A2A/AtoA(エージェント間連携

A2A(AtoA)とは、AIエージェント同士が互いに作業を渡し合い、連携して処理を進める構成のことです。 Agent to Agentの略で、A2AともAtoAとも表記されます。

別表記:A2A/AtoA/Agent to Agent/Agent2Agent/エージェント間連携/AIエージェント同士の連携/マルチエージェント連携

どういう構成か

一体のAIにすべてを任せるのではなく、複数のAIが役割を分担します。調査を担当するAI、整理を担当するAI、確認を担当するAI、というように分け、互いに結果を渡しながら処理を進めます。人間の組織が分業するのと同じ発想です。

同じ会社の中で複数のAIが連携する形もあれば、別の会社のAI同士がやりとりする形もあります。自社の購買AIが、取引先の受注AIに注文を出す、といった構成が後者です。

言葉の二つの意味

A2Aという言葉は、二つの意味で使われます。

ひとつは、上に書いた「AIエージェント同士が連携する構成」という一般的な意味です。

もうひとつは、その連携の手順を定めた特定の規格の名前です。異なる会社が作ったAIエージェント同士でも、決まった手順でやりとりできるようにするための約束事で、オープンな仕様として公開されています。文脈によって、構成の話をしているのか、規格の話をしているのかが変わるので、読むときは注意が必要です。

このほか、AIエージェントが外部のツールやデータに接続するための規格も別にあり、そちらは「エージェントとツール」の接続を扱います。「エージェントとエージェント」の接続を扱うA2Aとは、役割が違います。

社内と社外で事情が違う

同じ組織の中で複数のAIが役割を分担する場合は、既存のID管理や社内の統制で対応できる範囲が大きくなります。すべてのAIが自社の管理下にあり、権限の設定も自社で把握できます。

組織をまたぐと、話が変わります。相手のAIが誰の管理下にあり、どこまでの権限を持つのかを、自社の基盤では確かめられません。相手のAIが自社のAIに「この注文を処理してください」と言ってきたとき、それが本当に相手の会社の正規のAIで、注文を出す権限を持っているのかを、どうやって確認するのか。

人であれば名刺があり、電話をかけ直すことができ、顔を知っている担当者がいます。AIにはそれがありません。

権限が薄まっていく問題

AIからAIへ作業が渡るとき、最初に指示を出した人の意図が、どこまで引き継がれるのかという問題があります。

最初の人は「この資料を読んで要約して」と頼んだだけでも、要約AIが調査AIに「関連資料を探して」と頼み、調査AIが別のAIに「この共有フォルダを全部見て」と頼む。連鎖の途中で、範囲や前提が少しずつ変わっていきます。最後のAIが何をしてよいのかは、最初の人が決めたものとは違っているかもしれません。

構成が複雑になるほど、全体像を把握しにくくなり、どのAIがどの権限で動いたのかを後から辿るのが難しくなります。

VCとの関係

AIからAIへ作業を渡すとき、渡された側は、渡してきたAIが誰の委任を受けていて、どこまでの権限を持つのかを確かめる必要があります。自社のガードレールやID管理の設定は、渡した先には届きません。組織をまたげばなおさらです。

VC(Verifiable Credentials)は、この「持ち運べる証明」にあたります。AIエージェントが「誰の委任で、何をどこまで、いつまで」の証明書を携えていれば、受け取った側は自分でそれを検証できます。相手の社内設定を見に行く必要も、電話で確認する必要もありません。

権限が薄まっていく問題にも、証明書は効きます。最初の委任の内容が証明書に書かれていれば、連鎖の先のAIが、その範囲を超える操作をしようとしても、受け付ける側で止まります。

用語としての注意

A2A、AtoAという略語が一般に通じるとは限りません。社外向けの文書で使う場合は「AIエージェント同士の連携」と平易に書くか、初出で説明を添えるのが無難です。また、規格の名前としてのA2Aと、構成の話としてのA2Aを、文脈で区別する必要があります。

よくある誤解

A2Aは規格の名前か、構成の名前か。 両方です。一般的な構成を指す言葉として先にあり、後から特定の規格にもその名前が付きました。

社内でAIを連携させるだけなら、関係ないか。 社内でも、権限が薄まっていく問題は起きます。社外とのやりとりがないぶん確認は楽ですが、どのAIが何をしてよいのかを決めておく必要は変わりません。

A2Aが普及すれば、権限の問題は解決するのか。 A2Aの規格は、AI同士が会話する手順を定めるものです。会話できることと、相手を信用してよいかどうかは別です。信用の根拠は、規格の外側で用意する必要があります。

一覧に戻る