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公的研究開発支援事業の申請書作成のコツ

各種省庁ないしは公的機関にて様々な研究開発支援事業の公募があります。主に研究開発計画/事業化計画などを記入する必要があります。
弊社ではNEDOの産業技術コンダクター、NEDOフェローで経験を積んだ社員が在籍しているほか、NEDO、JSTの様々な事業や、戦略的基盤技術高度化支援事業、地域イノベーション創出研究開発事業、地域新生コンソーシアム研究開発事業への申請・採択・管理法人の実施などを行ってまいりました。
経験から作成のコツをご紹介します。(※弊社での手法であり、必ずしも正しいとは限りません)

 

(基本事項)
・テーマ名:文字数制限がある場合は(例えば20~30文字)、技術の名称・特徴と何を可能にするかの単語を簡潔明瞭に記載します。
この部分で審査員にどのように興味を持ってもらえるかが重要です。
※例えば「〇〇〇を実現する〇〇〇法の研究開発」など。

 

・概要:文字数制限がある場合は(例えば200~300文字)、申請テーマで売りになるポイントと、どのような業種・用途に使えるかを簡潔明瞭に記載します。
※例えば「今まで不可能であった〇〇〇を実現できる。」「2)〇〇〇分野における〇〇〇に適用でき大きな市場性が見込める」など。

 

・申請書様式のページ制限、ページ番号の記入方法、フォント指定、添付資料の有無、提出部数などを間違えが無いよう申請する直前に複数人でダブルチェックを行いましょう。

 

・公募要領では審査項目が非常に重要です。この項目に従って採点されることを念頭に置き、申請書作成の基本指針とします。(事業の趣旨ないしは公募を行う機関の活動主旨とも重なります。例えば国際競争力強化を重視する公的機関であり、審査項目に「国際競争力」について記載があれば、グローバルニッチ性や事業化後の海外展開なども考慮する必要が出てくることがあります。)

 

・全体としては、下記がポイントとなります。
■審査員が公開されている場合はしっかり確認しておきます。事業戦略の専門家、技術の専門家がそれぞれアサインされているケースが多いです。その場合、技術の専門家でなくても内容を把握できる分かりやすい記載が必要です。専門用語を使用する場合は注釈を入れるなどの工夫が必要です。また、全体で単語表現は統一します。さらに、技術の専門家に研究開発計画/シーズの良さがしっかり理解できるよう専門的な技術内容の記載も必要となってきます。守秘義務等で技術内容を開示できない場合は致し方ありませんが(多くの公的事業への申請においては申請内容の守秘義務がなされます)、その場合は審査の観点ではマイナスに働くことは承知しておく必要があります。

 

■前半で申請内容の要点を全て簡潔に記載します。後半で各要点について詳しく記載していきます。

 

■簡潔性を示すため、ポンチ絵を多用します。ポンチ絵を記入し、その要点・説明をポンチ絵の後に記載します。要点・説明を行う際は、まず箇条書きで記載します。そのあと、各箇条書きについて詳細な説明を行っていきます。

 

■エビデンスは出来る限り記載していきます。基礎的な実験データや試作品の写真などがあれば記載します。補助金の場合は自社資金調達を行う必要があり、金融機関からの借り入れの必要がある場合は推薦書などを任意あるいは必須で求められることがあります。任意であっても用意できるのであれば添付したほうが良いです。

 

■研究開発計画で、現状の技術課題とその解決方法を記載する必要がある場合、技術の専門家にしっかり見られると想定しておく必要があります。詳しく記載するとともに、方針として妥当であるか、突っ込みどころがないかを十二分に検討する必要があります(自身では気づいていない課題要素があり、その要素を指摘される可能性もあります)。技術課題で重要な部分が抜けていたり、記載されている解決方法が技術の専門家から難しいと判断されると評価が大きく下がる可能性があります。

 

■従来技術/研究との比較を記載する際は、具体的な従来技術を複数件挙げるとベターです。従来技術の特許や論文が公開されていればその要点と提案技術との違い/優位性を具体的に説明する必要があります。従来技術が全くないと端的に記載するだけではマイナスです。仮にそうでも、最低限そう考える理由を記載する必要があります。

 

■事業化計画では、市場性となる基礎データを記載する必要があります。Webに出ている資料ないしは市場調査機関が提供しているレポートにあるデータなどを参考として記載します。また、国会図書館等でデータが得られることがあります。特に重要なことは、事業化後の体制であり、最終的なエンドユーザないしは販売先/販売協力先のニーズを具体的に記載するとベターです(基礎研究段階のシーズであれば難しいケースもありますが、できる限り詳しく書きます)。販売先/販売協力先も具体的に決まっていれば、その企業名や保有する販路なども紹介文として記載すべきです。特に川下―川上の連携体制が審査の観点にある事業では非常に重要です。場合によっては、研究開発実施の上でのアドバイザーや連携先にも入っていただくと良い方向に働くことがあります。量産方法・体制なども決まっていることはできるだけ記入すべきです。大学の基礎研究フェーズでの申請でも、その時点でどの企業がどのようにシーズに関心を持っているか、どの段階まで研究が進めば連携に至りそうかなどの感触を記入しましょう。いずれにせよ生の声が感じ取れることが重要です。

 

■プロジェクトの事業化を果たしていく上での計画(研究開発実施中および事業終了後)では、SWOT分析などで一目で強み・弱み・機会・脅威など戦略が理解しやすいよう記入されていくと好まれます(投資を受ける感覚で書くのが適当です)。また、事業化するまでのリスク要素は、突っ込まれやすい要素ですが、書きづらくてもできるかぎり挙げます。そして、各要素についてしっかりと対策を記入することが重要です。事業リスクについて記入せずヒアリングで質問されるよりは、方針を明確に記載しておくと理解が得られやすくなります。例えば競合企業/技術が将来的に新規に発生するリスクがあるなどの場合は、自身の技術開発の積み重ねの背景に基づくことや、知的財産権等での保護戦略などが考えられます。

 

■予算計画で購入する予定の機器・設備などがあれば、製品名・仕様・技術課題と解決策との関係性・写真・選定の理由などを記入しましょう。予算計画の妥当性だけでなく研究開発計画の妥当性にもかかわってきます。

 

■知的財産戦略について記載欄がある、ないしは審査項目にある場合は、提案テーマに関連する知的財産権は権利化済みあるいは出願中に関わらず全て記入します。出願中であれば状況も記入するとベターです。提案テーマと該当する知的財産権との関連性(例えば提案技術のどの部分を保護するか)なども記入すると良く、また、事業計画中で新規に出願を予定する場合はその旨を記入すべきです。類似特許との比較は、前記の「従来技術/研究」と同様に提案技術との違いを明確に記載することも必要ですが、それ以外にもどのように知的財産調査を実施したか(検索式など)を記入したほうが説得力があります。

 

■審査項目に国際競争力や地域貢献性などが記載されているケースがあります。国際競争力の場合には、グローバルニッチ性や、対象となる市場分野における日本企業ないしは自社が海外企業に対して大きなシェアを占めている、あるいは獲得していけるなどの見通しを記入するとベターです。海外展開など日本発技術がグローバルに拡がっていく見通しがあれば、記入することも一考です。地域貢献性などの場合は、地域産業の強みとの関係性や、地域が抱える課題へどのように解決を果たしているかの視点が必要となります。

 

■将来的な社会的インパクトが問われる場合、2つの考え方があります。一つは、先ずは事業化のプライオリティが最も高い(具体的なニーズが分かっており障害が低く連携体制も整っている)特定の分野・用途について着実に実用化を進めることを説得力があるように記入することです。これは採択プロジェクトの事業化可能性が高いことを示すためです。もう一つは、まだ市場調査や体制構築が必要であるが、技術の応用先がある用途について分かっている範囲で広く記載します。長期的視点で様々な用途に展開していったときに、積み重ねると大きな社会的インパクトが生まれることを説明する必要があります。これはひとつのセオリーですが、一方、一点突破という考え方もあり、用途がひとつでも相当程度のインパクトを示せるのであれば(たとえば、既存の概念を壊す全く新しい自動車を作るなど)、そのアピールに全力を尽くすという考え方もあります。申請テーマに応じての対応となるでしょう。

 

■上記に限らず、審査項目によっては加点要素として任意に記載欄があるケースがあります。この場合も、プロジェクトとの関連性は出来る限り補足しておくとベターです。事業説明会がある場合は参加し、事業の趣旨や審査項目の背景なども質問しておくと、妥当な評価が得られやすい申請書に仕上げやすくなります。

 

・面接ヒアリングがある場合は下記がポイントとなります。

 

■事前に発表すべき項目が指定されていればそれを網羅するように資料を作成し発表します。申請書の各記入項目と重なることが多いので、それぞれ簡潔に述べていき、申請書では説明しずらい部分は口頭で補足説明を行います。特に重要なことは審査員からの質問事項がある場合で、発表の時間配分はこちらに重きをおきます。詳細なエビデンス(データや根拠資料など)を用意しておき、質問されている背景を想像しながら万全の準備で答えましょう。

 

■中小企業/ベンチャー企業向けの公的研究開発支援事業の場合は、代表者ないしは取締役の方などは都合がつく限り参加しましょう。経営戦略・事業化戦略や自社調達分の資金調達の確実性、事業化までの熱意などを審査員に評価される可能性があります。

 

ただし、個々の事業によってそれぞれ考え方や作成方針は異なってきますので、あくまで参考の上、納得を得られやすい申請書を仕上げていく必要があります。