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なぜなに産学官連携

9月入学と産学連携・大学経営改革への影響

新型コロナウィルスによる緊急事態宣言の発生も相まって、近年、9月入学の話題が上がっています。将来的には移行する可能性は残っており、その実現性と影響については様々な議論がありますが、一般には目に触れずらい「産学連携への影響」と首相官邸ホームページに掲載されている「9月入学に関わるアンケート結果」について取り上げます。

 

【産学連携への影響】
一つの懸念事項として、9月から研究室の年度を開始し、そこから学生が研究活動を開始する場合、企業の年度(4月~3月)とズレが生じます。特に大企業が4月~6月の間に新規共同研究プロジェクトを立ち上げる場合、予算組みは1~3月に行うことがおよその目安となります。1~3月に企業が研究者と新規の研究テーマを相談する場合、研究室の学生は卒論テーマ・修論テーマが既に決定していると、学生の研究テーマに充当することが難しくなる可能性があります。
また、企業が9月から新規共同研究プロジェクトを開始した場合、次の年の3月~4月頃に共同研究テーマを継続するかの是非と新年度予算検討が発生しますが、研究室では学生が就職活動を集中的に行っている時期になる可能性があり、研究活動も半年程度となるため、継続可否を検討するための十分な研究成果を出しづらくなる可能性があります。すなわち、現在は企業と研究室の年度が合致しているため、卒論発表・修論発表を研究室がまとめる時期に企業が継続可否を検討するタイミングとなるため、企業側にもやりやすいという状況になっています。

 

最も大きな懸念としては上記が挙げられ、産学連携への影響は業界人でなければ中々想像がつきにくい領域ですが、他にも様々な産学連携への影響が発生する可能性があります。大学の外部資金獲得は、大学の自立経営に向けた経営改革上で非常に重要視されているため、何らかの考慮は必要と考えられます。

 

【9月入学に関わるアンケート結果】
出典:首相官邸ホームページ https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/3bunka/dai6/siryou4.pdf

 

9月入学に関わる経緯と検討結果、定量的なアンケート結果がまとめられている貴重な文献です。
下記に要点を抜粋します。

 

1)臨時教育委員会審議(第四次答申(昭和62年8月)

 

秋季入学制への移行は大きな意義が認められるとされています。今後の社会全体の変化を踏まえ、国民世論の動向に配慮しつつ、将来、我が国の学校教育を秋季入学制に移行すべく、関連する諸条件の整備に努めるべきと記載されています。

 

①より合理的な学年暦へ移行と学校運営上の利点の視点

■最も暑い夏休みの時期を学年の終わりとすることは、学校教育のサイクルの観点からみて合理的である。

■学校、校長が十分時間をかけて新年度の準備をすることができる。

 

②国際的に開かれた教育システムの視点

■教育の面で、制度や考え方で国際的に共通にできるものは、できるだけ国際社会に合わせていくことが重要である。

■諸外国の教育・学生の交流や帰国子女の受入れの円滑化が図られるなど、教育面での国際化が期待できる。

 

③生涯学習体系への移行の視点

■夏休み期間の活用の仕方が工夫されていくものと期待できる。

 

「国民的合意と条件整備」として、移行に当たっては、適当な準備期間を置き、この間、世論の動向を把握しながら国民の理解と協力を得るための活動を積極的に展開するとともに、各行政機関・学校における検討と諸準備を推進し、適宜その状況を明らかにする必要がある、とされています。

 

2)中央教育審議会(21世紀を展望した我が国の教育システムの在り方について 中央教育審議会第二次答申 平成9年6月26日

 

下記のとおり記載されています。

 

■秋季入学については、実際の導入に当たってセメスター制の採用などカリキュラム上の配慮が必要であり、大学側の負担が重いという事情もあって、現在、ごく一部の大学において行われているだけであるが、各大学において創意工夫しながら、限られた規模からのスタートであったとしても、これを実施していくことを望みたい。

 

■秋季に一般受験者の選抜を行う場合には、ペーパーテストによる学力試験以外の方法を用いて丁寧な選抜を行うなど、多様な選抜方法や評価尺度を用いることが望ましい。

 

3)大学審議会(21世紀の大学像と今後の改善方法について)

 

下記の通り記載されています。

 

■多様な学習計画を可能とするという点で秋季入学の導入による入学機会を拡大することも有効である。

 

4)大学入学時期に法令上の規定

 

昭和51年の制度導入時は、下記のように記載されています。

 

■第44条 小学校の学年は4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる。

■第72条 第28条及び第44条の規定は、大学にこれを準用する。

2   大学は特別の必要があり、かつ、教育上支障がないときは前項において準用する第44条に規定する学年の途中においても、学期の区分に従い、学年を入学させ及び卒業させることができる。

 

それに対し、平成11年3月改正後は、特別の必要があり、かつ、教育上支障が無いときは、は削除されています。

 

5)9月入学のメリットとデメリット

 

大学長、企業経営者、高等学校長に対するアンケート結果が記載されています。

 

(大学長)

・秋季入学制移行の当該大学にとってのメリット

■海外の大学との連携が容易になる、が56.7%となっています。

■入試をさらに多様化でき、広範に学生を集められる、が39.6%となっています。

■留学生の増加が期待できる、が38%となっています。

 

・秋季入学制移行の当該大学にとってのデメリット

■就職活動にどのように影響があるか不透明である、が59.4%となっています。

■会計年度と学年度とのズレが不合理である、が58.1%となっています。

■入学前のほぼ半年間の活動プログラムの提供のため、新たな負担が増える、が49%となっています。

※調査対象:国内全4年制大学677大学の学長。回答数:608大学(回答率90%)

 

(企業経営者)

・秋季入学制への移行による、貴社のメリット

■メリットは特にない、が55.3%となっています。

■国際的な人材を集めやすくなる、が26.2%となっています。

■採用活動が合理化できる、が17.5%となっています。

 

・秋季入学制への移行による、貴社のデメリット

■既存の人事体系、給与体系との調整が困難になる、が42.7%となっています。

■事業年度とのズレが不合理となる、が38.8%となっています。

■高卒者の採用(従来通り4月)とのズレが不合理、が25.2%となっています。

■デメリットは特にない、が25.2%となっています。

※調査対象:一部上場企業1557社より抽出した計500社。回答数:103企業(回収率20.6%)

 

(高等学校長)

・貴校にとっての秋季入学制度への移行のメリット

■ゆとりあるカリキュラム編成で3年生の3学期まで指導が可能、が82.7%となっています。

■十分な受験準備が可能になり、大学への進学実績の向上が期待できる、が38.3%となっています。

■就職や専門学校進学希望者と進路指導時期がずれるのでゆとりができる、が26.5%となっています。

 

・貴校にとっての秋季入学制度への移行のデメリット

■卒業後も大学進学希望者の進路相談を受け入れなければならない、が69.3%となっています。

■卒業後も大学進学希望者の学習指導の面倒をみなければならない、が53.6%となっています。

■高校により十分な受験準備が可能になり、進学実績において高校間格差が拡大、が28.1%となっています。

■就職や専門学校進学希望者と指導時期がずれるのでスケジュールが合わなくなり、指導しにくくなる、が28.1%となっています。

※調査対象:関東地区・近畿地区の高等学校からランダムに抽出した500高等学校。回答数:234校(回収率46.8%)

 

6)9月入学に関する世論調査等の結果

大学の秋季入学に関する調査研究 平成14年(文部科学省委託研究。大学長・企業経営者・高等学校長を対象とした調査)について、下記のとおり報告されています。

 

■大学への秋季入学導入についての賛否

 

賛成・どちらかといえば賛成

→大学長は49.9%、企業経営者は33%、高等学校長は48.7%となっています。

 

反対・どちらかといえば反対

→大学長は43.5%、企業経営者は48.5%、高等学校長は40.6%となっています。

 

わからない

→大学長は3.6%、企業経営者は14.6%、高等学校長は3.0%となっています。

 

■(参考)学校全体への秋季入学導入についての賛否

 

賛成・どちらかといえば賛成
→大学長は55.2%、企業経営者は35.9%、高等学校長は50%となっています。

 

反対・どちらかといえば反対
→大学長は39.1%、企業経営者は48.5%、高等学校長は45.3%となっています。

 

わからない
→大学長は5.1%、企業経営者は14.6%、高等学校長は4.3%となっています。

 

総論としては、企業経営者にとっては反対意見が比較的多いという結果となっています。