AIエージェント
AIエージェント同士をつなぐA2Aは、どこまで来たか
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AIエージェント同士を連携させるA2Aは、1年で150を超える組織が支持する標準になりました。ただ、標準化されたのは「誰か」までで、「何をしてよいか」は各社の宿題として残っています。
A2Aとは何か
A2A(Agent2Agent)は、AIエージェント同士が連携するための手順を定めた規格です。異なる会社が、異なる仕組みで作ったAIどうしが、互いを見つけて作業を渡し、結果を受け取れるようにすることを目的にしています。
Googleが2025年4月に公開し、2か月後にはLinux Foundationへ移管されました。移管にはAWS、Microsoft、Cisco、Salesforce、SAP、ServiceNowが名を連ねています。同じ年の8月には、IBMが独自に進めていた同種の規格をA2Aに統合しました。
2026年8月には、Linux Foundation内でAIエージェント関連の規格を扱う組織へと移り、MCP(Model Context Protocol)と同じ傘の下に入っています。
MCPとの違い
この2つは、よく混同されます。担っている役割が違います。
MCPは、AIと道具をつなぐ規格です。AIが社内のシステムやデータにアクセスするための共通の手順を定めています。
A2Aは、AIとAIをつなぐ規格です。自分の管理下にないAIに作業を渡し、結果を受け取るための手順です。
「自社のAIに機能を持たせる」のがMCP、「他社のAIに仕事を頼む」のがA2A、と考えると整理しやすいと思います。組織の境界を越えるかどうかが、大きな分かれ目です。
1年でどこまで来たか
Linux Foundationが2026年4月に公表した1周年の実績によれば、支持を表明した組織は150を超え、開発者向けの部品は5つの言語で提供されています。Google、Microsoft、AWSそれぞれのAI開発基盤に組み込まれ、供給網の管理、金融、保険、IT運用といった分野で実際の運用に入っているとされています。
仕様としても、企業向けの機能を備えた安定版が公開されました。複数の利用者を分けて扱う仕組みや、負荷分散を想定した構成が含まれています。
ただし、数字の見方には注意が要ります
一方で、この分野を継続的に見ている人たちからは、慎重な評価も出ています。
150という数字は、支持を表明した組織の数です。実際にどれだけの案件で使われているのかという数値は公表されていません。開発者のあいだでの広がりという点では、MCPのほうが実績を積んでいるという指摘もあります。
理由として挙げられているのは、使いどころと導入の負担です。A2Aが備える機能の一部は、MCPでも実現できてしまう。組織をまたいでAIに仕事を頼む場面が、まだそれほど多くない。そうした事情から、あえてA2Aを選ぶ理由が見つけにくい、という見方です。
規格として整いつつあることと、現場で使われていることは別の話です。ここは分けて見ておいたほうがよいと思います。
この記事で一番お伝えしたい点
標準化によって、何が決まり、何が決まっていないのか。ここが重要です。
A2Aの安定版には、署名付きのエージェントカードという仕組みが入りました。エージェントカードは、そのAIが何をできるのか、どこに接続すればよいのかを記した自己紹介にあたるものです。これに署名を付けることで、名乗りが本物かどうかを確かめられるようになりました。
つまり、そのAIが誰であるかは、証明できるようになりました。
しかし、そのAIが何をしてよいかは、標準の外に残されています。
規格が定めたのは、AIどうしがどう会話するかであって、どのAIがどのデータに触れてよいかではありません。署名付きのエージェントカードは身元を証明しますが、そのAIがどこまでアクセスしてよいのかについては何も述べていないのです。
複数のベンダーのAIを組み合わせて使う企業にとって、これは配管の話ではなく、責任の所在の話になります。
権限をどう扱うかは、各社の宿題として残っている
身元が証明できることと、権限が管理できることは違います。名刺を確認できたからといって、その人に社内のどこまで入ってよいと決めたことにはなりません。
AIが別のAIに作業を渡すとき、渡された側は、そのAIが誰の委任を受け、どこまでの権限を持つのかを確かめる必要があります。自社のガードレールの設定は、渡した先には届きません。組織をまたげばなおさらです。
ここを埋めるのが、権限を持ち運べる形にする仕組みです。改ざんされたことが分かるデジタルの証明として、何をどこまでいつまで実行してよいのかをAI自身に持たせておく。VC(Verifiable Credentials)が検討されているのは、この部分です。
決済の分野では、この考え方がすでに形になっています。GoogleのAP2(Agent Payments Protocol)は、「何を、いくらまでなら買ってよいか」という利用者の指示を、W3CのVCの規格に沿った署名付きのデータとして残す仕組みです。エージェントはその範囲を超えられません。
連携の手順は標準化された。次は、権限をどう表現し、どう検証するかという段階に入っています。
導入を検討している企業が確認しておきたいこと
いますぐA2Aに対応する必要がある企業は、多くはないと思います。組織をまたいでAIに仕事を頼む場面が、まだ限られているためです。
ただ、次の点は早めに整理しておく価値があります。
自社のAIが、どこまでを自分の管理下で完結させているか。外部のサービス上で処理が続く構成になっていないか。
外部のAIから依頼を受ける可能性があるか。その場合、相手が本物かどうかをどう確かめるのか。
AIに渡している権限が、どこまで持ち運ばれているか。別のAIに作業を渡す構成であれば、権限がどう引き継がれているかを把握しているか。
規格が固まるのを待つ必要はありません。権限の範囲と期限を決めておくことは、どの規格を採用するかとは独立して、いま取り組めることです。
