アバターロボット「newme」がサービス業の働き方を変える
先端AIロボット事例
- 関連分野・業種
- 小売・店舗、サービス・施設運用、公共
公開日
- ヒアリング先
- avatarin株式会社ソーシャル・ソリューション部 竹内 正樹 氏 新井 茉里奈 氏
「どこでもドアがあれば」――誰もが一度は思ったことがある、この夢に本気で挑んでいる企業があります。ANAホールディングス発のスタートアップ、avatarin株式会社です。同社が開発・提供するアバターロボット「newme(ニューミー)」は、遠隔地からリアルタイムに現場へ乗り移り、見て・聞いて・話して・動き回ることができるロボットです。
フィジカルAIの文脈では、ロボットが現場で身体を動かす「自律制御」ばかりが注目されがちです。しかしavatarinが提唱するのは、ロボットをインフラとして活用し、人間の「意識・技能・存在感」を瞬時に遠隔地へ届け、人のお困りごとを解決するという発想です。本記事では、newmeのサービス概要・活用事例・通信技術・今後の展望をご紹介します。
1. avatarin「newme」とは――人の存在を遠隔に届けるロボット
ANAホールディングス発スタートアップが描くビジョン
avatarin株式会社は2020年にANAホールディングスから設立されたスタートアップです。人間の能力をロボット・AI・通信技術によって拡張することを目指しています。
同社が掲げるビジョンは、「人が物理的に離れた場所にある、AIロボットなど別の存在に乗り移る(インする)こと。また、⼈類のさまざまな情報や能⼒も、その存在に搭載する(インする)こと」、すなわち「アバターイン」です。距離・身体的制限・時間の制約を超えて、誰もが・いつでも・どこでも助け合える世界の実現を目指しています。
人とロボットが共生する社会と、遠隔による働き方の拡充
avatarinが大切にしているのは、「ロボットを介しながら人の温かみのある接客・対話を届ける」という価値観です。newmeを通じた接客では、「顔が見える」ことへの安心感・信頼感が利用者から高く評価されており、機械的な自動応答とは一線を画しています。
働き方の面では、1人のオペレーターが複数箇所に設置されたnewmeを切り替えながら対応できるため、アイドリング時間を最小化しながら効率的に業務をこなせます。身体的制限のある方や育児・介護中の方、地方在住者など、これまで働く機会が限られていた人々が、自宅から専門スキルを活かして活躍できる場が広がります。
2. newmeの活用シーン
newmeはすでに行政・公共施設・交通・小売・教育など幅広い分野での導入・実証が進んでいます。ここでは幾つかの事例を紹介します。
行政・公共サービス:複数拠点を1拠点から効率運営
東京都荒川区・大田区では、全国初の自治体をまたいだ「遠隔区民サービス」の実証が行われました。荒川区と大田区という地理的に離れた2つの本庁舎を一つの拠点からアバターロボットで結び、オペレーターが必要なタイミングだけ各箇所に「投入」する運用で、行政窓口の効率化と住民サービスの維持を両立しました。
空港:リソースシェアによる多言語案内
新千歳空港・旭川空港を舞台にした空港間リソースシェア実証では、東京・日本橋のオフィスに常駐する3名のオペレーターが、両空港に設置されたnewmeを切り替えながら遠隔操作しました。海外からの訪日客に対して日本語・英語・中国語で施設案内・周辺観光案内・二次交通案内を提供し、少人数での多拠点対応を実証しました。便数が少なく繁閑差のある地方空港でも、待機コストをかけずに質の高い案内を提供できる可能性を示しました。
教育・文化:場所を超えた学びと体験
地方の学校が東京の企業へ遠隔で職場訪問をしたり、大阪・関西万博のパビリオンを見学したりといった取り組みも行われました。コスト・距離・身体的制限を超えて、質の高い体験学習の機会を提供できる点が教育分野でも注目されています。また、常滑市の常滑市陶磁器会館での遠隔見学体験のように、文化施設での活用も広がっています。
3. フィジカルAIで活躍する「avatar core®️(アバターコア)」
遠隔操作の品質を左右するのは、何といっても通信の安定性と低遅延性です。「顔が見えること」「リアルタイムに応答できること」がnewmeの価値の核心であるため、avatarinは通信技術に独自の強みを持っています。同社が開発した「avatar core(アバターコア)」です。
ハードウェアとソフトウェアを融合した独自基盤
avatar coreは、独自開発した専用通信プロトコルや専用のマルチモーダルAIモジュールなど、ハードウェアとソフトウェアを組み合わせた技術の総称です。大容量かつ多種多様なデータ(映像・音声・制御信号など)を超低遅延で転送するとともに、エンドツーエンドの暗号化も実装することで、高いセキュリティと安定性を両立しています。
5Gとの連携と大容量データの高速処理
newmeは5Gの大容量・超低遅延の特性を組み合わせることで、さらにパフォーマンスを発揮します。avatar coreの強力な処理能力により、ロボットが動き回る空間の膨大なマルチモーダルデータを、遅延なくシームレスに送受信することが可能です。この「圧倒的にリアルタイムなデータ伝送技術」こそが、次章で触れる「接客スキルのAI化」を実現するための極めて重要な土台(コア)となっています。
4. newmeの今後の社会普及と展望
newmeの強みは、遠隔操作にとどまることなく、映像や音声、操作者の制御情報といったマルチモーダルデータを蓄積・活用できる点にあります。このデータに業界特有のマニュアルや大規模言語モデル(LLM)を組み合わせることで、各現場に最適な「AI」を生み出します。
業界特化型のノウハウを持つ熟練者のスキルを学習したAIは、ロボットやデバイスの中で、AIエージェントとして活躍することが可能です。これにより、ロボットやデバイスを通じて、AIと人が役割を分担し、質の高いサービスを継続的に提供できる体制が整います。
実際の運用では、まずAIがお声がけを行い、判断が難しい内容は人間の遠隔オペレーターへバトンタッチ。さらに物理的な対応が必要な場合は現場スタッフへ引き継ぐといった具合です。こうした段階的な「AI・人間協調モデル」により、サービス品質を維持しながら運営コストを低減する仕組みを実現します。
インクルーシブな社会インフラとしての可能性
newmeが目指す社会は「インクルーシブ(包摂的)」という言葉に繋がっていきます。障害のある方・育児中・介護中・地方在住など、さまざまな理由で物理的に移動や出勤が難しい方が、AI・ロボティクスの支援を得ながら、newmeを通じて社会参加・就労の機会を得られる可能性があります。また利用者側の視点からも、時にはロボットを操作して、移動困難な方が遠隔で地域サービスにアクセスし、また時には、自分が出かけた先で、AIや人から様々な手厚い支援を受けやすくなるなど、身体的・地理的制約を超えた生活を実現します。
まとめ
身体の制約なく「どこにでも存在できる」時代への扉を開くnewme。人手不足・少子高齢化・地域格差といった日本の社会課題に対して、フィジカルAIの力で、人とAIとが高度に協働する社会を創るavatarinの挑戦は、AI・ロボティクスと社会実装の新たな可能性を示しています。
avatarin株式会社
URL:https://about.avatarin.com/
コメント
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本Webサイトの運営担当者です。2005年から、産学官連携や産業振興の業務に携わっています。
コメント
サービス業の現場でマネジメントを担う方ほどnewmeの思想に強く惹きつけられるはずです。人手不足が進む一方で、接客・案内・窓口といった業務は現地に人がいることが前提になりやすく、テレワーク化が難しい課題があります。newmeはその課題を克服し、遠隔からロボットを介して働くという選択肢を実際に提供する点が印象的でした。
さらに、遠隔接遇とAIが組み合わさることで運用効率はさらに高まります。AIが対応できる問い合わせはAIが一次対応し、判断が難しい・配慮が必要な対応は人が遠隔で引き継ぐ役割分担ができれば、接遇品質を落とさずに対応範囲を拡張でき、繁閑差の大きい施設でも合理的な運用ができるようになります。AI活用が進んでもAIだけでは不安が残る領域は確実に残りますが、newmeの価値はまさにそこにあり、顔が見えることによる安心感や、移動しながら案内できる存在感が、現場の接客体験を損なわずに省人化へつなげられると感じました。
そして、この体験品質を下支えするのが低遅延を実現する通信技術です。遠隔操作の滑らかさは信頼に直結します。その点で、サービス業の現場に適したUI/UXと先端技術の集合体として非常に完成度が高く、社会普及が進んでいく未来が楽しみになる内容でした。このコメントと投稿者はデジタル証明書(VC)によって真正性が保証されています。
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それらがシステム上で検証された後に記事にコメントとして表示されています。VCとは
VC(Verifiable Credential)は、デジタル空間で「改ざんが検知可能」かつ「即座に検証可能」な証明書です。
紙の証明書やPDFと異なり、暗号技術により真正性が数学的に保証されており、W3Cにより制定された国際標準規格です。




須藤 慎
記事作成者
株式会社キャンパスクリエイト・専務取締役・プロデューサー