崇城大学 工学部 ナノサイエンス学科 教授

池永 和敏

  • その他

マイクロ波を利用した災害瓦礫の処理技術

生活用品に使用されているプラスチックの弾性率は低いため、高硬度を要求される構造用材料としては適していなかった。この欠点を補うために、骨組のガラス繊維、架橋剤のスチレンと不飽和ポリエステル用いた網目状の樹脂構造を持つ強靭なプラスチックが開発された。

そのプラスチックは高硬度で耐熱性や耐薬品性を持つ複合材料のガラス繊維強化プラスチック(GFRP)である。GFRPは金属材料に比べると飛躍的に軽量であるため金属代替材料として、例えば、船舶、自動車、新幹線の外壁、建築材、ヘルメット、浴槽及びタンク槽など幅広い分野の製品に使用されている。一方、その強靭な性質のため廃棄する場合は、破砕・熱融解が極めて難しい材質である。
処理方法としては、90%以上が破砕後に埋め立てられ、数%が燃料として熱回収されていることから、廃棄GFRPの積極的な再利用はほとんどされていないのが現状である。埋め立て用の土地が確保できない狭い国や地球温暖化防止として二酸化炭素発生抑制が必要であるため、世界的に廃棄GFRPの燃焼処理や埋め立て処理ができない状況になってきている。すなわち、将来的にGFRPを使用するためには、廃棄した後のリサイクル技術の完備が不可欠となっている 。

近年、国内において4つの研究グループから化学反応を利用したGFRPの樹脂部分の分解方法が報告されている。2000年に入って相次いで、超臨界水・亜臨界水を用いた世界初のGFRPの樹脂分解反応が報告された。さらに、強塩基触媒存在下での超臨界メタノール分解反応や、弱塩基触媒存在下での比較的温和なアルコール系可溶媒分解反応も報告された。これらの分解法の反応機構はGFRPの樹脂部分のエステル基に対する加水分解反応またはエステル交換反応である。短時間の反応を実施する場合には、無触媒、高温及び高圧条件が必要であった。一方、比較的温和な条件の常圧、200℃付近で実施する場合には、触媒を使用して長時間の反応が必要であった。そこで演者らは、中程度の反応条件を探索するためにマイクロ波加熱装置を用いて分解反応を検討した。その結果、弱塩基触媒存在下、ベンジルアルコール−エチレングリコール(重量比BnOH:EG=80:20)の混合溶媒条件が樹脂部分をほぼ完全に分解した。さらに、加圧可能なマイクロ波加熱装置を用いてトリエチレングリコール用いた場合、世界初の無触媒GFRP樹脂分解反応に成功した。マイクロ波加熱を使用した場合に特徴は、マイクロ波加熱を使用した場合には、加熱エネルギーが直接的に内部の樹脂分子へ注入されて分解が促進されたこと、さらに加圧条件では、反応する分子同士の衝突頻度因子が劇的に上昇したことから、通常加熱よりも樹脂分解が促進されたと予想した。
一方、これまでのGFRPの樹脂の分解技術において、樹脂分解物の再利用について積極的に成功した報告例はほとんどなかった。そこで演者らは、無触媒の加圧マイクロ波条件を用いて、2重結合を持つアルコール化合物(エチレングリコールモノアリルエーテル、EGMA)でGFRPの樹脂の加溶媒分解を検討したところ、樹脂分解物に架橋反応性を持つ2重結合が導入可能であることを見出した。さらに樹脂分解物を用いた不飽和ポリエステルとの硬化物作製及びガラス繊維を含んだ再生GFRPを作製したところ、3点曲げ強度試験より、架橋剤のスチレンの替わりに約60%重量分の樹脂分解物が利用可能であることも明らかにした(MD法)。

2016年より筆者らは、MD法の実用化を検証するための実験として、熊本地震の震災瓦礫置き場から採集したGFRP製廃棄バスタブの樹脂部分の分解を実施した。不純物や充填剤などが含まれるGFRP と予想されたので、加溶媒分解の反応条件の最適化実験から開始した。

研究内容の発表において、廃棄バスタブの反応条件の最適化の検討、樹脂分解物を用いた硬化物作製、熱重量分析を用いた架橋構造の評価および再生GFRPの作製について、分かりやすく説明する。