AI推進法(日本)
AI推進法とは、日本で初めてAIを対象として制定された基本法で、AIの研究開発と活用を推進しつつ、リスクに対応するための国の体制と基本的な方針を定めた法律です。 正式名称は「人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律」で、2025年6月に公布、同年9月に全面施行されました。
別表記:AI推進法/AI法/AI基本法/AI新法/人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律
どういう法律か
AIのイノベーションを促進することと、AIによるリスクに対応することの両立を目的としています。
国の体制として、内閣にAI戦略本部を置き、AI基本計画を策定することを定めています。基本計画は、AIの研究開発と活用に関する国の施策の方向を示すものです。
事業者に対しては、国の施策に協力するよう努めること、AIの適正な活用に努めることが定められています。罰則はありません。何をしてはいけないかを列挙する規制法ではなく、理念と体制を定める基本法という性質の法律です。
事業者にとっての意味
罰則がないので、直接の法的義務はほとんどありません。ただ、国がAIの活用を推進し、リスクへの対応を求める、という方向を法律として示した意味は小さくありません。
この法律の下で、AI基本計画が定められ、ガイドラインや指針が整備されていきます。すでにある「AI事業者ガイドライン」も、この法律の枠組みの中に位置づけられます。事業者がAIを導入するときに「国の方針に沿っているか」を問われる場面で、参照されるのはこの法律と基本計画です。
事故が起きたときには、「国が推進と同時にリスク対応を求めていたのに、何もしていなかった」という見方をされる可能性があります。法的義務がなくても、説明責任の文脈では意味を持ちます。
海外の法律との違い
欧州のAI法は、AIをリスクの程度で分類し、高リスクのAIには具体的な義務を課し、違反には罰金を科す規制法です。日本のAI推進法は、これとは性質が違います。規制ではなく推進と体制整備を主眼とし、具体的な義務はガイドラインに委ねる形です。
どちらが良いかではなく、日本の企業にとっては、法律そのものよりも、その下で整備されるガイドラインや指針を追うことが実務上は重要になります。
AIエージェントとの関係
この法律は、AIエージェントについて特別の規定を置いていません。ただ、国の施策の中で、AIエージェントの活用と、その安全確保は主要な論点になっています。デジタル庁の検討会でも、民間向けのAIエージェント利用のガイドラインが検討されています。
AIエージェントの権限をどう設定するかは、こうした検討の中で論点として位置づけられています。VC(Verifiable Credentials)は、その論点に対する技術的な選択肢の一つです。
よくある誤解
罰則がないなら、無視してよいか。 法的な直接の義務は限られます。ただ、この法律の下で整備されるガイドラインは、取引先や監査から参照されます。事故が起きたときの説明責任においても、国の方針を知らなかったとは言いにくくなります。
欧州のAI法と同じようなものか。 性質が違います。欧州は規制法、日本は推進と体制整備の基本法です。
AI事業者ガイドラインとの関係は何か。 ガイドラインは法律より先に存在していましたが、法律の施行後は、この法律の枠組みの中で位置づけられ、更新されていきます。
