デジタルアイデンティティウォレット
デジタルアイデンティティウォレットとは、デジタルの証明を保管し、必要なときに提示するための仕組みです。 財布に免許証やカードを入れて持ち歩く、あの役割をデータで果たすものです。
別表記:デジタルアイデンティティウォレット/デジタルウォレット/IDウォレット/ウォレット/電子的な財布
何をするものか
複数の発行元から受け取った証明を、ひとつの場所にまとめて保管し、求められたものを選んで提示します。証明の受け取り、保管、提示、そして不要になったものの削除といった操作を行います。
なぜ本人が持つ形なのか
デジタルの証明(VC/Verifiable Credentials)は、発行者が電子署名を付けたもので、受け取った本人が保管します。
証明が発行元のデータベースに置かれたままだと、確認のたびに発行元への問い合わせが発生します。手元にあれば、その場で相手に渡して確認してもらえます。この構造が、この仕組みの特徴です。
人が使う場合とAIが使う場合
人が使う場合は、スマートフォンのアプリとして提供されるのが一般的です。
AIが使う場合は、その実行環境に紐づいた保管場所が想定されます。人が画面を操作するのではなく、システムが自動的に証明を取り出して提示することになります。
失われたときにどうするか
設計で難しいのが、この点です。端末を紛失した、機種を変更したという場合に、保管していた証明をどう扱うのか。証明のデータが残っていても、それを自分のものだと示す鍵が失われていれば、提示は成立しません。
なぜ難しいかというと、鍵をどこかに預けておけば復旧できますが、預けた先が漏えいすれば意味がなくなるからです。安全性と復旧しやすさが正面から対立するため、決め手になる方法がありません。
人が資格証明などを持つ場合は、この問題を避けて通れません。復旧の手順をあらかじめ用意しておかないと、運用が止まります。
一方、AIに権限を持たせる場合は事情が違います。実行環境が作り直される、別の基盤に移るといった形で同じ状況は起きますが、復旧せずに再発行するという選択が現実的です。 AIに渡す権限はもともと期限が短く、その業務のあいだだけ有効であれば足ります。失われたら出し直せばよい、と割り切れます。
ウォレット自体が本物かどうか
そのウォレットが正当なものかを確かめる仕組みも議論されています。偽のウォレットに証明を発行してしまうことを防ぐためです。
証明を発行する側からすると、渡した先が信頼できる保管環境なのかどうかは重要な関心事になります。鍵が適切に守られていない場所に発行すれば、漏えいの経路を自分で作ることになるためです。
