倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト イベントレポート記事(全4回)
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本Webサイトでは、倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト・ホワイトペーパーを発行・公開しています。このプロジェクトは、4回のイベントを通して倉庫DXの在り方と具体的な推進方法を検討することを目的に行いました。
各イベントレポートのサマリーを下記にまとめます。ホワイトペーパーと併せて、ぜひご参考ください。
【第1回】「倉庫DX実現に向けたスタートアップの革新サービス紹介セミナー」レポート
(2024年12月16日開催) https://www.campuscreate.com/next5g/452/
物流業界が直面する「物流2024年問題」。ドライバーの時間外労働規制強化により、輸送能力の不足が深刻化するなか、業界全体での省力化・省人化・生産性向上は待ったなしの課題となっています。こうした状況を背景に、Industry Alpha株式会社と株式会社キャンパスクリエイトは、2024年11月に「倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト」を立ち上げました。その第一弾イベントとして、2024年12月16日、東京・京橋のIncubation CANVASにて「倉庫DX実現に向けたスタートアップの革新サービス紹介セミナー~搬送の自動化・ロボット化が拓く物流変革」を開催しました。 セミナーでは冒頭、キャンパスクリエイトよりローカル5Gの動向が紹介されました。基地局の価格低減傾向や、新通信規格「RedCap」の普及による端末コストの低下、2025年中に見込まれるローカル5G免許の法改正など、倉庫業界にとって使いやすい環境が整いつつあることが示されました。また、2026年には荷主企業に物流統括管理者(CLO)の設置が義務付けられる予定であり、物流DXの推進は急務であると強調されました。 基調講演では、国土交通省の担当官が「物流改正法」について解説。荷主・物流事業者に対し物流効率化への取り組みを義務化し、荷待ち・荷役時間の削減や積載率向上に向けた国の関与が強化される方針が示されました。また、物流施設における「DX推進実証事業」の事例として、マテハンシステム導入による作業コスト40%削減、RFIDシステムによる貨物探索時間50%削減、バース予約システムによる荷待ち時間30%削減などの実績が紹介されました。 物流不動産デベロッパーの日鉄興和不動産は、物流コストがこの10年で約1.3倍に上昇するなかで、省人化・床面積の有効活用が不可欠と指摘。デジタルツインによるシミュレーションを活用するゼネテックは、倉庫のレイアウトや人員配置、設備台数などを仮想空間で検証できる3Dラインシミュレーションソフト「FlexSim」を紹介し、低コスト・ノーリスクで課題検証ができる利点を解説しました。ソフトバンクは屋外・屋内測位サービスを紹介し、UWB技術による水平誤差30センチ以内の屋内測位で在庫最適化や作業効率向上を目指す取り組みを発表しました。 後半のスタートアップセッションでは、Industry Alphaがガイドレスで自律走行するAMR(自律走行ロボット)と、それらを制御するFMS(フリートマネジメントシステム)「Alpha-FMS」を紹介。工程ごとの自動化を連動させ、全体最適を実現するスマート倉庫の構想を示し、ローカル5Gのような高品質・低遅延ネットワークの重要性も訴えました。ハクオウロボティクスは、業界初となる複数パレットの一括自動認識機能を持つ自動フォークリフト「AutoFork」を紹介。従来の手動フォークリフト作業を自動化し、ドライバー不足にも対応できる即戦力ソリューションとして注目を集めました。eve autonomyは、工場・物流施設の敷地内屋外搬送を自動化する「eve auto」を紹介し、工事不要・ルート変更が容易・サブスクで初期投資を抑制できるという導入のしやすさが参加者の関心を集めました。2024年12月時点で全国40拠点・70台以上が稼働中です。 閉会挨拶でIndustry Alphaは「課題ドリブンな提案が印象的だった。最先端技術をいち早く現場に実装していこう」と締めくくり、その後のネットワーキングでも活発な名刺交換・情報交換が行われました。

【第2回】「倉庫DX実現に向けた先端技術勉強会 ~AMR・ローカル5G・ドローン物流の未来~」レポート
(2025年3月4日開催) https://www.campuscreate.com/next5g/452/
「倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト」第2回目となるイベントが、2025年3月4日に開催されました。会場は2024年9月に竣工した都内最大級の街づくり型物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」。倉庫DXの代表的な構成機器「AMR(自律走行搬送ロボット)」と、AMR等の搬送機・ロボットを倉庫内で有効活用するために期待される「ローカル5G」を中心に取り上げ、基礎知識から活用のポイント、今後の技術的展望まで幅広く紹介しました。さらに特別企画として、物流業界での普及が期待されるドローンをテーマにした講演と、「板橋ドローンフィールド」の見学ツアーも実施されました。 前半のAMRセッションでは、まずIndustry AlphaがAMRの基本から解説しました。AMRはLiDAR(ライダー)センサーで周囲の地図を自律作成し、現場への磁気テープ・QRコード設置が不要で、広いエリアでの使用やレイアウト変更にも柔軟に対応できる点が特徴です。人との共存も可能で、センサーによる障害物検知により、作業員が多い現場でも安全に運用できます。有効活用のためには荷物の受け渡しタイミングやエレベーター・自動扉との連携を含むシステム全体設計が重要であり、同社ではAMRを統合制御するFMS(Fleet Management System)の開発も進めています。フジテックスは、ノルウェー発スタートアップとのパートナーシップによる「wheel.me」(自律型ホイールAMR)を紹介。既存の台車やラックの底部に取り付けるだけで搬送を自動化でき、Wi-Fi環境さえあれば数日で設置可能な手軽さが評価されています。長尺物の工程間搬送や廃段ボール回収など、単純搬送作業の代替に適しています。 ローカル5Gのセッションでは、ネットワンシステムズが共創空間「netone valley」でのAMRを使った実証結果を発表。最新のWi-Fi 7でも「6GHz帯の屋内限定」「端末増加時の通信効率低下」「ローミング時の通信断」などの課題があるとし、安定性やパフォーマンスを重視する倉庫環境ではローカル5Gとの使い分けが必要と提言しました。ネクスは、フルスペック5Gの機能を軽量化した新通信カテゴリ「5G RedCap(Reduced Capability)」を紹介。低コスト・省電力・広カバレッジというメリットにより、自動搬送ロボットの通信やRFIDリアルタイム読み取り、AIカメラ解析など倉庫業務の効率化・省人化に貢献すると期待されており、2027年にはMVNOの5G SAサービスも見込まれるとして、RedCapが次世代のIoT通信の主流になると予測しました。 後半のドローンセッションでは、三井不動産・日鉄興和不動産・ブルーイノベーションの3社が登壇しました。「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」は、日本製鉄東京製造所の跡地を活用した都内最大級の物流施設で、板橋区との協議により防災拠点や区内小中学校への余剰電力供給なども担っています。同施設に併設された「板橋ドローンフィールド」はドローン事業者の実験・研究の場として提供されており、ブルーイノベーションが長距離・長時間対応の高性能ドローンポートや統合プラットフォーム「Blue Earth Platform(BEP)」を活用した運用を展開しています。 閉会挨拶でIndustry Alphaは「通信・ロボット・ドローンなど多岐にわたる技術が組み合わさる倉庫・工場のスマート化は総合格闘技のようなもの。全体像と全体最適を見据えて関係者が連携することが重要」と語りました。閉会後の見学ツアーでは、5.5メートルの梁下有効天井高を誇る広大な倉庫スペースや屋上のドローンポートなどが紹介され、参加者の間で活発な意見交換が行われました。

【第3回】「配送系・倉庫のデータ活用によるスマート物流勉強会 ~CLOの視点とデータ戦略~」レポート
(2025年7月4日開催) https://www.campuscreate.com/next5g/529/
第3回目のイベントは、2025年7月4日、東京・中野のフジテックス本社内オープンイノベーション施設「WAVE」とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。テーマは「CLO(物流統括管理者)の確保・育成」と「物流システム全体最適化のための戦略的データ活用」。2026年4月より一定規模以上の荷主企業への設置が義務付けられるCLOの役割と、物流全体をデータでつないで効率化するためのアプローチが、実務に近い形で解説されました。 冒頭、キャンパスクリエイトが趣旨を説明しました。国交省が「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」を政策として掲げており、配送系では共同配送・企業間連携、倉庫系では輸送とのシームレス化・連携強化が求められているとしたうえで、CLO(物流統括管理者)のデジタル化・効率化のノウハウは物流会社の管理部門やサプライチェーン担当者にも不可欠なものであると強調しました。 Hacobuは、物流課題を解決するアプリケーション「MOVO」と、物流DXコンサルティング「Hacobu Strategy」を紹介しました。CLOに求められるのは、物流コストの効率化にとどまらず、経営メンバーとしてROIC(投下資本利益率)の最大化や環境・レジリエンスの観点からの社会最適化の推進であると指摘。商慣習を見直し、物流と営業・発荷主と着荷主がデータを共有しながら連携するアプローチ「Data-Driven Logistics®」を提唱しています。トラック予約受付システム「MOVO Berth」は荷待ち・荷役時間の削減に効果があり、WMSとのAPI連携も可能で物流システム全体のハブとなりうる点も紹介されました。デンソーや業界横断型「物流ビッグデータラボ」の取り組みなど、全社的に物流改革に乗り出す荷主企業の事例も示されました。 フジテックスは、物流分野の人材市場動向を解説しました。物流企画に関わる求人数はこの10年で約15倍、物流デジタル化関連では約17.5倍に急増し、物流IT人材の募集年収も上昇傾向にあるとのデータを示しました。物流会社から荷主企業への転職希望も2022〜2024年の間に3.5倍以上になっており、荷主企業が自社の物流機能強化に力を入れている実態が伺えます。2026年度から義務化されるCLO(物流統括管理者)は全国で約3,000人が新たに誕生する見込みで、物流会社と荷主企業が共通言語を持って改革を推進することが肝要と締めくくりました。 東京大学大学院工学系研究科の川崎智也准教授は、物流・サプライチェーン研究の最新動向を発表しました。衛星データや土地被覆データを活用した貨物発生・集中量の推定モデル、トラックのOD(Origin-Destination)表の自動推定、EVトラックの走行中無線給電の最適配置研究など、工学的アプローチで物流の複雑な問題に取り組む様子が紹介されました。高度な計算インフラと情報処理技術の活用、そして物流分野の高度人材育成の重要性を訴え、2025年10月からは企業の部課長クラスを対象としたSCMリカレント教育プログラムも開始することが発表されました。 Industry Alphaは、FMS(Fleet Management System)とWMS(倉庫管理システム)の連携による倉庫スマート化の事例を紹介。AMRや自動倉庫・エレベーターなど多様な設備を、メーカーや接続方式を問わず統一的に制御できるFMSの高い拡張性・接続性を示し、FMSとWMSの連携により1ピッキングあたりの作業時間を50秒から30秒へ40%改善した実績を発表しました。人とロボットが協調するスマート倉庫の実現に向けた具体的な道筋が示された講演として、参加者の高い関心を集めました。

【第4回】「倉庫×無線 スマート物流勉強会 ~倉庫DXの潮流とローカル5G・無線活用アプリケーションの普及性~」レポート
(2025年9月26日開催) https://www.campuscreate.com/next5g/566/
第4回目は、2025年9月26日に東京・中野のフジテックス本社「WAVE」とオンラインのハイブリッド形式で開催されました。テーマは「倉庫における無線ネットワーク構築のポイントとローカル5Gの活用」、そして「物流業界における無線活用アプリケーションの広がり」です。倉庫DXを推進するうえで重要度が増す通信インフラに焦点を当て、実務的な注意点から最新ソリューション、現場で活用できるデバイスまで幅広く紹介されました。 冒頭、キャンパスクリエイトはスマート物流における無線通信の重要性を強調しました。自動化機器を増やすほどに無線インフラの安定性が業務全体に影響する一方で、最適な無線環境の構築は容易ではないと指摘。ローカル5Gについては、今後の機器価格低下・RedCap対応端末の普及・免許取得手続きの簡素化により活用しやすくなり、自動化ロボットやデジタルツインなど多様なアプリケーションの普及が加速すると見通しを示しました。 フジテックスは、倉庫・工場の自動化・省人化における無線ネットワークのトラブル事例と対策を紹介しました。現場で起こりうる問題として「Wi-Fiが繋がらないエリアの発生」「AMRの動作停止・誤作動」「移動中の通信断」から、経営レベルでは「サイバー攻撃による情報漏洩」「システム全体の業務停止」まで多岐にわたることを示したうえで、「事前の専門家による電波調査」「出口対策を含むセキュリティ対策」「UPSやバックアップ回線によるBCP(事業継続計画)の策定」を推奨する対策として提示しました。Wi-Fi不通やAMR停止に対する具体的な解決事例も交えながら、現場担当者が押さえるべき実践的な知識が提供されました。 双日テックイノベーションは、米国Celona社のローカル5Gソリューションを紹介しました。現状のローカル5G普及の壁として「端末・アプリの未対応」「コストの割高感」「運用難」を挙げたうえで、Celona社の製品はLANへの統合・マイクロスライシング・低コスト・運用のシンプルさを特徴とし、スマート倉庫で100台以上の高速走行ロボットの通信を安定化させながらアクセスポイント数を10分の1に削減した導入事例を紹介。ヒューマノイドロボットや倉庫のデジタルツイン化など次世代技術の実用化に向けて、広範囲・多移動体・過酷な環境に適したローカル5Gの重要性を訴えました。 Industry Alphaは、スマート倉庫での無線通信の重要性を改めて整理しました。無線通信の「遅延」が引き起こす「デッドロック(複数ロボットの同時停止)」「誤検知(カメラ映像の遅延による在庫認識ミス)」「システム連携の停止(エレベーター等との通信断)」といった問題を解説し、ローカル5Gがこれらを解決できる理由として、ハンドオーバーの安定性、大容量データのリアルタイム送信、設備間同期によるジャストインタイム実現などを挙げました。また、小型・低電力のRedCapが搬送ロボットへの搭載を容易にし、スマート倉庫の普及をさらに後押しすると期待を示しました。 セーフィーは、クラウドカメラによる物流DXの活用事例を多数紹介しました。LTE内蔵モデルによりWi-Fi環境がなくても電源だけで使える手軽さと、バース(トラック接車場所)の遠隔管理、全国拠点の一元管理、マテハン機器のトラブル対応迅速化、検品・梱包工程の品質向上など、すぐに着手できるDXの一手として参加者の関心を集めました。ビュージックスジャパンは、法人向けスマートグラスによる物流現場の業務改善を紹介。ピッキングのハンズフリー化、ARナビゲーションによる棚誘導、リアルタイム翻訳による外国人労働者の即戦力化など、「未来のデバイス」ではなく現実の課題を解決するツールとして具体的な活用シーンを示しました。 会の終了後も会場では名刺交換や意見交換が活発に行われ、倉庫DX推進に向けた業界の高い関心が伺える盛況なイベントとなりました。
