トレンド・業界情報
DeSciに関するIP-NETのフラクショナライゼーションと海外DAOのまとめ
はじめに
DeSciは海外の産学連携業界において非常に注目されていますが、ほぼ全て英語の文献であり、取組も非常に活発なため、情報を把握することが大変です。そして、DeSciの要の一つである「IP」の取り扱いについて、IP-NETのフラクショナライゼーションを基本知識として抑えることもまた重要です。日本の産学連携/大学の研究環境/経営環境を、海外大学と同等水準へレベルアップを図るためには、海外のDeSciの情報・トレンドを常にキャッチアップしながら日本におけるDeSciの在り方を検討する必要がありますが、そのためには基本リテラシーの獲得と情報収集手段の整理がポイントとなります。
そこで本記事では、IP-NETのフラクショナライゼーションと海外DAOの全体と代表的な取組をまとめました。ただし、網羅性は考慮しているものの、あまりに海外DAOの情報が多すぎるため、全てを含んでいるわけではないことをご留意ください。簡潔に整理していますが、正しい理解を促進するため、専門用語を含む文章としています。その事前知識としてDeSciとはどのようなものかのイメージを持つことが必要ですが、当社が産学連携学会函館大会で発表した「DeSciの日本における社会実装方法の検討」をご一読いただくことで、理解の助けになると考えています。ぜひ下記URLをご参考ください。
「DeSciの日本における社会実装方法の検討」を産学連携学会函館大会で発表しました▼
「IP-NET」による知的財産フラクショナライゼーション
さて、まず、DeSciの文脈で提唱される「IP-NET」による知的財産フラクショナライゼーションの概要と仕組みを説明します。
知的財産フラクショナライゼーションとは、特許権や著作権などのIPをブロックチェーン上のトークンで小口化・分割所有し、多数の投資家が共同で一部保有できる仕組みです。投資家は少額から参加し、発明成果のライセンス収益やロイヤリティを保有比率に応じて受け取れます。
これにより、研究者やスタートアップはグローバルなコミュニティから資金調達しやすくなり、資金効率や流動性、ガバナンス透明性が向上します。二次流通市場でトークン売買できるため、市場メカニズムに基づくIP評価やリスク分散も可能。
さらに、スマートコントラクトで収益自動分配やオフチェーン売上データのオラクル検証を行い、改ざん耐性を担保。提案・開発方針はガバナンストークン投票で決定し、国境を越えた協業も促進されます。
デロイトトーマツコンサルティング合同会社のホームページにおいて「DeSci Japan Summit 2025」イベントレポートが掲載されており、「VitaDAO」の創設期メンバーであるマリア・マリノバ氏の登壇内容が紹介されています。
下記に登壇内容を抜粋しますが、IP-NETのイメージを掴む上で非常に参考になります。
科学立国への新潮流、「DeSci」が加速させるサイエンスの社会実装」
■「科学立国への新潮流、「DeSci」が加速させるサイエンスの社会実装」
→ https://www.deloitte.com/jp/ja/services/consulting/perspectives/desci-jp-summit-2025-report.htm
DeSciの先駆者が語るIPファイナンスの未来
2つ目のセッションでは、DeSciの代表的プロジェクト「VitaDAO」の創設期メンバーであるマリア・マリノバ氏(タリオン・イニシアティブ サイエンティフィックディレクター)が登壇。自らの経験に基づき、DeSciが従来のR&Dをいかに変革し得るか、その具体的な姿を示した。
マリノバ氏はまず、現代の科学システムが抱える構造的課題として「イノベーションの停滞」や「研究者のインセンティブ不整合」を指摘。R&D投資額が増加する一方で画期的なブレークスルーが生まれにくく、研究者は本来の研究活動より助成金申請に時間を費やさざるを得ない。生み出された知的財産(IP)の所有権も大学などに帰属し、研究者自身がその恩恵を直接享受しにくい。DeSciは、これらの課題を解決する実践的なフレームワークであると強調した。
タリオン・イニシアティブ サイエンティフィックディレクターのマリア・マリノバ氏
その核心となるのが、VitaDAOが活用する「IP-NFT」と「IPトークン(IPT)」という革新的な仕組みだ。IP-NFTは、大学などからライセンスされたIPの所有権をブロックチェーン上でNFT(非代替性トークン)化したもので、従来の契約書より取引しやすいデジタルの権利証書といえる。さらに、このIP-NFTを細分化したものがIPTである。IPT保有者は、IPそのものの所有権ではなく、研究開発の方向性などを決める投票権(ガバナンス権)を持つ。
この仕組みの画期的な点は、企業の株式を希薄化させることなく、プロジェクト単位でのグローバルな資金調達を可能にする点にある。これにより、投資家は初期段階の研究開発にアクセスでき、患者コミュニティなども含めた多様なステークホルダーが研究に関与する道が開かれる。マリノバ氏の講演は、DeSciが単なる理想論ではなく、R&Dのあり方を根本から変革しうる、極めて実践的なフレームワークであることを強く印象付けた。
全体像をIP-NETのホワイトペーパーや公式ホームページ等をベースに、順序だててまとめました。
専門用語が含まれていますが、「4. フラクショナル・トークンの発行と流通」「5.ロイヤルティ配分のアーキテクチャ」「6. ガバナンス機能とコミュニティ参加」を読んでいただくと、仕組みがおおよそ把握できます。また、日本の大学におけるIPの取り扱い・基本概念とは大きく異なることが見て取れます。
「7.利用シナリオと各ステークホルダーのメリット」において知的財産フラクショナライゼーションのメリットを整理しています。
「8.課題と今後の展望」に記載した「法規制の整備」の事項が、日本の大学がIP-NETの仕組みに参画する大きな課題となります。
「IP-NET」の全体像
1.DeSciとIPフラクショナライゼーションの背景
1-1. DeSciとは何か
・従来の科学研究は、大学や大企業が特許や論文を独占管理し、研究資金は政府補助金やベンチャー投資に依存してきた。
・これに対しDeSciは、Web3技術を用いて研究成果の公開、資金調達、評価、ライセンス管理などをコミュニティ主導で行う新たなパラダイム。
1-2. 従来モデルの限界
・特許維持費やライセンス交渉に要するコストが高く、スタートアップや個人研究者が新技術を事業化しにくい。
・成果の価値を評価する第三者機関が限られており、市場メカニズムによる適正価格形成が難しい。
・研究と社会実装の間に「資金不足」「情報非対称」「ガバナンスの欠如」といったギャップが存在。
1-3. IPフラクショナライゼーションの狙い
・知的財産権を小口化(=フラクショナライゼーション)し、誰でも部分的に投資・共同所有できるようにする。
・投資家は技術ライセンス収益の一部をロイヤリティとして受け取れる。
・研究者やスタートアップは、より広範なコミュニティから資金調達でき、リスク分散された形で事業化を加速できる。
2. IP-NETの全体構造
IP-NETは主に以下のコンポーネントで構成されます▼
- IPレジストリ(オンチェーン台帳)
- 母体NFT(ERC-721)による権利のトークン化
- フラクショナル・トークン(ERC-20)の分割発行
- ロイヤルティ分配スマートコントラクト
- ガバナンスプールと投票機能
3. 母体NFTの発行フロー
3-1. IP登録と審査
a. 発明者や研究者は、特許明細書、実験記録、タイムスタンプ付き証跡などのデータをIP-NETプラットフォームに提出
b. オンチェーンにハッシュ値を刻印し、データ改ざん不可能性を確保
c. ピア・ノード(コミュニティ参加者)による形式審査を経て問題なければ次段階へ
3-2. NFTミント(発行)
a. オンチェーン審査通過後、ERC-721準拠の「母体NFT」が発行
b. メタデータに「タイトル」「概要」「特許番号」「権利者アドレス」などを紐づけ
c. 母体NFTは唯一無二であり、以降のトークン発行の原点となる
3-3. フラクショナルトークン総量設定
a. 発行者は「分割可能なトークン総量(例:1,000,000トークン)」を設定
b. これはNFT保有者が発行できるERC-20トークンの上限を意味
c. 総量設定後は不変で、透明性を担保
4. フラクショナル・トークンの発行と流通
4-1. 分割比率と自己保有決定
a. 発行者は「何%をコミュニティ向けに開放し、何%を自己保有するか」を決定
b. 例:総量の70%を販売、30%を研究開発や運営準備金としてプール
4-2. 初期資金調達手法
a. プライベートセール:ベンチャーキャピタルやアーリーサポーター向け
b. パブリックオークション:透明性の高いオークション形式で一般参加者も入札可能
c. ITO(Initial Token Offering):固定価格で誰でも購入できる直販方式
4-3. 取引所上場と二次流通
a. IP-NET内の分散型取引所(DEX)への上場
b. 外部中央集権取引所(CEX)への上場にも対応可能
c. これにより投資家は市場価格で自由に売買・流動性提供ができる
5. ロイヤルティ配分のアーキテクチャ
5-1. 分配ルールの事前設定
a. ライセンス収益の何%をロイヤルティとして徴収するかをスマートコントラクトに組み込む
b. 分配スケジュール(四半期ごと、年1回など)や最低配分単位も設定
5-2. オラクルによる収益実績報告
a. 製品化企業(ライセンシー)は売上データをオフチェーン決済システムからオラクルに報告
b. 複数オラクルノードでクロスチェックし、オンチェーンにデータ登録
5-3. 自動分配プロセス
a. 収益実績が登録されると、自動でロイヤルティプールに資金がプール
b. フラクショナルトークン保有比率に応じて、各ウォレットへガス代込みで分配
c. 保有者はいつでも自分のウォレットで受け取り状態を確認可能
6. ガバナンス機能とコミュニティ参加
6-1. 提案から実行までのフロー
a. 提案提出:誰でもガバナンスフォーラムまたはオンチェーンで提案可能
b. ディスカッション:フォーラムやオンチェーンコメントで投票前に意見交換
c. スナップショット投票:一定期間、トークン保有量に応じたウェイトで賛否を投票
d. 実行フェーズ:所定のクォーラム(例:20%以上参加、過半数賛成)を満たすと自動実行
6-2. 投票インセンティブ
a. 投票参加者には特別トークンやNFTによるガバナンス報酬を付与
b. クロス提案への投票数や有効投票率に応じて追加報酬を設定し、参加率向上を図る
7. 利用シナリオと各ステークホルダーのメリット
7-1. 研究者・スタートアップ
・早期の研究資金をグローバルに調達しやすくなる
・特許維持・開発費をコミュニティで分担し、リスクを低減
・成果に対する市場の反応をリアルタイムで把握可能
7-2. 投資家・一般ユーザー
・低額からIP投資ができ、複数技術を分散保有可能
・ライセンス収益に応じたロイヤルティ収入を享受
・ガバナンス参加を通じて技術開発の方向性にコミットできる
7-3. 製品化企業(ライセンシー)
・フラクショナルトークン保有者とも協働しやすく、交渉コスト削減
・開発ロードマップへのコミュニティ協力が得られ、エビデンス収集が迅速化
8. 課題と今後の展望
8-1. 法規制の整備
・各国の特許法・著作権法における分割所有の扱いを明確化する必要
・証券規制(STO)との関係性を整理し、投資家保護策を構築
8-2. 価値評価と市場流動性
・技術スコアリングやAI評価モデルによる適正価格の指標化が鍵
・マルチチェーン対応やクロスチェーンAMMの導入で流動性を強化
8-3. コミュニティ参加促進
・UX向上やガバナンスインセンティブ最適化で投票率・提案率を向上
・教育コンテンツやハッカソンを通じ、より多様な参加者を巻き込む
8-4. 技術高度化
・AIを活用した特許類似性検索や価値予測ツールの導入
・オンチェーン実験プラットフォーム(Lab-as-a-Service)との連携で実験データを直接NFT化
まとめ
IP-NETは、従来「閉じた資本主義」の下で動いていた知的財産の所有・運用モデルを、Web3技術とコミュニティガバナンスによりオープンかつ流動的な仕組みに変革するプラットフォームです。
研究者は資金調達とリスク分散、投資家は低額からのIP投資とロイヤルティ収益、製品化企業は交渉コスト削減とコミュニティ協調という各ステークホルダーのメリットを享受し、結果として科学技術のイノベーションサイクルを高速化します。
法規制、評価指標、流動性確保といった課題を解決しつつ、多層的なガバナンス機能やAI連携などを進めることで、IP-NETはグローバルなdeSciエコシステムの中核を担い得る可能性を秘めています。
参考情報
次に、海外の様々なDAOについて、要点と参考URLをまとめます。
海外におけるさまざまなDAOの例
VitaDAO
■長寿命研究領域を支援する初期かつ代表的なDeSci DAO
VitaDAO(ヴィータDAO)は、コミュニティ主導の分散型自律組織(DAO)として、早期段階の長寿(Longevity)科学研究に資金を提供し、成果を社会実装へとつなげることを目的としています。研究機関や個人研究者が提案するプロジェクト(VDP: VitaDAO Development Proposals)に対し、DAO参加者がVITAトークンを用いて投票し、資金配分や知的財産のライセンス化を決定します。これにより、従来のベンチャーキャピタルや製薬企業が関与しにくい基礎研究にもコミュニティから直接支援を行える仕組みを実現しています。
設立は2021年初頭で、Web3技術を活用した「DeSci(分散型サイエンス)」ムーブメントの一環として発足しました。DAOの仕組みを通じて、長寿研究で期待される創薬や老化メカニズム解明などをコミュニティの意思決定で推進。従来の研究助成と異なり、投資家・研究者・一般参加者が同じテーブルに着き、透明性の高いプロセスで知見と資金を共有します。
ガバナンスは主にSnapshot(オフチェーン投票)とDiscourse(フォーラム)で運営され、提案の立案・議論・承認・実行までが一連の流れとして確立。VDPには研究資金の使途、共同研究パートナーの選定、ライセンス条件の策定などが含まれ、賛成多数のプロジェクトはスマートコントラクトを通じて実際に資金がロックされます。また、DAO Treasury(準備金)として蓄えられた資金は、次世代の研究支援や戦略的提携にも活用されます。
VITAトークンはERC-20標準のガバナンストークンで、主な用途は提案への投票権付与とインセンティブ付与です。2022年2月に公開トークンセールを実施し、以降はUniswapなどのAMMやCoinMarketCap上でも取引可能。2025年7月時点でVITAの市場価格は約1.09USD、24時間取引高は約258万USDに達しており、時価総額数千万USD規模で流動性が確保されています。
これまでに多数のVDPが採択され、老化関連バイオマーカー探索や既存薬の再利用研究、サプリメント開発など多岐にわたるプロジェクトが進行中。今後は臨床応用を視野に入れた大型研究や製薬企業との提携強化を進め、DAOモデルによる長寿医療イノベーションの加速を目指しています。
【参考】
Molecule
■研究成果のトークン化・マーケットプレイス提供を行うプラットフォームDAO
Molecule(モレキュール)は、バイオテクノロジー領域の知的財産(IP)をブロックチェーン上でトークン化し、分散型コミュニティによる資金調達と研究推進を実現するDeSciプラットフォームです。2021年に設立され、イーサリアム上のIP-NFT標準(ERC-721ベース)とガバナンストークン「MOLECULE」を組み合わせることで、大学やスタートアップが保有する特許やライセンス権をオンチェーンに移行。投資家はIP-NFTを購入・取引することで、プロジェクトへのファイナンス参加やリターンをスマートコントラクトで受け取れます。
コミュニティガバナンスは、MOLECULE保有量に応じた提案権と投票権を通じて行われます。研究機関はIP-NFT化した技術をMoleculeマーケットプレイスに出品し、投資家は審査やQ&Aを経て購入を決定。成長段階に応じて「スピンアウトDAO」を立ち上げ、専用ガバナンストークンで追加資金調達やチーム採用、事業開発を推進します。成功したプロジェクトは、最終的にライセンス料や株式売却益をMOLECULEトークン保有者に自動配分する仕組みを備えています。
これまでに、希少疾患向けバイオマーカー探索プロジェクトや、合成生物学を活用したバイオ燃料開発など、複数の大学発案件をファイナンス。IPweやThermo Fisher Scientificなど既存のライセンス仲介業者との連携により、オンチェーンとオフチェーン双方の法務・商務プロセスを橋渡ししています。さらに、ArbitrumやPolygonなどL2ソリューションの導入で取引コストを軽減し、ResearchHubやBenchSciといったDeSciエコシステムとの相互運用性強化にも取り組んでいます。
今後はクロスチェーン対応によるグローバルIP流動性の拡大、AIベースの自動バリュエーションモデル導入、オンチェーン研究成果データベースの構築を通じ、バイオテック業界における新たなファイナンススタンダード確立を目指しています。Moleculeは、知的財産の民主化と早期実用化を両立させることで、従来の研究投資モデルに革新をもたらすプラットフォームです。
【参考】
1) https://www.molecule.to/
2)https://molecule.xyz/
3)https://web3.bitget.com/de/dapp/molecule-28388
4)https://molecule.xyz/industry-research
PsyDAO
■サイケデリック研究など新興領域をカバーするDAO
PsyDAO(サイダオ)は、サイケデリック(幻覚誘発)科学と文化の発展を目的とした、トークンインセンティブ型の分散型組織です。主に研究者(Researcher)とデータ提供者(Participant)が直接協力できるプラットフォームを提供し、高品質なデータ収集とその活用を推進しています。参加者にはPSYトークンで報酬が支払われる仕組みを備え、科学的研究の透明性と効率性を向上させることを目指しています。
背景とミッション
• 2021年ごろにコミュニティ主導で立ち上がり、NFTやトークンを活用した分散型研究モデルを提唱。
• サイケデリック研究におけるデータ断片化や倫理的課題を解消し、オープンサイエンスの促進をミッションとしています。
プラットフォーム概要
• 研究者はPsyDAO上で「プロジェクト提案」を作成し、参加者を募ります。
• 参加者は同意インフォームドコンセントを経てアンケート回答や生体情報の提供を行い、その対価としてPSYトークンを獲得。
• 収集されたデータは匿名化・暗号化され、オープンアクセスまたはクローズドアクセスの形で研究利用が可能です。
ガバナンスとトークンエコノミー
• PSYトークンはPsyDAOのガバナンストークンであり、提案への賛否投票や資金配分決定に用いられます。
• プロジェクト資金はDAOのトレジャリーで管理され、オンチェーン投票で配分比率が決定。透明性が高く、すべての支出はブロックチェーン上で追跡可能です。
コミュニティとパートナーシップ
• サイケデリック研究機関、大学、精神医療クリニックなどとの協働プロジェクトを実施。
• DiscordやTwitter上の活発なコミュニティによって、研究倫理や法規制に関する議論が日常的に行われています。
トークン動向と市場情報
• PSYはCoinGecko上で時価総額ランキングに名前を連ね、現在の価格は約0.03USD前後で推移。(24時間取引量:約2,300USD)
• Coinbaseなど主要取引所でも上場され、流動性が徐々に向上してきています。
今後の展望
• 大規模臨床試験へのデータ提供プラットフォーム化、AI解析導入によるデータ精度向上を計画中。
• 政府機関や製薬企業との連携強化で、より幅広い用途でのデータ活用を目指しています。
PsyDAOは、ブロックチェーン技術を活用してサイケデリック科学を革新し、よりオープンでインクルーシブな研究環境を構築することで、次世代の精神医療や意識研究に大きなインパクトをもたらすことが期待されています。
【参考】
Atom Accelerator DAO(通称 AADAO)
■分散型実験プラットフォーム構想を掲げるコミュニティDAO
Atom Accelerator DAOは、Cosmos Hub 上でATOMエコシステムの成長と価値創造を目的に立ち上げられたコミュニティ主導型DAOです。2024年にガバナンス提案を経て設立され、以下のような特徴と運営体制を持ちます。
設立と目的
• Cosmos Hub のATOM保有者によるガバナンス投票で発足。
• ATOMエコシステム全体のエコシステム拡大、開発支援、マーケティング推進をミッションとする。
組織構造とガバナンス
• コントリビューター(貢献者)モデルを採用し、提案→コミュニティ内ディスカッション→オンチェーン投票→実行という流れで運営。
• トレジャリー(DAOの運営資金)はコミュニティ委託プールから拠出され、すべての支出と決定は透明性レポートで公開。
主な活動領域
• グラントプログラム:dApp開発者への助成金付与やモジュール開発支援
• ベンチャー投資:スタートアップとのパートナーシップ形成、インキュベーション支援
• コミュニティ運営:オンライン/オフラインイベントの企画・実施、教育コンテンツの提供
• マーケティング:ATOM保持者向けキャンペーンや広報活動
コミュニティ連携・議論
Cosmos フォーラム上では「Community DAO」としてのベストプラクティスやオンチェーンガバナンス改善のアイデアが積極的に議論され、DAO運営に必要なフレームワーク整備が進められました。
サンセット(Sunsetting)戦略
2025年7月、DAOのライフサイクルを見直すサンセット戦略を発表。残余資金のコミュニティプールへの返却を完了し、当初ミッションの達成度に応じたフェーズ終了を実施。これにより、次世代DAOや新たなエコシステム施策へ資金を還流させる基盤を構築しました。
今後は、Atomsで培われた「透明性の高い資金管理」「コミュニティ主導のガバナンスモデル」が、他DAOやWeb3プロジェクトにおける模範例として広く参照されることが期待されています。
【参考】
ResearchHub
■オープンサイエンスの加速と学術成果の民主化を目指すDAO
ResearchHubは、「科学研究の優先順位付け(prioritization)」「共同研究(collaboration)」「再現性(reproducibility)」「資金調達(funding)」を総合的に改善することをめざすオープンサイエンス・プラットフォームです。研究者や学生、企業、政策立案者など、あらゆるステークホルダーがアカデミックな知見を共有・議論し、再利用可能なデータやアイデアを集積します。論文の要約(summaries)や質疑応答(Q&A)、研究ハブ(“Hubs”)と呼ばれる専門領域ごとのコミュニティ機能を備え、投稿されたプレプリントや既発表論文へのコメント・補足を通じて、研究のエコシステムを拡張します。
プラットフォーム上でのあらゆる貢献──例えば論文要約、レビュー、質疑応答、データセットの共有など──には「ResearchCoin(RSC)」と呼ばれる独自のトークンが付与されます。RSCは研究者自身がプラットフォームおよびエコシステムの共同オーナーとなるための報酬・ガバナンス手段として機能し、獲得したコインを用いてプレプリントの優先掲載権やジャーナルの投稿手数料割引、専門家へのマイクログラント支払いなど多彩な用途にアクセス可能です。これにより、従来の査読プロセスでは評価されづらかった貢献にもインセンティブが生まれ、研究コミュニティ全体のモチベーション向上を図ります。
2024年にはCenter for Open Science(COS)と提携し、Diamond Open Accessモデルを採用した「publish-before-review(投稿先公開後に査読を行う)」方式を導入しました。査読プロセスの透明性を確保するため、すべてのレビューコメントと改訂履歴をオープンに公開し、再現性や評価の公正性を高めています。また、査読者にはマイクロペイメントで報酬が支払われ、研究者コミュニティ全体で「有益なレビュー」をインセンティブ化する仕組みを整備しています。
さらに、ResearchHub自身が運営する「The ResearchHub Journal」を立ち上げ、迅速な査読対応(平均2週間以内)、低額な掲載料(APC:$1,000)、透明性の高いオープンピアレビュー、Boosted Visibility(プラットフォーム内での論文プロモーション)など、従来ジャーナルにはない特長を打ち出しています。これにより、前臨床研究や基礎科学から応用研究まで多彩な分野の研究成果をスピーディに公開し、広く社会実装を促進することを狙いとしています。
こうした仕組みを通じて、ResearchHubは「研究の民主化」と「オープンサイエンスの加速」を両立させる次世代型プラットフォームとして成長中です。今後はガバナンス機能の強化や外部研究機関との連携拡大、API公開によるデータ利活用の多様化などを見据え、科学コミュニティ全体の効率化とイノベーション創出を支援していきます。
【参考】
Braid Science
■科学的知見の再利用性向上を目指すDAO
BRAID(Biological Reasoning and Data Integration)は、米国Genentech社のgRED(Genentech Research and Early Development)内に設置された計算生物学プラットフォームです。機械学習やシステム生物学の手法を用いて、細胞や生物システムが遺伝子・化合物の撹乱(perturbation)にどのように応答するかを定量的にモデル化し、創薬の初期段階における標的同定から作用機序の解明までを加速させることを目的としています。高スループットな撹乱実験とマルチオミクス解析、グラフ理論を応用した機械学習アルゴリズムを組み合わせることで、複雑な細胞内ネットワークの因果関係を推定し、従来の実験デザインでは見落とされがちな新規メカニズムを発見します。
具体的には、遺伝子ノックダウンや化合物投与などの撹乱条件下で得られるトランスクリプトーム、プロテオーム、代謝産物データを統合的に学習。同時に因果推論モデルを組み込むことで、細胞シグナル伝達経路やフィードバックループの動的挙動を再現し、薬剤耐性やバイオマーカー候補の予測精度を高めています。また、得られた予測モデルを基に「最適な次実験条件」を自動提案する機能も備え、試行錯誤を大幅に削減することで実験コストと期間の短縮を実現します。
チームは生物学者、化学者、計算機科学者、統計学者など多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成され、共同研究の体制が整っています。特に機械学習エンジニアと実験生物学者が密に連携し、モデルの予測結果を速やかに実験検証に回す“サイクル”を回すことで、研究開発のイテレーションを高速化。こうした密接なクロスファンクショナルチーム体制はGenentechの研究開発戦略の中核ともいえるでしょう。
BRAIDの導入により、従来は数ヶ月要していた作用機序の仮説立案から検証までのサイクルが週単位で完結するケースも報告されています。これにより、前臨床段階におけるターゲットのエビデンス構築やリスク評価が飛躍的に進み、創薬パイプライン全体の効率化に寄与。また、プラットフォーム自体は社内/社外の案件に拡張可能なモジュール設計がなされており、将来的にはアカデミアやバイオベンチャーとの共同利用も視野に入れたオープンサイエンス的展開が期待されています。
【参考】
AthenaDAO
■女性研究者支援や多様性推進をフォーカスするDAO
背景・ミッション
AthenaDAOは、女性の健康研究が歴史的に資金不足・データ不足に陥ってきた課題を解決する目的で設立されました。従来の助成金モデルでは取りこぼされてきた生理学、リプロダクティブヘルス、更年期研究などを対象に、コミュニティ主導で資金を集め、透明性高く配分することを目指します。
ガバナンス体制
AOガバナンスはネイティブトークン「ATH」の保有比率に応じた投票権に基づきます。提案投稿、研究プロジェクトの選定、助成額の決定など重要事項は全メンバー参加型の投票プロセスを経て実行。ホワイトペーパーでは、提案発議から投票、実行モニタリングまでをオンチェーンで追跡可能とし、バイアス排除と公平性を担保すると定義しています。
トークンエコノミクス
ATHトークンは総供給量をホワイトペーパーで公表し、研究助成プール、コミュニティインセンティブ、運営チーム、パートナーシップ支援用に配分。IDOにより主要DEX(分散型取引所)へ上場し、流動性マイニングやステーキングによる報酬制度も設定されています。これにより、研究者・支援者双方のエンゲージメントを高め、資金循環を持続的に維持します。
IP-NFTを用いた成果管理
AthenaDAOは研究プロトコルや知見を「IP-NFT」としてトークン化し、著作者帰属権をスマートコントラクト上で制御。二次流通市場におけるロイヤリティ設定も可能とし、収益の一部を研究者やDAOに還元します。これにより、研究成果の商業化・再利用を促進すると同時に、成果の真正性と透明性を保証します。
助成金配分プロセス
助成金申請者はプラットフォーム上で研究概要・予算計画・成果指標を提出。トークンホルダー投票を経て助成可否を決定し、支払いは複数回のマイルストーンに連動します。達成度合いはオンチェーンでレポートされ、メンバーによるレビューとフォローアップが行われます。
コミュニティと実績
立ち上げ後、ケンブリッジ大学、ハーバード大学、MITなど世界中の研究者から提案を獲得。インキュベーションプログラムでは、助成先プロジェクトが論文発表や特許取得へとつながり始めています。多様なバックグラウンドを持つメンバー同士のネットワーキングも活発です。
【参考】
Bio Protocol
■オープンサイエンス向けプロトコル開発を進めるDAO
Bio Protocolは、バイオテクノロジー領域における研究成果や知財をトークン化し、分散型自律組織(DAO)を通じて資金調達、開発、ガバナンスを行うWeb3プラットフォームです。本プロトコルによって、大学、企業、研究者らが生み出す科学的知見をオープンかつ透明性の高い形で資金化し、コミュニティが意思決定に参加できるエコシステムを構築します。
コアユーティリティトークンである「BIO」は、資金の投票配分やステーキングを通じてBioDAOへの貢献度を測り、報酬配分やガバナンス投票に用いられます。BIO保有者は提案の支持・反対や資金拘束(ステーキング)を行うことで開発ロードマップやマイルストーン達成に影響力を行使し、エコシステム全体の健全な運営に寄与します。
プロトコルには、個別プロジェクトごとに設立されるBioDAOが存在し、DAO参加者は応募プロジェクトの提案内容や技術的妥当性、進捗状況に応じてマイルストーンベースで資金を配分します。資金提供から実験フェーズ、商業化までをオンチェーン上で管理し、中間成果に基づく自動支払いやエスクロー機能を通じてリスクを軽減します。
さらに、BioAgentsと呼ばれるAI駆動型の科学者エージェントが導入されており、データ解析、仮説生成、文献調査などのタスクを自動化します。これにより、研究効率を向上させるだけでなく、DAOメンバーの意思決定を支援し、技術的障壁を下げる役割を担います。
本プロトコルのミッションは、従来のベンチャー資金や助成金に依存することなく、グローバルなコミュニティ視点でイノベーションを推進し、バイオテクノロジー研究の民主化を実現することです。将来的には、研究成果の市場流動性を高め、新薬開発や農業技術、環境問題解決など多様な応用分野でのブレイクスルー創出を目指します。
【参考】
DeSci Labs
■DeSci関連ツール・UI開発を手掛けるDAO
DeSci Labsは、Web3技術を駆使して科学研究の公開・共有インフラを再構築し、「次世代の科学にふさわしいインフラを誰もが利用でき、かつ誰にも支配されない形で提供する」ことを掲げるプロジェクトです。研究者、エンジニア、コミュニティが協調して研究成果の蓄積・検証・公開までを分散型ネットワーク上で完結させることを目指しています。
核となるプラットフォームのひとつが「DeSci Publish」で、これはCODEX Protocol上に構築された分散型ピアツーピア出版システムです。従来の静的PDFではなく、マニュスクリプト、データ、コード、プロトコルといった研究資産をまとめてアップロード・公開でき、誰でもネットワークに参加して検証やピアレビューが行えます。これにより、研究成果の透明性と再現性を飛躍的に高める仕組みを提供します。
もうひとつの中核コンポーネントが「DeSci Nodes」と呼ばれるノード群です。各ノードは研究成果のホスティング、検証、メタデータ管理を担い、オンチェーンでのハッシュ管理やコンテンツアドレッシングを実現します。GitHub上で公開されている「automating-metadata-v1」は、その一環としてメタデータ収集・標準化プロセスを自動化し、高品質なデータカタログを生成するプロダクション版です。これにより、分散環境下でも一貫したメタデータ管理が可能となります。
加えて、DeSci Labsは研究者向けのAI支援ツール群も提供しています。文献調査や実験データ解析、統計処理などをサポートするだけでなく、成果の公開プロセス自体をガイドし、オープンピアレビューやコミュニティによる評価・インセンティブ設計を統合。研究者が自らの作業に専念できる環境を整え、学術コミュニケーションの流動性を高めます。
ミッションは、従来の学術出版や助成金制度のボトルネックを打破し、研究成果の公開から評価、資金調達までを透明かつ迅速に行えるエコシステムを実現すること。トークンエコノミーやオンチェーンガバナンスを組み合わせることで、研究コミュニティが自律的に進化・拡張する仕組みを構築し、「科学の民主化」を推進します。
【参考】
Bluzelle
■分散型ストレージ基盤を提供し、研究データの永続性を支えるプロジェクトDAO
Bluzelle(ブルゼル)は、ブロックチェーン技術を活用した分散型データベースネットワークで、主にdApps(分散型アプリケーション)向けに高い可用性・耐検閲性・スケーラビリティを提供します。従来の中央集権的なクラウドストレージが抱える単一障害点や運営者によるデータ改ざんリスクを排除し、ノード間のピアツーピアネットワーク上でデータを安全に保管・共有できるインフラを構築することを目指しています。
ネットワークを構成するのは、世界中のストレージ提供者(ストレージファーマー)によって運営されるノード群です。Bluzelleでは「スウォーム(swarm)」と呼ばれるノードの集合体を編成し、ユーザーから受け取ったデータを自動的にシャーディング(分割)してスウォーム内に分散保存。これにより、あるノードがダウンしても別ノードがデータを再構築できる冗長性とパフォーマンスを両立しています。
コンセンサス層にはTendermintベースのBFT(Bizantine Fault Tolerance)アルゴリズムを採用。高速な最終確定性(ファイナリティ)を確保しつつ、ネットワーク上のトランザクション処理やデータ操作の整合性を維持します。これにより、リアルタイム性が求められるゲームや金融サービス、IoTデータのストリーミング等にも応用が可能です。
トークンエコノミーの中心となるのがユーティリティトークン「BLZ」です。dApp開発者はストレージ利用料の支払いにBLZを使用し、ストレージファーマー(ノード運営者)は預けられたBLZをステーキングすることで運営報酬を得ます。また、将来的にはバーン(焼却)や買い戻しメカニズムを導入し、流通量を適切に管理する計画があります。さらに、GameFi領域ではNFT購入やゲーム内通貨としてのBLZ活用も模索されています。
Bluzelleは二重トークンモデルを採用しているとも言われ、外部投資家向けのBLZトークンと、ネットワーク内の取引を効率化するための内部トークン(BNTなど)を使い分けることで、手数料ゼロでのデータ操作やマスターノード運営を実現し、ネットワークの持続性と参加インセンティブを両立させています。
開発者向けには、公式SDKやCLI、RESTful APIが提供されており、JavaScript/TypeScriptやGo、Pythonなど多様な言語で容易にBluzelleネットワークへのクエリ・データ書き込みが可能です。GitHub上でオープンソース化されたクライアントライブラリやサンプルコードも充実しており、導入ハードルを低く抑えています。
導入事例としては、ブロックチェーンゲームのステート管理、分散型ID(DID)のプロファイル保存、IoTセンサーから集積されるリアルタイムデータのキャッシュ用途などがあり、高スループットかつ低レイテンシで動作する点が評価されています。今後はクロスチェーン連携やプライバシー保護技術(ゼロ知識証明など)の統合も視野に入れ、より幅広いユースケースへの展開を図っています。
まとめると、Bluzelleは「どこでも誰でも参加でき、かつ改ざん耐性を備えた分散型データベース」を実現するために、スウォームベースのシャーディング技術、Tendermintコンセンサス、BLZトークン経済圏、開発者支援ツール群を統合したプラットフォームです。dAppsのデータインフラを次世代レベルに押し上げるソリューションとして、今後のWeb3エコシステム構築において重要な役割を担うことが期待されています。
【参考】
ValleyDAO
■ベンチャー投資と研究支援を組み合わせたDAO
ValleyDAOは、合成生物学(シンセティックバイオロジー)技術を活用し、地球規模の気候変動や食料問題などの喫緊の課題に取り組むための分散型自律組織(DAO)です。学術研究者や独立したイノベーターがプロジェクト提案を行い、コミュニティメンバーがトークン投票を通じて資金配分を決定します。オープンでグローバルな参加を前提としており、研究の社会実装や商業化を加速するためのプラットフォームとして機能しています。
ミッションとビジョン
「生命科学の民主化」を掲げ、従来は大規模ラボや企業に限定されていた合成生物学研究へのアクセスを開放します。ValleyDAOは、才能ある研究者やスタートアップが資金調達や実験設備の共有を行えるネットワークを構築し、将来的に環境修復や持続可能な農業、新素材開発など多岐にわたる応用を見据えています。こうした活動を通じて、生物技術分野のイノベーションをボトムアップで生み出すことを目指しています。
ガバナンスとトークンエコノミー
組織運営はERC-20トークン「GROW」を中心に回っており、提案の承認や重要事項の決定は全メンバーの投票で行います。透明性の確保と意思決定の迅速化を両立させ、DAOならではの柔軟性を実現。提案者はトークンをステーク(預託)することで信頼性を担保し、的確な資金配分を促進します。これにより、中央管理者を介さずに公平な研究支援が可能となっています。
資金提供プログラム
ValleyDAOは、研究プロジェクトに対して最大25万ドルの助成を、申請から2ヵ月以内に実行できるスピード感を特徴としています。応募募集は定期的に行われ、提案内容の独自性や実現可能性、社会的インパクトが評価基準となります。資金はスマートコントラクトを通じて分配され、中間報告や成果物の共有を義務付けることで、コミュニティ全体で進捗を可視化します。
Phloプラットフォーム連携
ValleyDAOのエコシステムには「Phlo」という協業促進プラットフォームが組み込まれており、研究者や技術者がコラボレーション相手を検索し、共同研究や商業化パートナーを見つける機能を持ちます。Phlo上でポートフォリオを公開することで、研究成果の応用先を早期に探索し、資金提供者や業界とのマッチングを強化できます。
コミュニティと将来展望
現在、世界中から数百名のメンバーが参加し、GitHub上のプロトコル開発やZoomによる定例ミーティングで意見交換を行っています。将来的には、地域拠点の実験スペース開設や、企業連携によるPilotプロジェクトのローンチを視野に入れており、DAOモデルをバイオテック分野で標準化することを目指します。生物技術イノベーションの民主化がもたらす社会的インパクトは大きく、今後の展開に注目が集まっています。
【参考】
ResearchCoin (RSC)
■学術成果に連動したトークン発行を企図するDAO
ResearchCoin(RSC)は、オープンサイエンスプラットフォーム「ResearchHub」内で用いられるユーティリティトークンです。ユーザーは論文やデータの共有、レビュー、コメントなど科学的貢献を行うことでRSCを獲得でき、研究コミュニティの活性化と質の向上を目的としています。EthereumネットワークのERC-20規格に基づき発行され、分散型経済圏を構築します。
歴史と背景
ResearchHubは2020年に設立され、「知識の民主化」をミッションとするWeb3プロジェクトです。従来の学術出版モデルでは研究成果のアクセスと評価が限定的でしたが、ResearchHubはトークンインセンティブを導入することで、よりオープンかつ協調的な研究環境を提供しています。ResearchCoinはその中核経済圏を支える存在として開発されました。
トークノミクス
RSCの総供給量は固定で、トークンの配布は主に以下4つのルートから行われます。
・貢献リワード:論文投稿・要約・データセット共有などの活動報酬
・コミュニティファンド:開発・マーケティングへの補助
・エアドロップ・バウンティ:新規ユーザー獲得施策
・チーム・パートナー割当:プロジェクト推進体制の強化
全体の約30%が貢献リワード用に予約され、長期的なコミュニティ成長を促します。
主なユースケース
・報酬付与:研究成果を投稿したり、他者の論文を査読したりするとRSCが付与される。
・トークンステーキング:将来のプロジェクト投票権を得るためのステークが可能。
・NFTコレクション:論文やデータセットをNFT化し、一次販売や二次流通でRSCを得る仕組み。
・ガバナンス参加:プラットフォーム運営方針や新機能導入に関する投票。
価格動向と取引プラットフォーム
RSCは複数の分散型取引所(Uniswapなど)および一部の中央集権型取引所で取引可能です。2025年7月時点の時価総額や価格はCoinMarketCap等で確認でき、1RSCあたり約0.40ドル前後で推移しています(変動あり)。流動性確保のため、定期的にファンドから流通市場への供給が行われています。
将来の展望
ResearchCoinは、論文プレプリントの普及支援や分野横断的コラボレーション促進、新たな研究資金調達モデル(RSC担保型ローンなど)への展開が期待されています。さらにAIを用いた論文要約自動化やレコメンド機能強化によって、研究者の日常的活動が一層効率化される見込みです。科学の発展と知識共有の拡大に貢献するトークンとして、今後の動向に注目が集まっています。
【参考】
OriginTrail (TRAC)
■研究データのトレーサビリティと共有を推進するDAO
OriginTrail(TRAC)は、サプライチェーンや産業データの透明性・検証性を高めることを目的とした分散型プロトコルです。従来の中央集権的データ管理では不正や情報の断絶が発生しやすい点に着目し、ブロックチェーン技術とグラフ理論を組み合わせた「分散型ナレッジグラフ(Decentralized Knowledge Graph)」を構築。データの発行者から最終消費者まで、一貫した信頼性を保証します。
技術構成
OriginTrailの中核技術である分散型ナレッジグラフ(DKG)は、複数のブロックチェーン(Ethereum、xDai、Polkadotなど)上でデータを分散保存し、相互運用性を持たせる二層構造を採用します。第一層でオフチェーンのグラフ構造としてデータをリンクし、第二層でオンチェーンにハッシュを記録。これにより大容量データのオンチェーン保存コストを抑えつつ、検証可能性を確保します。
主なユースケース
・サプライチェーン追跡:食品や医薬品、部品などの製造から流通までの履歴を記録し、偽造品の排除やリコール時の迅速な原因特定を実現。
・AI向けデータ流通:企業や研究機関が保有する高品質データをトークンインセンティブで共有し、AI学習用データセットの品質保証とトレーサビリティを提供。
・認証・証明書管理:学術論文や資格証明書、環境認証などを改ざんできない形で発行・閲覧できます。
トークノミクス
TRACトークンは最大供給量5億枚で、すべてのトークンが流通可能となっています。内訳はネットワーク参加インセンティブ、開発ファンド、エコシステム補助、チーム・アドバイザー割当など。ユーザーはノード運営やデータ検証、ステーキングによって報酬を得られ、プラットフォームの安定運用と分散化を促進します。また、Uniswapなどの分散型取引所および主要な中央集権型取引所で取引可能です。
将来の展望
OriginTrailは今後、グローバルなサプライチェーンの標準プロトコルとして採用拡大が見込まれます。特に食品安全、医薬品トレーサビリティ、再生可能エネルギー証明など規制対応分野での応用が期待されており、さらにAI時代の信頼できるデータ基盤として重要性が増すでしょう。また、パートナーシップ強化やLayer 2ソリューション導入によるスケーラビリティ向上も進行中です。
【参考】
The Innovation Game(TIG)
■科学技術計算を市場原理で最適化・分散実行することを狙いとした分散型自律組織(DAO)
従来のProof-of-Work(PoW)を単なるマイニング手段に留めず、「オープンで自律的なイノベーション・エンジン」として再定義。研究者や企業が計算タスクを提案し、参加者はTIGトークンをステークしてリソースを提供、成果に応じた報酬を得る仕組みを実装しています。これにより、AIトレーニングや分子動力学、組合せ最適化など多様なワークロードを同時平行的に処理可能とし、従来の集中型クラウドやスパコン環境にはないコスト効率と協調性を実現しています。
運用フローは大きく三段階に分かれます。第一に、研究者・企業が詳細な計算要件や評価指標を盛り込んだ「プロジェクト提案」をDAOに提出。第二に、参加者は自らの計算ノード性能や稼働時間などを定量化した上でTIGトークンをステークし、スマートコントラクトによりリソースコミットを約束。第三に、計算完了後の結果検証フェーズでは、別途ステークしたレビューアーが精度判定を実施し、最終的に定められたアルゴリズムに従ってトークン報酬が自動配分されます。こうした一連のプロセスにより、公平かつ透明性の高いマーケットメカニズムが回ります。
ガバナンスはトークン保有量に応じたオフチェーン投票を基本とし、提案の承認・資金割当・プロトコル改良などをコミュニティ決定で行います。公式X(旧Twitter)や専用フォーラムでは、提案進捗状況や技術アップデートが随時共有され、リアルタイムな意見交換を促進。これにより、集中管理型組織が抱えがちなブラックボックス化を回避し、多様なステークホルダーが同一テーブルで議論できる場を提供しています。
TIGトークンはERC-20準拠のユーティリティ兼ガバナンストークンで、主な用途はステーキングによる計算リソース提供と投票権付与です。トークンは複数のAMMやCEXで上場され、高い流動性を確保。市場価格は実需に連動しやすい設計で、参加者は報酬獲得だけでなく、トークン価値の成長も期待できます。
今後は分散学習フレームワークとの連携強化やマルチチェーン対応による相互運用性向上、企業スポンサーシップを拡大し、グローバル規模での計算ネットワーク構築を目指します。一方で、結果検証の正確性担保やガバナンスの過度集中リスクなど、技術的・組織的課題も残っており、これらの解決がDAOとしての持続的成長に重要な鍵を握ります。
【参考】
AxonDAO(アクソンDAO)
■分散型ガバナンスを通じてブロックチェーンエコシステムの持続的発展を目指す
AxonDAO(アクソンDAO)は、分散型ガバナンスを通じてブロックチェーンエコシステムの持続的発展を目指す組織で、そのガバナンストークンがAXGTです。AXGTはコミュニティが提案・投票・資金配分を行う際の投票権付与とインセンティブ付与を両立させる仕組みを核に設計されています。総供給量は10億枚に固定され、初期配分では開発チームや早期支援者向けに割り当てた後、コミュニティプールと育成報奨に大部分を充当。これにより、初期のエコシステム構築と長期的な参加動機の両立を図っています。
AXGTはERC-20互換トークンとして発行され、主なユーティリティは以下の三点です。第一に、DAO提案の賛否を決する投票権。保有量に応じたウェイトが付与され、重大案件ほど大口保有者の賛同が求められます。第二に、ステーキングプールへの預託機能。一定期間ロックすることで追加報酬が得られ、ネットワーク運営やセキュリティに貢献したユーザーにインセンティブが還元されます。第三に、パートナーdAppでの手数料割引やガバナンスイベント参加権など、エコシステム全体での付加価値サービスへのアクセス権です。
ガバナンスプロセスはオンチェーン投票とオフチェーン議論を組み合わせたハイブリッド型。提案はGitHubや専用フォーラムでドラフトが共有され、一定期間のディスカッションを経て正式案としてスナップショット投票が実施されます。投票終了後はスマートコントラクトが自動的に実行スケジュールを立て、資金移転やパラメータ調整をオンチェーンで反映。これにより透明性を担保しつつ、コミュニティの意見形成を円滑に進めています。
エコシステム面では、AxonDAOが提携した分散型取引所(DEX)やレンディングプラットフォームにAXGTをロックすることで、流動性マイニングや収穫(Yield Farming)への参加権が提供されます。また、マルチチェーンブリッジを通じた他チェーン展開が計画中で、イーサリアム外のネットワークでも同一トークンが活用可能となる予定です。これにより、DeFi領域でのユースケース拡大とガバナンス参加者の裾野を広げる狙いがあります。
将来的には、AIを用いた投票分析ツールの導入やリアルタイムガバナンスダッシュボードの整備が見込まれています。一方で、投票率が低迷すると影響力が限定的になる点や、大口保有者による支配リスクなど、DAO固有の課題も存在。これらを克服するために、参加インセンティブの最適化や投票閾値の見直しなど、コミュニティ提案による改善が継続的に進められる予定です。
【参考】
容・ヘアケア業界のイノベーションをコミュニティ主導で推進するDAO
従来の大手企業主導型研究開発に対し、HairDAOは美容師、研究者、愛好家が直接提案・評価・資金配分を行い、革新的なヘアケア製品やサービスを共創することを目的としています。
HAIRトークンはERC-20準拠のユーティリティ兼ガバナンストークンで、総供給量は5億枚に固定。初期配分はコミュニティ報奨プール40%、開発チーム15%、パートナーシップ25%、運営準備金20%とし、長期的なエコシステム成長を支える設計です。トークン保有者はガバナンス提案への賛否、プロジェクト助成金の配分、プラットフォームパラメータの変更などに投票できます。
ガバナンスは「提案→ディスカッション→スナップショット投票→実行」というフローを採用。公式フォーラムでアイデアを練り上げた後、一定量以上のHAIRをステークして正式提案とし、投票期間中にクォーラムを満たした賛成多数で実装に移行します。この仕組みにより、透明性と公平性を担保しつつ、スピーディな意思決定を両立しています。
エコシステム上では、ヘアスタイルの3DデジタルNFT化や、カスタムシャンプー開発用のマイクロバイオーム解析キット、店舗予約プラットフォームとの連携など、多彩なプロジェクトが立ち上がっています。NFTホルダーは限定レシピや試作品の先行購入権を得られ、コミュニティとしての一体感が醸成されます。また、開発者にはスマートコントラクトによる成果報酬が支払われ、優秀な技術・アイデアが公平に評価される仕組みです。
ステーキングプールでは、一定期間HAIRをロックすることで収益分配プールから報酬を獲得できます。これにより、上位保有者だけでなく、少額ホルダーにも安定的なインセンティブが提供され、分散化が促進されます。さらに、分散型取引所(DEX)での流動性提供にも報酬が付与され、トークンエコノミー全体の活性化に寄与します。
今後はAIを活用したパーソナライズドヘアケア提案エンジンの導入や、リアル店舗とのオンチェーン連携強化、マルチチェーン対応によってグローバルコミュニティを拡大する計画です。一方で、各国の化粧品規制や知的財産権管理の複雑さ、投票参加率の向上といった課題も残しており、これらを解決しつつ持続的成長を実現することがHairDAOの喫緊のテーマとなっています。
【参考】
Alchemist AI (ALCH)
■AI×科学研究の分散運営を試みるDAO
Alchemist AIは、自然言語のプロンプトやドラッグ&ドロップ操作によって、誰でもノーコードでAIアプリケーションを設計・開発できる開発プラットフォームです。プラットフォームの核となるのは、ユーザーが思い描いたアイデアを“生きたアプリ”へと変換するビジョンで、直感的なUIと高度なAIエンジンを組み合わせることで、非エンジニアでも複雑なシステムを構築できます。
主な機能としては、モジュール型ワークフローエディタによるフロー構築、オープンAIや自社開発モデルなど複数の大規模言語モデル(LLM)の統合、API連携による外部サービス接続、リアルタイムプレビュー機能などが挙げられます。これにより、ユーザーはドラッグ&ドロップでノードを接続するだけで、チャットボット、データ解析パイプライン、カスタムUIを持つアプリなどを迅速にプロトタイピングできます。
技術基盤にはサーバーレスアーキテクチャとクラウドネイティブ技術を採用し、マルチモーダル(テキスト、画像、音声)処理に対応。内部では軽量化されたエージェントオーケストレーションが動作し、高速低遅延での処理を実現しています。バージョン管理やコラボレーション機能も備え、チーム開発やプロジェクトの共同運用をサポートします。
プラットフォームはERC-20標準に準拠したガバナンストークン「$ALCH」を発行しており、総供給量は1,000,000,000枚(例)です。トークンはガバナンス投票、プラットフォーム手数料の支払い、開発奨励金やコミュニティ報酬として使用され、流動性プールには全体の約85%が割り当てられています。また、チーム・投資家向けのベスティングスケジュールも設定されており、持続的なエコシステム運営を目指しています。
マーケット面では、CoinMarketCap上でALCHは1枚あたり約0.14USD、24時間取引量は約1,400万USD前後で推移しており(2025年7月時点)、市場参加者からの注目度も高まっています。時価総額ランキングでは上位200位以内に位置付けられ、多くの主要取引所に上場している点も特徴です。
ユースケースは多岐にわたり、社内向けの業務自動化ツール、顧客対応チャットボット、SNSデータのリアルタイム分析ダッシュボードなど、業界や用途を問わず柔軟にカスタマイズ可能です。特に高速プロトタイピングが可能な点から、アイデア検証やMVP(最小実用プロダクト)開発に最適と評価されています。
コミュニティガバナンスはDAO形式で運営され、提案や投票を通じてアップデートの優先度決定や新機能追加が行われます。さらに、プラグイン開発者向けにSDKやAPIドキュメントが公開されており、サードパーティ製の拡張機能エコシステムも形成されています。コミュニティ貢献者にはトークン報酬が付与される仕組みです。
今後は、オンチェーンAIエージェントとしてWeb3/DeFi領域の自動化や、IoTデバイスとの連携、さらにはマルチチェーン対応の拡大などが計画されています。これにより、中央集権的なクラウドサービスから脱却した、より分散化・自律化されたAIインフラの実現が期待されています。
【参考】
Antidote DAO
■ユーザーコミュニティが薬剤再利用(drug repurposing)の候補探索を行い、成果に応じてトークン報酬を共有するプラットフォームDAO
AntidoteDAO(アンチドートDAO)は、ブロックチェーン技術を活用してがん研究への資金提供を分散型かつ透明に行うことを目的に、2021年末にNiko Katsuyoshi氏によって設立されたDAO(分散型自律組織)です。従来の寄付や助成金では時間や手続きの制約で研究資金が滞りがちでしたが、AntidoteDAOはスマートコントラクトを介して資金の流れをオンチェーンで公開し、誰もがリアルタイムで運用状況を確認できる仕組みを採用しています。これにより、研究機関や投資家、一般コミュニティが同時に透明性を担保しながらプロジェクトに参加できます。
ミッションは「がん研究への直接支援」と「助成金配分の民主化」。資金は主にトークンセールやNFT販売で調達し、集まった暗号資産は提案を起点にDAO参加者による投票を経て研究チームへと配分されます。申請から助成の過程もオンチェーン上で管理されるため、資金の使途や進捗報告は常に可視化され、第三者の監査も容易です。
ガバナンス・トークンはERC-20準拠で、保有量に応じて提案権や投票権が与えられます。さらに、NFT「Life Token」シリーズを発行し、コレクターや支援者には限定特典や将来的なリワードが用意されています。トークンホルダーは研究テーマの優先順位付け、新規パートナーシップの承認など主要な意思決定に関与できる点が特徴です。
技術基盤にはイーサリアム等のパブリックチェーンを採用し、資金移転や投票、報告機能などすべてをスマートコントラクトで自動化。これにより、運営コストや中間マージンの削減が実現され、より多くの資金を研究機関に届けられるよう設計されています。また、将来的にはレイヤー2ソリューション導入によるガス代削減やクロスチェーン対応も検討中です。
これまでにThreeOh DAO、Grifters、Crypto4Cureなど複数のコミュニティや研究支援団体と提携し、初期助成金として数件のがん研究プロジェクトに資金提供を実施しています。DiscordやTelegram上に活発なコミュニティを形成し、定期的にAMA(Ask Me Anything)セッションを開催して透明性を保ちながら新規プロジェクトを募集しています。
今後はがん以外の疾病研究への拡大や、オンチェーンでの研究成果トラッキング機能の実装、さらにはWeb3×医療データ連携によるパーソナライズド医療支援など、多角的な展開を見据えています。社会的課題の解決にDAOモデルを適用する先駆例として、AntidoteDAOの今後の動向に注目が集まっています。
【参考】
GenomeFi
■個人のゲノムデータを匿名かつ安全にブロックチェーン上で管理・共有し、研究者や製薬企業に対して利用権をトークン化して販売できるマーケットプレイスDAO
GenomeFi(ジノムファイ)は、AIベースのWeb3ゲノムDIDプラットフォームで、ユーザーが自身のゲノムデータを自己主権的に管理・共有できるエコシステムを提供します。ブロックチェーン上で分散型ID(DID)を発行し、データの改ざん防止や所有権証明を実現。ゲノム情報をNFT化することで、安全かつ透明なデータ流通を可能にします。
ミッションは「ゲノムビッグデータの民主化」と「DeSci(分散型科学)ムーブメントの推進」。研究機関や製薬企業、個人研究者がオープンかつ公正な市場でデータを取引し、AI解析モデルを活用して新たなバイオインサイトを創出することを目指します。
主な機能には、①ゲノムDIDによる自己主権ID管理、②ゲノムデータNFTマーケットプレイス、③AI解析パイプラインと報酬設計、④ステーキングによるGENOトークン報酬プログラムなどがあり、誰もがデータ提供・解析に参加できます。
プラットフォームの基軸通貨であるGENOトークン(ERC-20)は、データ提供者へのインセンティブ、マーケット手数料の支払い、ガバナンス投票権の付与に使用。トークン保有者は提案提出やプロトコル改善の投票へ参加し、エコシステム運営に関与します。
これまでに複数の研究機関やバイオ企業と提携し、データ共有の実証実験を実施。Web2領域の研究者向けにGUIベースのダッシュボードも用意し、バイオ分野初心者でも直感的に利用できるUXを提供しています。
今後はクロスチェーン対応やレイヤー2ソリューションの導入、メタバースでのバイオデータ活用、さらにパーソナライズド医療支援への応用など、Web3とライフサイエンスを融合させた次世代の研究プラットフォーム拡張を図っています。
【参考】
Cure DAO
■医薬品候補のスクリーニングや臨床データ解析をコミュニティファンディングで支援するDAO
Cure DAO(CureDAO)は、オープンソースとブロックチェーンを活用し、臨床研究の効率化と透明性向上を目指す分散型自律組織(DAO)です。非営利団体、政府機関、企業、そして個人研究者や一般ユーザーが連携し、「食事」「薬剤」「サプリメント」など何百万もの要因が健康に与える影響を解析するプラットフォームを提供します。参加者は匿名でデータを共有しながら、研究開発コミュニティ全体の知見構築に貢献できます。
プラットフォームのコアは、参加者が自身の観察データ(ライフログや生体情報)を安全にアップロードし、AIモデルや統計解析を通じて因果関係の検証実験に活用できるオープンソース環境です。GitHub上に公開されたコードベースにより、誰でも解析アルゴリズムの改良や新規プロトコル提案が可能。データ保護のために匿名化手法を組み合わせることで、プライバシーを担保しつつ研究リソースを共有します。
組織運営はCDAOトークンを軸としたガバナンスシステムによって支えられています。貢献度に応じてトークンが配布され、投票権としてプロジェクト提案や資金配分の意思決定に使用。トークンの取得方法は、データ提供、コード開発、論文執筆、資金提供など多岐にわたり、エコシステム全体にインセンティブを循環させる仕組みです。
すでにいくつかの自己実験コミュニティが立ち上がっており、特定のサプリメント摂取や食事法に関するリアルタイムデータを相互比較。研究者や医師と共同でプロトコルを検証し、効果的な健康改善策の発見を目指しています。また、非営利団体や大学との提携を通じ、公的研究資金の使途透明化や成果のオープンアクセス化にも取り組んでいます。
今後は、スマートコントラクトによる臨床試験運営の自動化、多様なウェアラブルデバイスとの連携強化、そして規制当局や製薬企業との協調によるバリデーションプロセスの標準化を推進予定。こうした活動を通じて、個人の健康データが医療革新の原動力となる、分散型科学(DeSci)の世界を実現しようとしています。
【参考】
NeuraDAO
■脳科学データのオープンリサーチを支援するDAO
NeuraDAO(ニューロダオ)は、神経科学(Neurotech)分野の研究開発をWeb3技術で加速することを目的とした分散型自律組織(DAO)です。コミュニティメンバーが資金提供、データ共有、解析ツール開発などで貢献し、その対価をガバナンストークンで受け取る仕組みを整えています。研究者や企業、一般ユーザーが協力して、従来の学術出版や投資によらないオープンイノベーションを実現しようとしています。
データマーケットプレイス
NeuraDAO Data Marketplaceは、Ocean Network上に構築された分散型のプラットフォームです。神経イメージング(MRI、EEGなど)の生データや前処理済みデータセット、さらには解析アルゴリズムやモデルをNFTとして売買できます。研究室間のデータ断絶を解消し、必要なデータを柔軟に取得・活用することで研究コストと時間を大幅に削減します。
コミュニティ主導のファンディング
DAOの財務はコミュニティによるクローズドループ型の資金エコシステムで運営され、早期段階のプロジェクトに対してグラント(助成金)を付与します。提案者は研究計画を提出し、トークン保有者がオンライン投票で採択・配分を決定。助成金の使途報告や成果共有もスマートコントラクトで自動トラッキングされ、透明性を確保します。
ガバナンスとインセンティブ
NeuraDAOのガバナンスは、貢献度に応じたトークンとステーキングメカニズムを中心に設計。データ提供、解析コードの寄贈、論文レビュー、コミュニティ運営など、あらゆる貢献に対してトークンが付与され、プロジェクト提案や予算配分の投票権として機能します。トークンは二次流通市場で取引可能なため、早期参加者は価値上昇の恩恵も享受できます。
歴史と背景
NeuraDAOは2021年に設立され、DeSci(分散型科学)のムーブメントを牽引する先駆例の一つです。創設メンバーにはAhnaaf Khan氏らが名を連ね、従来の神経科学研究で課題となっていた「データ孤島」「非効率な資金分配」「透明性の欠如」をWeb3で解決しようと活動を開始しました。
期待される成果
- 研究アクセラレーション:データやツールへの即時アクセスにより、実験設計〜成果発表までの期間短縮
- コラボレーション強化:異分野研究者や産学連携プロジェクトの橋渡し役
NeuraDAOは、Web3とオープンサイエンスを融合させた神経科学研究プラットフォームとして、従来の学術・産業システムを補完・刷新し、次世代の神経テクノロジー発展を支える基盤となることを目指しています。
【参考】
GenomesDAO
■ゲノム解析データを安全にトークン化し、被検者のプライバシーを守りながら研究者とデータ提供者を報酬でつなぐ仕組みを提供するDAO
GenomesDAO(ゲノムズダオ)は、個人が自身の全ゲノム情報を安全に管理・共有しながら、そのデータ提供によって報酬を得られるブロックチェーンベースの分散型自律組織(DAO)です。従来、遺伝情報は医療機関や研究機関に一方的に預けられる形が一般的でしたが、GenomesDAOではユーザー自身が“データオーナー”となり、利用条件を自ら設定できます。
セキュアDNAストレージとプライバシー管理
GenomesDAOはAMD SVS-ES Vaultと呼ばれるハードウェアセキュアモジュール(HSM)を活用し、暗号化したゲノムデータを物理的に隔離された環境に保管します。さらに、ブロックチェーン上に記録されたアクセス許可スマートコントラクトにより、誰がいつどのデータにアクセスしたかを透明かつ改ざん不可能な形で追跡可能です。ユーザーは自分のゲノム情報を匿名化してリサーチ機関や製薬企業に提供し、対価としてDAOトークンを受け取ることができます。
パートナーシップとシーケンシング精度
GenomesDAOは世界的なシーケンシング企業「Nebula Genomics」と提携し、臨床グレードの全ゲノムシーケンスをユーザーに提供しています。通常、全ゲノム解読ではゲノム全体の約100%を対象に解析することで、特定遺伝子の変異や健康リスクを高精度に同定可能です。解析結果はユーザーのダッシュボード上で閲覧でき、任意でDAOコミュニティに共有可能です。
トークンエコノミーとガバナンス
GenomesDAOのネイティブトークン「GENE」は、ユーザーがデータを提供・共有したり、研究プロジェクトに投票参加したりするたびに付与されます。トークンは二次流通市場での取引も可能で、市場価格は1 GENE=0.00008 USD(2025年7月時点)前後で推移しています。価格変動や流動性はCoinGeckoなどのプラットフォームでリアルタイムに確認でき、DAOメンバーは提案作成や資金配分の投票権としてGENEを利用します。
研究支援と医療応用への道
得られたゲノムデータは、希少疾患の病因解明や薬剤応答性予測、新薬開発など多岐にわたるリサーチに活用されます。企業・研究機関はDAOを通じて必要なサンプルを取得し、そのデータ使用料がトークン報酬として還元される仕組みです。これにより、従来の論文成果報酬モデルとは異なる分散型かつ効率的な研究資金循環が実現します。
今後の展望と社会的意義
GenomesDAOは、個人の遺伝情報を自己管理下に置きながら、研究コミュニティと直接連携するプラットフォームとして急速に注目を集めています。将来的には多民族・多地域のゲノムデータ収集を強化し、医療のパーソナライズ化や公衆衛生の向上に寄与することが期待されます。さらに、AI解析ツールやブレインデータとの統合も視野に入り、次世代バイオテクノロジーの基盤インフラとして進化を続けるでしょう。
【参考】
Lab DAO
■オンチェーンでバイオMLモデルや実験プロトコルを共有し、ユーザーが自ら実験を実行できるインフラを提供するDAO
LabDAOは、オープンソースの創薬・ライフサイエンス研究を推進することを目的とした分散型自律組織(DAO)です。研究者やエンジニアがツールや計算リソースを共有し、共同で新薬候補の探索やバイオデータ解析を行えるプラットフォームを提供します。ネイティブトークンを介したガバナンスと資金調達により、従来の中央集権的な研究開発体制のボトルネックを排除し、透明性と迅速性を両立させている点が最大の特徴です。
背景と発足
LabDAOは、創薬エコシステムをオープン化するべく、Web3スタートアップ「MoleculeDAO」からのシード投資を受けて設立されました。ローンチ初期にはMoleculeDAOトークンからの価値移転を想定したトークンスワップが計画されており、学術界や患者コミュニティとの連携を重視する設計となっています。コミュニティ主導の提案(プロポーザル)と、保有トークン量に応じた投票によって重要事項を決定するガバナンスモデルを採用しています。
主なサービスと技術基盤
- BioMLライブラリ「PLEX」:生物機械学習モデルを簡単に実行できるAPI群を提供し、研究者は手元のデバイスからでもタンパク質設計や分子生成を行えます。
- 計算環境:クラウド上でデータ解析パイプラインを構築可能。実験結果やプロトコルはすべてオープンソースで公開され、GitHubなどで共有されます。
- データ所有権のNFT化:実験データやプロトコルはNFTとして発行され、原本性や知的財産権を担保。研究成果のトラッキングと二次利用管理が自動化されます。
- 最新モデルの統合:AlphaFold2に代表される構造予測モデルや、RFDiffusionを用いたタンパク質バインダー生成モデルなど、最前線のAI技術をプラットフォームに組み込んでいます。
トークンエコノミーとガバナンス
LabDAOトークンは、研究費補助、開発報酬、プラットフォーム運営への投票権付与など多用途に利用されます。ホワイトペーパーではトークン総供給量、ベスティングスケジュール、コミュニティ・基金・開発チームへの分配比率が詳細に定められており、透明性の高い運営が行われています。提案の承認には一定数の賛成投票が必要で、重要度に応じたクォーラムも設定されています。
今後の展望
LabDAOは、学術研究機関や製薬企業とのコラボレーションを強化し、大規模プロジェクトへの応用を目指しています。データとツールのオープン化を推進することで、創薬プロセスのコスト削減とイノベーションの加速を両立。分散型組織ならではの柔軟性を活かし、世界中の研究者が垣根なく協業できるエコシステムの構築を進めています。
【参考】
そのほか、DeSciWorldDAO が管理するリポジトリ「awesome-desci」には、合成生物学、材料科学、環境モデリングなど多様な分野で活動する新興チームが数多く掲載されています。
DeSciWorldDAO▼
リポジトリ主体。DeSci全体の推進とコミュニティ運営を統括。
DeSci Labs▼
DeSciプロジェクトのインキュベーションおよび技術支援チーム。
→ https://github.com/DeSciWorldDAO/awesome-desci#desci-labs ,
Atomsorg 推進チーム▼
オープンサイエンス実現に向けたプラットフォーム開発・普及チーム
Planck チーム▼
分散型査読と研究アクセラレーションを目的としたチーム
Flashpub.io チーム▼
研究成果の迅速公開とコミュニティ評価を支援するチーム
Agora Labs 推進チーム▼
研究資金調達とガバナンスのブロックチェーン実装を手掛けるチーム
Longevity Review チーム▼
ライフサイエンス分野の査読・評価システム刷新を行うチーム
→ https://github.com/DeSciWorldDAO/awesome-desci#longevity-review
Desci.community 運営チーム▼
DeSci関連イベント・ミートアップ企画運営チーム
→ https://github.com/DeSciWorldDAO/awesome-desci#desci-community
DeSci.World チーム▼
DeSciプロジェクトの総合検索・フィルタリングサイト開発チーム
→ https://github.com/DeSciWorldDAO/awesome-desci#desci-world
DeSci Governance Forum チーム▼
分散型科学ガバナンスに関する議論・提案プラットフォーム運営
→ https://github.com/DeSciWorldDAO/awesome-desci#desci-governance-forum
日本ではDeSciに関する議論や知名度はまだまだ乏しいですが、海外では非常に動向の変化が激しく、新規DAOも続々と生まれています。下記のURLを参照すると、海外のDeSci動向や具体的なユースケース、技術スタック、コミュニティ活動まで幅広くキャッチアップできます。まずは自分の興味領域(論文公開、特許フラクショナル化、実験クラウドファンディングなど)に近いプロジェクトからチェックしてみてください。
コミュニティ/アライアンス
- DeSci Alliance(プロジェクト総覧やコミュニティガバナンス) :https://descialliance.org
- DeSci Summit(分散型科学の国際イベント):https://desci-summit.org/
- DeSci Wiki(用語集・事例まとめ):https://wiki.desci.re
- Awesome deSci(DeSci関連プロジェクトのGitHubまとめ):https://github.com/deSci-alliance/awesome-deSci
技術・研究資料/論文
- “Decentralized Science” 論文(arXivプレプリント) :https://arxiv.org/abs/2103.06078
- Decentralized Science Manifesto(公式マニフェスト):https://desci.gitbook.io/decentralized-science-manifesto
- Nature “Could blockchain democratise scientific publishing?”:https://www.nature.com/articles/d41586-021-01303-4
- Wired “How Web3 Could Democratize Science” :https://www.wired.com/story/web3-could-democratize-science
開発リポジトリ/ツール
- DeSci Alliance GitHub(各種SDK・スマートコントラクト):https://github.com/deSci-alliance
- Molecule Protocol GitHub(バイオ特許NFTフレームワーク):https://github.com/moleculecorporation
- ResearchHub GitHub(論文・データフローAPI):https://github.com/ResearchHub
関連プラットフォーム・サービス
- PubPub(オープンアクセス出版プラットフォーム):https://www.pubpub.org
- Figshare(研究データのシェアリング&DOI発行):https://figshare.com
- Protocol Labs(IPFS/Filecoin:研究データの分散ストレージ):https://protocol.ai
イベント・コミュニティフォーラム
- DeSci Forum(議論・QAプラットフォーム):https://forum.desci.alliance
- ResearchHub Discord(研究者コミュニティ):https://discord.gg/researchhub
- VitaDAO Discourse(長寿研究ディスカッション):https://forum.vitadao.com
ニュース・解説メディア
- ConsenSys “DeSci: Decentralizing Science with Web3”:https://consensys.net/blog/decentralized-science/
- CoinDesk “Blockchain Meets Science”:https://www.coindesk.com/tag/decentralized-science