理解と協力を引き出しやすくなるのです。
参考:https://simulation.genetec.co.jp/news/20220622-2w/
株式会社ゼネテック 製品ページ:https://simulation.genetec.co.jp/
コメント
-
本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
コメント
倉庫DXというと、高額な自動化機器を導入して一気に変えるイメージを持たれがちですが、FlexSimのお話しを聞いて強く感じたのは「現場の意思決定の質そのものを変えられる」点です。特に面白いと思ったのは、FlexSimのシミュレーション環境上に、倉庫DXに関わる多様な機器(AGV、自動倉庫、ソーター、コンベア等)を“まず置いてみて”、現場の流れの中で効果を確かめられることでした。世の中には選択肢が多すぎて、すべてを知識として網羅するのは現実的ではありません。その中で、導入前に複数パターンを試し、「自社倉庫にとって本当に有用な機器・システムは何か」を見つける“気づき”が得られるのは大きな価値だと感じます。メーカー任せでも勘頼みでもなく、比較・検証を重ねて納得感のある投資判断につなげられる点は、今の環境変化が激しい時代にこそ効いてきます。
もう一つ重要なのは、倉庫DXは「機器を入れること」だけが答えではない、というメッセージです。既存設備の配置や動線、工程プロセス、ピッキング開始位置などを見直すだけでも、生産性は十分に向上し得ます。FlexSimはその改善案を数字だけでなく3Dで可視化できるため、現場担当者“自分ごととして効果を理解しやすく、合意形成にも強い。大きな改革の前に小さな改善を積み重ねる重要性を現場が実感し、倉庫DXに取り組もうという社内意識を醸成するうえでも、非常におすすめできる内容でした。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
このコメントと投稿者情報は、「改竄されていないか」や「正当な投稿者か」などを暗号学的に検証できる〈Verifiable Credential(VC)〉によって保証されています。
それらがシステム上で検証された後に記事にコメントとして表示されています。VCとは
VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。




須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー