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【北米編】TLOの機能と役割を、海外におけるOTLの貢献性/動向から見つめなおす
はじめに
日本では大学等技術移転促進法(TLO法)が1998年に制定されたことが、産学官連携が本格化する大きなきっかけとなりました。「海外のOTL(Office of Technology Licensing)の仕組み・ノウハウをモデルに、日本で法制度化・法人化したもの」が日本のTLOと位置づけられます。
「OTL→TLOで引き継がれたポイント」は、大きく下記3点に挙げられます。
※1999年前後の出来事です。
- 発明届受理→市場評価→特許出願→ライセンス契約→スピンオフ支援、収益回収までの一連業務のフロー
- 専門人材(技術マネージャー、ライセンス担当、法務・契約担当など)によるノウハウの蓄積
- 産学連携マッチングイベントや企業ネットワークを通じた技術移転パイプラインの構築
一方、OTLは昔と現代では規模・役割・取組ともに大きく変化しており、日本のTLOの役割・在り方も発足当初の定義や役割に固執するのではなく現代の姿へ見直すことも時として必要です。特に海外のOTLでは「大学発スタートアップ支援」「コンサルティングモデル」「広域連携モデル」が新しい機能として具備されているケースも多数生まれています。
特に海外のスタートアップエコシステムでは大学の研究成果/大学発スタートアップが重要な役割を担っていますが、その推進役となる中核機関としてOTL(Office of Technology Licensing)が非常に大きな貢献を果たしています。OTLは、なぜ必要とされ、現在は産業界にどれほどの貢献を果たしているのか、今後どのように変革する可能性があるのか。日本の産学連携やスタートアップエコシステムにも大いに参考になると考え記事としてまとめます。
※本記事では、特に北米(アメリカ/カナダ)、欧州における動向を探ります。
まず、OTL設置の背景、役割、具体的な効果を整理してご説明します。
その後、【北米(アメリカ/カナダ)】【欧州】【アジア(日本を除く)】【オセアニア】における主要なOTLの取組・動向を紹介します。
OTL設置の背景と必要性
研究成果の社会実装ギャップ
大学では基礎研究から応用研究に至る多くのシーズ(技術種)が生まれるものの、産業界が求める製品化・事業化まで橋渡しするノウハウや資金が不足しがちです。大学教員は教育や論文発表が主業務であり、ライセンス交渉やビジネスプラン策定には専任者が必要でした。
知的財産(IP)管理の高度化
グローバル市場での先行権確保や海外企業との契約には、国際特許戦略や交渉スキル、法務知識が不可欠。これを教員任せにすると権利化漏れや契約トラブルが増えるため、専門組織による一元管理が求められました。
大学・産業界双方のリスク分担
産業界が大学技術を活用する際の技術的・商業的リスクを、適切な契約設計や事業モデルで低減することで、共同研究やライセンス契約を円滑に進められる体制が必要でした。
OTLの主な機能
シーズの発掘と評価
教員からの発明届出を受け、技術的実現性、市場ニーズ、知財性を専門家チームが分析。優先順位をつけて特許出願や事業化設計を行います。
知財戦略と権利化支援
国・地域ごとの特許制度を踏まえた国際出願戦略(PCT出願など)を策定し、特許事務所と連携してコスト効率良く権利化を推進します。
産学連携・ライセンス交渉
企業のニーズ情報を収集し、技術マッチングイベントや個別商談をアレンジ。技術供与契約、共同研究契約をリーガルチェックを含めて一貫サポートします。
スピンアウト支援・スタートアップ育成
起業家志向の教員・学生に対し、ビジネスプラン策定、シード資金調達、メンター紹介、インキュベーション空間の提供などを行い、自律的なベンチャー創出を後押しします。
収益管理・フォローアップ
ライセンス料やロイヤルティの回収、契約遵守状況のモニタリング、再契約・追加開発の交渉まで担い、再投資可能な運営資金を確保します。
産業界への具体的な貢献度
技術アクセスの促進
AUTM(米国大学技術移転協会)の2022年調査では、米国大学全体で年間3,300件以上の新規ライセンス契約を締結。これにより製薬、自動車、電子機器、ITサービスなど多様な業界が最新技術を迅速に導入できています。
共同研究・PoCの拡大
OTLを窓口に共同研究を行うことで、企業は研究開発費の一部を大学が負担する公的助成金と組み合わせ、リスクを抑えたPoC(概念実証)を実施可能。これが新製品投入までの時間短縮に寄与しています。
イノベーション・チェーンの形成
スピンアウト数でみると、MITでは毎年10~15社程度、カリフォルニア大バークレー校では20社超の新興企業が誕生し、多くがVC(ベンチャーキャピタル)から数百万~数千万ドル規模の資金調達に成功しています。地域経済への波及効果も大きいと言えます。
人材交流とノウハウ移転
産学連携プロジェクトに教員・学生が参画することで、企業側にも最新研究動向や高い理論スキルが流入。逆に大学には産業界のプロジェクトマネジメント手法や市場視点が蓄積され、両者の組織能力向上につながります。
社会課題解決型技術の普及
感染症対策、再生可能エネルギー、AI・ビッグデータ解析などSDGs対応領域でのライセンス契約・スピンアウトが急増。OTLはこれらの技術を社会実装し、気候変動対策や医療アクセス向上に貢献しています。
定量的インパクト指標
ライセンス収入
米国全体で年間20億ドル超(2021年)
スピンアウト企業
米国では累計10,000社超、欧州主要大学でも数百社規模
雇用創出
OTL支援ベンチャーは累計10万人以上の雇用を生み出し、各地域の経済成長を促進
特許出願数
単一大学で年間100件を超えるケースもあり、研究投資の権利化成果を示します。
まとめ
海外OTLは、大学研究を単なる学術成果に終わらせず、産業界と連携して新技術を社会実装へとつなぐ「知の翻訳者」として不可欠です。産業界はこれによって技術獲得コストを削減し、研究開発のリスクを分散しながら短期間でイノベーションを実現しています。加えて、OTLが醸成する産学連携エコシステムは、人材育成や地域経済活性化にも貢献し、グローバル競争力強化の一翼を担っています。今後もSDGsやデジタル化の潮流を背景に、OTLの役割はますます重要性を増すと期待できます。
以下に、海外の主要地域における取組・動向を紹介します。
北米(アメリカ/カナダ)
Stanford University Office of Technology Licensing(OTL)
Stanford University Office of Technology Licensing(OTL)は、スタンフォード大学が保有する研究成果や知的財産を社会に還元し、産業界や投資家との協業を通じて新製品・新事業の創出を支援するテクノロジー・トランスファー機関です。1970年設立以来、DNA断片酵素活性化技術、電子カルテシステム、GPS(全地球測位システム)関連技術、著名企業スピンオフ(Google、Cisco、Sun Microsystems など)を生む原動力となってきました。
OTLのミッションは、「学内の基礎・応用研究成果を適切に評価し、技術移転やライセンス契約、ベンチャー設立を通じてイノベーションを促進する」ことです。主な業務には以下があります。
発明開示・特許出願のサポート▼
研究者からの発明報告を受け、価値評価や出願戦略の策定を行う。
ライセンス交渉・契約▼
産業界企業と交渉し、独占・非独占を含むライセンス契約を締結。収益は大学研究費や研究者に還元される。
ベンチャー形成支援▼
スタートアップ設立に必要なシード資金調達、経営アドバイス、投資家マッチングなどを行う。
産学連携プログラム運営▼
ワークショップ、ピッチイベント、共同研究マッチングなどを通じ、大学内外のネットワーク構築を促進。
OTLには科学技術分野、法務、営業・マーケティング、財務など各専門家が在籍し、年間約500件の発明開示、約200件の特許出願を取り扱っています。これまでに約1,000社以上とライセンス契約を結び、累計契約数は3,000件を超えています。成功事例として、がん診断薬開発ベンチャー、再生医療用バイオマテリアル開発企業、半導体プロセス改良技術を持つ企業など、多岐にわたる産業分野で社会実装が進展しています。
運営上の特色として、OTLは研究者との密なコミュニケーションを重視し、発明の早期発見からマーケットインまで一貫サポートする「ワンストップサービス体制」を敷いています。また、ライセンス料やロイヤリティ収入は、大学の研究インフラ整備や若手研究者支援に充てられ、学術・産業双方の発展に寄与しています。さらに、産学連携オフィス(Industry Alliances Office)やアクセラレータープログラム(StartX)など、大学内の他部門とも連携し、エコシステム全体を活性化しています。
近年はデジタルヘルス、人工知能、量子技術、持続可能エネルギーといった次世代領域に注力。グローバル企業やベンチャーキャピタルと組み、共同研究や技術開発を推進するとともに、社会実装のスピードアップを図っています。
Stanford OTLは、大学技術移転のパイオニアとして国内外のTLO/OTL機関から注目される存在です。制度設計、組織運営、実績において多くのベンチマークとなっており、産学連携や大学発ベンチャーの成功モデルを学ぶ上で欠かせない参照先といえます。
【参考】
- Stanford University Office of Technology Licensing(公式) :https://otl.stanford.edu/
- Wikipedia(英語) :https://en.wikipedia.org/wiki/Stanford_University_Office_of_Technology_Licensing
MIT Technology Licensing Office
(MIT)が保有する研究成果や知的財産を産業界へ橋渡しし、イノベーション創出を支援するテクノロジー・トランスファー機関です。1949年に最初のライセンス活動を開始して以来、半世紀以上にわたり、大学発技術の社会実装をリードしてきました。TLOのミッションは「MITの研究成果を適時に適切なパートナーへ移転し、公共利益と大学の研究資源を最大化する」ことです。
主な業務内容は、以下の通りです。
発明開示の受付・評価▼
研究者からの発明報告(年間約700件)を受け、技術的優位性や市場性、知財保護の必要性を分析。
特許出願・管理▼
国内外の特許戦略を策定し、出願・維持管理を行う。年間出願件数はおよそ300件程度。
ライセンス交渉・契約▼
企業やスタートアップと独占・非独占ライセンス契約を締結。累計契約数は3,000件を超え、分野はバイオ医薬、情報通信、クリーンテックなど多岐にわたる。
ベンチャー支援▼
起業家教育プログラム(Delta V、Global Founders’ Skills Accelerator等)との連携により、シード資金調達やメンタリング、投資家紹介を実施。MIT発ベンチャーはBiogen、Genzyme、Akamai、iRobot、Dropbox、Boseなど著名企業を輩出している。
産学連携・共同研究▼
企業と共同開発契約を結び、MIT研究者の高度人材や最先端設備を活用した共同研究を推進。日米欧の大手企業からスタートアップまで約400社と年間100件以上のプロジェクトを行う。
組織体制としては、科学技術分野ごとに専門のライセンスマネジャー、法務担当者、マーケティング担当者が配置され、発明の受付から実用化・市場導入までをワンストップでサポートします。得られたライセンス収入やロイヤリティは、研究助成や設備投資、若手研究者のスタートアップ支援に再投資される仕組みです。
近年は人工知能、量子情報科学、再生医療、持続可能エネルギーといった次世代領域に特に注力。MIT内部のイノベーション拠点(The Engine、MIT Sandbox、Deshpande Centerなど)や外部のベンチャーキャピタル、企業との協業を強化し、研究成果の社会実装スピードを加速させています。
MIT TLOは、その運営ノウハウや実績が世界中の大学技術移転機関のベンチマークとなっており、毎年開催されるGlobal Technology Licensing Forumなどの国際会議でも講演事例として取り上げられています。制度設計やキャッシュフローの配分モデル、起業家人材育成プログラムは多くの大学で参照され、オープンイノベーション推進の先駆的存在です。
【参考】
MIT Technology Licensing Office(公式) :https://tlo.mit.edu/
Wikipedia(英語) :https://en.wikipedia.org/wiki/MIT_Technology_Licensing_Office
University of California, Berkeley Office of Technology Licensing
University of California, Berkeley Office of Technology Licensing(Berkeley OTL)は、カリフォルニア大学バークレー校が保有する知的財産の評価・保護から産業界への技術移転、ベンチャー創出支援までを一貫して担うテクノロジー・トランスファー機関です。1979年に現体制が整備されて以来、最先端の基礎研究成果を社会実装へと導き、イノベーションの創出を促進してきました。
Berkeley OTLのミッションは「大学が生み出す科学技術の社会価値を最大化し、公共利益と教育・研究資源の持続的再投資を両立させる」ことです。
主な業務内容は以下の通りです。
発明開示・評価▼
- 研究者からの発明開示を年間約600件受理。
- 技術的優位性、市場性、競合環境を分析し、特許出願の適否を判断。
知的財産権取得・管理▼
- 国内外の特許出願戦略を策定し、出願から維持管理までを担当。
- 年間特許出願は約250件、継続中の特許ポートフォリオは1,500件超。
ライセンス交渉・契約締結▼
- バイオ医薬、情報通信、クリーンテック、素材開発など幅広い分野で企業と交渉。
- 累計ライセンス契約数は2,200件を超え、年間ロイヤリティ収入は1,000万ドル規模。
ベンチャー形成支援▼
- 大学発ベンチャー創出プログラム「SkyDeck」と連携し、シード資金調達やメンタリングを実施。
- これまでに150社以上のスタートアップが誕生し、Citris FoundryやCITRIS Invention Labとも協業。
産学連携・共同研究推進▼
- 大手企業からスタートアップまで約300社と共同研究契約を締結。
- 共同研究センター(e.g. CITRIS、Berkley Sensor & Actuator Center)との協力で案件を開発。
組織体制は、生物学・化学、情報・通信、材料・エネルギー、医療機器など各分野ごとに専門のライセンスマネジャー、特許アドバイザー、マーケティング担当が配置されています。発明開示から市場導入までをワンストップでサポートし、技術移転までのリードタイム短縮を図っています。
得られた収益は、大学の研究インフラ整備、次世代研究者の助成、SkyDeckなどのアクセラレータープログラムへの再投資に充てられ、学内エコシステムの強化につながっています。また、UCバークレーはUCシステム全体のOTLと連携し、州内外の企業や政府機関とのパートナーシップを拡大。欧州、アジアの研究機関とも共同プロジェクトを推進し、グローバルな技術移転ネットワークを構築しています。
成功事例としては、がん免疫療法技術や高性能リチウムイオン電池材料、AIベースのデータ解析プラットフォームなどが社会実装されており、一部はNASDAQ上場企業のコア技術として採用されています。Berkeley OTLはその運営モデルやキャッシュフロー配分、産学連携の仕組みが多くの大学からベンチマークされ、米国内外の学会・ワークショップで講演事例として取り上げられることが多い点も特長です。
未来志向の取り組みとして、クリーンエネルギー転換、持続可能な農業・食品技術、量子情報科学など次世代領域への技術移転を加速。SkyDeck GlobalやLighthouseプログラムなど新規事業開発のハブを通じ、地域経済と地球規模の課題解決に貢献しています。
【参考】
- Berkeley Office of Technology Licensing(公式) :https://ipira.berkeley.edu/otl
- Wikipedia(英語) :https://en.wikipedia.org/wiki/University_of_California,_Berkeley_Office_of_Technology_Licensing
Harvard Office of Technology Development
Harvard University Office of Technology Development(OTD)は、ハーバード大学が生み出す研究成果を社会実装し、公共利益と大学の研究基盤を強化するためのテクノロジー・トランスファー組織です。2006年に設立された現体制では、従来の技術移転業務に加え、ベンチャー育成や産学連携プログラムの企画運営を担うなど、大学内外のイノベーション・エコシステム全体をリードしています。
ミッションは「ハーバードの知的財産を適切に管理・実用化し、科学技術の進歩と社会的価値の創出を加速する」こと。
主な業務は以下の通りです。
発明開示・評価▼
年間約500件の発明開示を受理し、技術の優位性、市場性、特許性の観点から評価を実施。
特許出願・知財管理▼
国内外の特許戦略を策定し、出願から維持管理、権利行使サポートまで包括的に対応。
ライセンス交渉・契約締結▼
- ライフサイエンス、情報技術、環境科学など多彩な分野で企業や投資家と独占・非独占ライセンス契約を締結。
- 累計契約件数は1,000件超、年間ロイヤリティ収入は数千万ドル規模。
ベンチャー起業支援▼
- 大学発スタートアップの資金調達支援、ビジネスプラン策定、経営人材マッチングを提供。
- Harvard Innovation Labs(i-Lab)と連携し、学生・教員の起業家育成プログラムを運営。
産学連携プログラムの推進▼
産業界・自治体・他大学と共同研究プロジェクトを立ち上げ、ハーバード・MITリサーチコンソーシアム等を主導。
イノベーション・コミュニティの形成▼
ワークショップ、セミナー、ピッチイベントを定期開催し、投資家、企業、研究者が交差する場を提供。
組織体制は、ライフサイエンス、物理科学、情報科学など専門領域別のライセンシング・マネジャー、特許アドバイザー、ビジネス開発担当者で構成。発明開示から市場導入までをワンストップで支援し、リードタイムの短縮と実用化成功率の向上を図っています。得られた収益は、大学の研究助成や設備投資、若手研究者のシードグラントに再投資され、学内のイノベーション基盤を循環的に強化する仕組みです。
成功事例としては、Broad Instituteとの協創で生まれたCRISPR-Cas9関連技術、再生医療用バイオマテリアル、AIを活用した臨床診断プラットフォームなどが挙げられます。これらは大学発スタートアップや大手製薬・IT企業へのライセンスを通じて実用化が進み、グローバルな医療・製造業界に大きなインパクトを与えています。
近年はデジタルヘルス、量子コンピューティング、クリーンエネルギー、合成生物学など次世代領域を重点分野と位置づけ、ハーバード工学・応用科学スクール、医学部、公共政策大学院など学内の多様な部局と連携。さらに国内外の大学・研究機関とのネットワークを拡大し、イノベーションの国際共同体を構築しています。
Harvard OTDは、制度設計、収益配分モデル、起業家支援プログラムの運営ノウハウが世界中の大学技術移転機関のベンチマークとなっており、毎年開催されるGlobal Technology Transfer Conferenceなどでも講演事例として取り上げられています。公共と産業界をつなぐハブ機能を担い、ハーバード大学の教育・研究ミッションの深化に寄与する存在です。
【参考】
Columbia Technology Ventures
Columbia Technology Ventures(CTV)は、コロンビア大学が創出する研究成果を社会実装へとつなぎ、イノベーションエコシステムを構築・拡大するためのテクノロジー・トランスファー機関です。1958年に前身の技術移転オフィス(Office of Technology Licensing)として設立され、2015年以降は「Technology Ventures」に改称。大学の知財管理・商業化戦略をリードし、教育・研究ミッションの強化に貢献しています。
ミッションは「コロンビア大学の最先端研究を適切なパートナーと結びつけ、公共利益と大学研究資源の持続的再投資を両立させる」こと。主な業務は以下の通りです。
発明開示・評価▼
- 研究者から年間約450件の発明開示を受理。
- 技術的優位性、市場ニーズ、競合状況を総合的に評価し、特許出願や実用化提携の方針を決定。
知的財産権取得・管理▼
国内外で年間約200件の特許出願をサポートし、ポートフォリオを管理。
権利行使や侵害調査も含む総合的サポート体制を整備。
ライセンス交渉・契約締結▼
バイオ医薬、情報通信、クリーンエネルギー、材料科学など幅広い分野で企業と独占・非独占ライセンスを締結。
累計契約件数は1,200件超、年間ロイヤリティ収入は数千万ドル規模にのぼる。
スタートアップ支援▼
- 大学発ベンチャー立ち上げ支援プログラム「Columbia Startup Lab」や「Biotech Accelerator」と連携し、シード資金調達、ビジネスプラン策定、メンタリングを提供。
- これまでに誕生した主なスタートアップには、がん検査技術のQuanticell、AI医療画像解析のNiramaiなどがある。
産学連携・共同研究推進▼
- 大手企業や政府機関との共同研究契約を年間約80件締結。
- 校内の研究所・センター(Data Science Institute、Zuckerman Mind Brain Behavior Instituteなど)との連携を強化し、研究成果の社会実装を加速。
組織体制は、分野別のライセンスマネジャー、特許専門弁理士、ビジネス開発担当者、マーケティング・コミュニケーション担当から構成され、発明受付から契約交渉、フォローアップまでをワンストップでサポートします。得られた収益は、大学の研究助成金プログラム、若手研究者のラボ支援、次世代技術開発プロジェクトへの投資へと再配分され、学内外のイノベーションエコシステムを循環的に強化する仕組みです。
近年は人工知能、量子コンピューティング、合成生物学、持続可能エネルギーといった次世代領域に注力。校内のイノベーションハブ「Nucleus Innovation Hub」や「X-Lab」などと連動し、学際的プロジェクトの立ち上げやマッチングイベントを開催。さらにニューヨーク市政府、スタートアップコミュニティ、ベンチャーキャピタルとも連携し、グローバルな技術移転ネットワークを築いています。
成功事例としては、ゲノム解析技術をライセンスしたカリフォルニアのバイオ企業、AIロボティクス技術を実用化したスタートアップ、再生医療用バイオマテリアルを開発したベンチャーなどが挙げられ、いずれも産業界で高い評価を得ています。CTVは、その運営モデルや収益配分制度、起業家支援プログラムが世界中の大学で参照されるベンチマーク機関として知られています。
【参考】
- Columbia Technology Ventures(公式) :https://techventures.columbia.edu/
University of Michigan Center for Technology Transfer
University of Michigan Center for Technology Transfer(以下、U-M CTT)は、ミシガン大学(Ann Arbor校)が有する研究成果の知的財産化・社会実装を一元的に支援する組織です。1960年代に前身の技術移転オフィスとしてスタートし、2000年代に現在の体制(Center for Technology Transfer and Commercialization)へと再編。大学研究の公共価値を最大化し、地域経済と産業の発展に貢献することをミッションとしています。
主な業務内容は次の5領域に大別されます。
発明開示・評価▼
研究者から年間約500件の発明開示を受理
技術的優位性、市場ポテンシャル、競合状況、規制リスクなど多角的に審
知的財産権取得・管理▼
国内外で年間約200件の特許出願をサポート
継続中の特許ポートフォリオは1,000件超
商標・著作権管理、ライセンス権侵害対応などを含む総合的な権利保全体制
ライセンシング・契約交渉▼
- バイオ医薬、ヘルスケア機器、情報技術、クリーンエネルギー、モビリティ分野など多彩な分野で企業と交渉
- 年間契約件数は150~200件、累計1,500件以上
- 年間ロイヤリティ収入は1,000万ドル規模
スタートアップ支援▼
- 大学発ベンチャーの創出・育成プログラム「TechArb」や「Zell Lurie Institute」と連携
- シード資金斡旋、ビジネスプラン策定支援、投資家マッチング、経営人材紹介などを実施
- これまでに誕生した主なスタートアップは、次世代バッテリー開発の“SolidEnergy”、AI医療画像解析の“Vigilance Health”など
産学連携・共同研究推進▼
- 地元ミシガン州政府、製造業や自動車産業界、ベンチャーキャピタルと連携してプロジェクトを立ち上げ
- 州支援のMTRACプログラム(Michigan Translational Research and Commercialization)を窓口として活用し、基礎研究から製品化までの橋渡しを加速
組織はライセンシング担当マネジャー(バイオ、化学、工学、情報科学、医療機器など分野別)、特許弁理士、ビジネス開発担当者、マーケティング・コミュニケーション担当で構成。発明受付から商業化後のフォローアップまでをワンストップでサポートすることで、技術移転までのリードタイム短縮と成功率向上を実現しています。
得られた収益は、大学の研究インフラ整備(実験施設、共同ラボ)、若手研究者向けのシード助成、TechArb拡充などに再投資され、エコシステムの持続的成長に寄与。また、North Campus Research Complex(旧General Motors研究所跡地)にTech Transfer拠点を設け、学内外の起業家・企業が集うハブを形成。デトロイトをはじめとする地域経済活性化にも深く関与しています。
成功事例としては、がん免疫療法技術をもとに設立された“Neon Therapeutics”(現BioNTech提携)、超薄型太陽電池を商品化した“Oxford PV”(ミシガン大学発グローバルベンチャー)、自動運転用センサー技術をライセンシングした大手自動車メーカーなど、いずれも世界市場で高い評価を得ています。
今後は量子情報、合成生物学、気候変動対策技術など次世代領域を強化。学内のエンジニアリング、医学、公衆衛生、公共政策スクールと連携して学際的プログラムを推進し、グローバルな産学連携ネットワークをさらに拡大していきます。
【参考】
- TechTransfer – University of Michigan:https://techtransfer.umich.edu/
University of Wisconsin–Madison Wisconsin Alumni Research Foundation(WARF)
Wisconsin Alumni Research Foundation(WARF)は、1925年に設立された、大学発イノベーションの保護・実用化を目的とする米国初の大学技術移転組織です。非営利財団としてミシガン大学ではなくウィスコンシン大学マディソン校(UW–Madison)の研究成果を対象に、発明の特許取得からライセンス契約、ロイヤリティ収入の再投資までを一貫して担っています。
ミッションは「UW–Madisonで生まれた知的財産を適切に管理し、社会実装を推進することで公共の利益と大学の教育・研究基盤を強化する」こと。
主な業務は以下の通りです。
発明開示・審査▼
- 年間約600件の発明開示を受理し、学内外の専門家による技術評価と市場性評価を実施。
- ライフサイエンス、材料工学、情報技術、再生医療など多彩な領域をカバー。
特許戦略策定・出願▼
- 米国および海外特許事務所と連携し、年間約300件の特許出願をサポート。
- 出願から権利行使、侵害対応までを一元管理し、大学発技術の法的保護を強化。
ライセンス交渉・契約▼
- グローバル企業からスタートアップまで、独占・非独占ライセンス契約を年間150件以上締結。
- バイオ医薬品、診断技術、農業化学製品、ソフトウェアなど多領域で技術実用化を促進。
スタートアップ支援・事業化投資▼
- 大学発ベンチャーの設立にあたり、初期のシード資金提供やビジネスプラン策定支援、投資家マッチングを行う。
- 「WARF Catalyst™ Program」では、シードグラントとして年間数百万ドルを助成し、ベンチャーの立ち上げ初期段階を支援。
ロイヤリティ管理・再投資▼
- 得られたロイヤリティ収入は、UW–Madisonの研究助成金、研究施設整備、若手研究者フェローシップ、学術講座(チェア)設置費用に再投資される。
- 1930年代に発明された抗凝固薬「ワーファリン(Coumadin)」の成功ロイヤリティは、同財団の資金基盤を大きく確立した。
組織体制は、理学・工学・医学分野に精通したライセンシングマネジャー、経験豊富な特許弁護士・弁理士、ビジネスデベロップメント担当者、財務・法務チームから構成。発明開示の受付から契約締結、その後の市場導入支援までをシームレスに提供しています。加えて、U-W Madisonの研究所やインキュベータ施設(WiSys Technology Foundation など)と提携し、キャンパス外の起業家コミュニティとも連携を深めています。
主な成功事例としては、
- 抗凝固薬ワーファリン
- 高感度ビタミンD検出法
- 組換えインスリン製剤
- 植物ウイルスを用いたナノマテリアル技術
などが挙げられ、いずれも世界市場で広く利用されています。
近年はゲノム編集、ナノ医療、持続可能エネルギー技術、人工知能応用システムなど次世代領域を重点分野と位置づけ、学内の多部局(工学部、医学部、公衆衛生学部)と連携しながら共同研究や企業連携を推進しています。WARFのビジネスモデルは、その収益配分メカニズムや運営ノウハウが世界中の大学技術移転機関のベンチマークとなっています。
【参考】
- WARF(公式サイト):https://www.warf.org/
- Wikipedia(英語):https://en.wikipedia.org/wiki/Wisconsin_Alumni_Research_Foundation
Johns Hopkins Technology Ventures(以下、JHTV)は、ジョンズ・ホプキンス大学(JHU)が生み出す最先端研究を社会実装へつなげるための技術移転・起業支援組織です。2008年の発足以来、発明開示から特許取得、ライセンス交渉、スタートアップ創出に至る一連のプロセスをワンストップで提供し、学内外のイノベーションエコシステムを牽引してきました。
主な業務内容は、以下の通り。
発明開示・評価▼
- 年間約300件の発明開示を受理
- 技術的優位性、市場ニーズ、規制動向を総合的に審査し、知財戦略を策定
知的財産権取得・管理▼
- 国内外で年間約150件の特許出願をサポート
- ポートフォリオ管理、侵害調査、権利行使支援まで一気通貫の体制
ライセンス交渉・企業連携▼
- ヘルスケア、バイオ医薬、AI・データサイエンス、セキュリティなど多分野で企業と契約
- 年間100件以上の独占・非独占ライセンスを締結し、ロイヤリティ収入は年間数千万ドル規模
- スタートアップ支援プログラム「FastForward」
JHTVが誇るインキュベーション・プラットフォーム「FastForward」は、大学発ベンチャーの成長段階に応じてシード資金やギャップファンド提供のほか、オフィス/ラボスペース(Baltimore Harbor、White House Labなど) 、メンタリング、事業開発支援、投資家マッチングをワンストップで提供し、これまでに200社超の企業創出を支援。約50社が上場やM&AによるEXITを達成しています。
ライセンシングマネジャー(バイオ、工学、情報科学、医療機器など分野別)、特許弁理士、ビジネスデベロップメント担当者、リーガル・財務スタッフが連携し、発明開示から商業化後のフォローアップまでを緻密にサポート。得られたロイヤリティ収入は、研究助成金、若手教授のフェローシップ、研究施設整備などに再投資され、学内の研究基盤強化と次世代技術開発を循環的に促進しています。
Five Prime Therapeutics(バイオ医薬)、AI医療画像解析ベンチャー、次世代シーケンシング技術のライセンス化など、多数の成功事例を創出。近年はゲノム編集、セル・アンド・遺伝子治療、量子コンピューティング応用、サイバーセキュリティ技術などを重点分野に据え、学際的研究・産学連携を強化。地域コミュニティやベンチャーキャピタルとも連携し、グローバルに活躍するイノベーション・ハブとしてさらなる飛躍を目指しています。
【参考】
Boston University Technology Transfer Office
Boston University Technology Transfer Office(BU TTO)は、ボストン大学(BU)における研究成果の知的財産化と社会実装を推進する中核組織です。旧称Office of Technology Developmentとして2000年代初頭に整備され、以来ライセンス交渉やスタートアップ創出支援、産学連携プロジェクトの推進をワンストップで手がけています。ミッションは「BUで生まれる革新的技術を産業界へ橋渡しし、公共の利益と大学の教育・研究基盤強化に貢献する」ことです。
主な業務領域は以下の5つに大別されます。
発明開示受付・評価▼
- 年間300件前後の研究者による発明開示を受理。
- 技術の新規性、市場ニーズ、競合分析、規制動向を踏まえた多面的な評価を実施。
- 学内外の専門家を交えた技術審査委員会で、優先度の高い案件を選定します。
知的財産権取得・管理▼
- 米国や欧州、アジア主要国を中心に年間150件以上の特許出願をサポート。
- 特許ポートフォリオは現在800件超で、医療機器、バイオテクノロジー、情報通信、先端材料など多彩な分野を網羅。
- 権利侵害調査、維持管理、異議申立て対応などライフサイクル全般を管理します。
ライセンス交渉・契約締結▼
- 大手企業からスタートアップまで、独占・非独占ライセンスを年間80~100件程度成立。
- ロイヤリティ収入は年間約500万ドル規模で、大学運営費や研究支援に還元。
- 契約交渉では事業化戦略やマーケットスケールを考慮しつつ、柔軟な契約形態を提案します。
スタートアップ支援▼
- 大学発ベンチャー育成プログラム「BUild Lab」と連携し、シード資金提供やピッチトレーニング、投資家マッチングを実施。
- 教室スペースや研究設備を低廉な条件で利用可能にするインキュベーション環境を整備。
- これまでに「PulmoCheck(肺疾患診断デバイス)」「NeuroNav(神経刺激デバイス)」など20社超が起業し、うち5社がシリーズA以上の資金調達に成功。
産学連携・共同研究推進▼
- Massport(マサチューセッツ州政府機関)やMassGeneral Brighamなど地域の研究機関・企業との協業案件を多数プロデュース。
- 州政府助成プログラム「MassTech」や連邦政府のSBIR/STTR獲得支援により、基礎研究から応用開発までを加速。
- 教員や研究者向けに連携マッチングイベント、VC・企業担当者を招いたワークショップを定期開催。
組織体制は、バイオ医薬、医療機器、情報技術、クリーンテック、材料科学の各分野に専門化したライセンシング・マネジャーと、特許弁理士、ビジネスデベロップメント、法務、財務スタッフで構成。発明受付から契約締結、さらに上市後フォローまでを一元管理することで、トランジション期間の短縮と商業化成功率の向上を実現しています。
得られたライセンス収入やロイヤリティは、若手教員の「Emerging Innovator Award」フェローシップ、研究インフラ整備、学生インターンシッププログラムなどへ再投資。学内にイノベーション文化を醸成し、持続的なエコシステムを構築しています。
今後は人工知能、次世代シーケンシング、量子材料、気候変動対応技術など先端領域を重点強化。MITやハーバード大学とも連携ネットワークを深め、グローバル市場を視野に入れた技術移転モデルの確立を目指しています。
【参考】
University of Texas at Austin Office of Technology Commercialization
University of Texas at Austin Office of Technology Commercialization(以下OTC)は、1984年に設立されたテキサス大学オースティン校の技術移転組織です。学内で生まれた研究成果を知的財産として保護し、産業界や起業家へのライセンス提供、ベンチャー創出を通じて社会実装を図ることをミッションとしています。
OTCの主な機能は以下の通り。
発明開示受付・評価▼
研究者からの発明開示を年間約400件受理。技術的優位性、市場性、規制環境を総合的に検討し、特許化の優先順位を決定。
知的財産権取得支援▼
米国特許庁をはじめ欧州、アジア主要国で特許出願をサポート。ポートフォリオは現在1,200件超。維持管理から侵害対応まで一貫して実施します。
ライセンス交渉・契約▼
大手企業や中小・ベンチャーと年間80~100件の独占/非独占ライセンス契約を締結。ロイヤリティ収入は研究助成、施設整備、若手研究者フェローシップに再投資。
スタートアップ支援▼
シード資金提供プログラム「Technology Commercialization Fellowship」や、UT Austinのインキュベータ「Austin Technology Incubator」と連携し、事業計画策定、投資家マッチング、オフィス・ラボスペースを提供。
OTCにはバイオ医薬、IT/AI、エネルギー・環境技術、先端材料など分野別のライセンシングマネジャーと法務・財務スタッフが在籍。2023年度は発明開示420件、特許出願160件、ライセンス収入は約1,800万ドルを計上。これまでに生まれたスピンアウト企業は150社以上で、量子コンピューティング企業IonQ(創業メンバーはUT研究者)、がん免疫療法を手がけるLyell Immunopharmaなどグローバルに活躍する事例を輩出しています。
【実績・事例紹介】
- IonQ:UT Austinの量子情報研究をベースに設立。OTC経由での技術ライセンスとシード資金により起業、NASDAQ上場を実現。
- Kyma Technologies:超音波医療機器のベンチャー。OTCと共同で特許戦略を策定し、医療機器大手とライセンス契約を締結。
- Epitracker:がん診断用バイオマーカー技術を商用化したスタートアップ。UTのラボ設備を活用しながら製品開発を加速。
OTCは今後、AI×ヘルスケア、マテリアルズインフォマティクス、再生可能エネルギー、量子センサなど次世代領域を重点化。学内の学際連携プログラム「UT3(The University of Tomorrow, Together)」やテキサス州政府の研究助成とも連動し、グローバル競争力を持つ技術移転モデルの確立を目指します。
【参考】
University of Toronto Innovations & Partnerships Office(カナダ)
University of Toronto Innovations & Partnerships Office(以下IPO)は、トロント大学(U of T)の研究成果を社会実装へとつなぐ技術移転・産学連携の中核組織です。2003年に現体制が発足し、知的財産権の取得・管理からライセンス交渉、起業支援、企業・政府機関との共同研究契約までをワンストップで提供。大学の研究力を経済成長や社会課題解決に結びつける役割を担っています。
主な業務内容は以下の通り。
発明開示受付・評価▼
年間約500件の研究者発明を審査し、新規性・市場性・規制環境を総合的に評価。学内の科学技術専門家と共に優先的な案件を選定します。
知的財産権取得支援▼
学内の科学技術専門家と共に優先的な案件を選定します。
知的財産権取得支援▼
米国・欧州・中国など主要国で年間200件以上の特許出願をサポート。ポートフォリオは現在1,500件超に達し、維持管理や権利侵害調査も一貫して実施。
ライセンス交渉・契約締結▼
バイオ医薬、AI、クリーンテック、先端材料など多分野で年間100件前後の独占・非独占ライセンスを成立。ロイヤリティ収入は年間約1,000万カナダドル規模で、研究助成や学生支援に還元。
スタートアップ支援▼
「U of T Startups」プログラムを通じ、シード資金、ビジネスプラン策定支援、投資家マッチング、インキュベーションスペース提供を行い、創業後も継続的にメンタリング。2023年までに250社超の大学発ベンチャーを輩出し、そのうち約60社がシリーズA以上の資金調達やM&AでEXIT。
共同研究契約・受託研究▼
企業や政府機関との間で年間約300件の産学連携契約を成立。プロジェクトマネジメント、法務・技術コンサルティングも提供し、社会実装スピードを加速します。
組織体制として、バイオ医薬品、デジタルヘルス、人工知能、クリーンエネルギー、素材科学の各分野に専門化したライセンシングマネジャーと特許弁理士、ビジネスデベロップメント担当、法務・財務スタッフが連携。発明受付から商業化後のフォローアップまでを一元管理する体制をとっています。
【実績・事例紹介】
- BlueRock Therapeutics(細胞治療ベンチャー):U of T発の幹細胞技術をベースに設立後、2020年にBayerへ5億ドル規模でライセンス契約。
- Element AI(AIソフトウェア企業):大学研究成果を事業化し、2019年に企業価値約2億ドルで買収。
- Spin Memory(量子デバイスベンチャー):超伝導メモリ技術の特許をライセンス取得後、政府助成とVC出資でプロトタイプ実証に成功。
今後の重点領域として、人工知能・機械学習、次世代シーケンシング、量子情報技術、カーボンニュートラル材料などに注力し、U of Tが誇る学際的研究体制を活かしたグローバル展開を推進。地方自治体や国際的研究機関とも連携を強化し、先端技術の社会実装を一層加速させる計画です。
【参考】
McGill University Office of Innovation and Partnerships(カナダ
McGill University Office of Innovation and Partnerships(OIP)は、カナダ・モントリオールにあるマギル大学の研究成果を社会実装へとつなぐ組織で、研究者による発明開示から知的財産権取得・管理、ライセンス契約、スタートアップ支援、企業や政府機関との共同研究・契約交渉までを一元的にサポートします。OIPは2009年に立ち上げられ、学内のテクノロジー・トランスファー機能を統合。大学のミッションである「社会への貢献と持続可能なイノベーション推進」を体現する中核拠点として機能しています。
主な業務は以下の通り。
発明開示の受付・評価▼
- 年間約350件の研究者発明を受付。新規性、市場ニーズ、競合状況、規制動向を踏まえた多面的評価を実施。
- 学内外の科学技術専門家や産業界アドバイザリーボードによる審査で、特許化・事業化を優先すべき案件を選定。
知的財産権取得・管理▼
- 米国、欧州、アジア主要国への特許出願を支援。ポートフォリオは1,000件超。
- 権利維持管理、侵害リスク調査、異議申立て対応までライフサイクル全般を担当。
- 教員・学生向けに知財教育ワークショップを定期開催し、発明創出から出願戦略までの知識普及を図る。
ライセンス交渉・契約締結▼
- 大手企業からベンチャーまで幅広いパートナーと年間約60件の独占・非独占ライセンスを締結。
- バイオテクノロジー、クリーンテック、情報通信、先端材料など多彩な分野で実績。
- ロイヤリティ収入は年間約400万カナダドル規模。技術ライセンス料は研究助成、設備投資、次世代人材育成へ再投資。
スタートアップ支援・ベンチャー創出▼
- OIPはマギル大学発ベンチャー支援プログラム「McGill Momentum」を運営。事業化計画の策定支援、メンタリング、ピッチイベント、シード資金斡旋までをワンストップで提供。
- 学内インキュベーション施設「Dobson Centre for Entrepreneurship」と連携し、ラボ・オフィススペースを低廉に提供。
- これまでに「Oxyledx(持続可能ポリマー)」「VascularAI(血管画像解析AI)」「Nanotech Solutions(ナノセンサー)」など約120社のスピンオフ企業を輩出。
産学連携・共同研究推進▼
- 大手製薬、IT企業、エネルギー企業との共同研究契約を年間約200件成立。プロジェクトマネジメントから法務・財務支援まで一気通貫で対応。
- カナダ政府の研究助成(NSERC、CIHR、Mitacs)獲得支援や、州政府によるイノベーション補助金申請サポートにも注力。
- 産業クラスターや地方自治体と連携し、地域経済活性化プロジェクトを推進。
組織体制として、OIPはディレクターを頂点に、バイオ医薬・ライフサイエンス、クリーンエネルギー、デジタル技術、マテリアルサイエンスの各分野に専門化したライセンシングマネージャーや知財コンサルタント、法務・財務スタッフが配属。知財戦略立案から契約交渉、商業化後のフォローまでをチームで連携して遂行します。
最近の注力領域としては、以下の領域があります。
- AI/機械学習を活用したヘルスケア・診断技術の事業化
- ゼロエミッション・クリーンテクノロジー(再生可能燃料、カーボンキャプチャー)
- 量子材料・量子センサーの産業応用
- デジタルヘルス・メンタルヘルス領域におけるリモートモニタリング
これら次世代領域でのパートナー獲得とグローバル展開を加速させることで、マギル大学の研究力を国際競争力ある産業技術へと昇華させることを目指しています。
【参考】
University of British Columbia Office of Venture Development(カナダ)
University of British Columbia(以下UBC)Office of Venture Development(OVD)は,UBCの研究シーズを起点に,スタートアップ創出と技術商用化を加速する部門です。OVDは2008年に設立され,現在はUBC Research & Innovationの一組織として,研究者・学生のビジネス化支援,資金調達コーディネート,産業界パートナーとの連携窓口を一手に担っています。
主な機能・プログラムは以下の通り。
シード/シーズ資金支援▼
Life Sciences Opportunity Fund,Strategic Opportunity Fundなど複数のインキュベーション資金を保有し,プロトタイプ検証や市場調査に要する準備資金(最大25万カナダドル程度)を提供。
ビジネス開発サポート▼
ビジネスモデル設計(Lean Canvas)、顧客発見(Customer Discovery)ワークショップ、市場参入戦略立案など、専任のビジネス・マネージャーが伴走。
アクセラレーションプログラム▼
UBC Venture Acceleration Program(VAP)、Creative Destruction Lab – Vancouver(CDL-Vancouver)と連携し、投資家ネットワークへのアクセス、メンタリング、投資準備を総合支援。
ライセンス交渉・契約▼
UBC Technology Ventures部門と協働し、知的財産権の査定・特許出願から、企業への独占/非独占ライセンス契約締結までを一貫実施。
組織体制としては、OVDにはディレクターをはじめ,ビジネス開発マネージャー,ライセンシングオフィサー,法務・財務担当が在籍。ライフサイエンス,情報通信技術,クリーンテクノロジー,マテリアルサイエンスなど分野別にチームを編成し,学内から出る年間約400件の発明開示・事業提案を評価・選別します。また,学生ベンチャーを対象とした「e@UBC」プログラム,Sauder School of Businessの起業講義とも連携し,研究者だけでなく学部生・院生の起業意欲喚起にも注力しています。
【実績・事例紹介】
- AbCellera:抗体スクリーニング技術をUBC発のベンチャーにライセンス。OVDとUBC Technology Venturesの支援の下,シリーズDで5億ドル超の資金調達,NASDAQ上場を実現。
- DNAstack:ゲノムデータ管理プラットフォームを事業化し,OVDのVAPプログラムを経てカナダ政府助成金を獲得,国際製薬企業と共同開発契約を締結。
- Climos:海洋アルカリ化による大気CO2除去技術をベースに,シード資金とメンタリングを受け,BC州政府のイノベーション補助金に採択。
今後の展望として、OVDはAI/機械学習応用ヘルスケア,サステナブルマテリアル,量子情報技術,気候変動対策テックなど次世代領域を重点化。UBC内の学際研究拠点や地方自治体との共同プロジェクトを強化し,グローバル市場で通用するスケールアップ支援体制を一層整備していきます。
【参考】