「倉庫×無線 スマート物流勉強会 ~倉庫DXの潮流とローカル5G・無線活用アプリケーションの普及性~」を開催しました

2025年9月26日、Industry Alphaとキャンパスクリエイトは「倉庫×無線 スマート物流勉強会 ~倉庫DXの潮流とローカル5G・無線活用アプリケーションの普及性~」を、東京・中野のフジテックス本社内にあるオープンイノベーション施設WAVEとオンラインのハイブリッドにて開催しました。

倉庫におけるネットワーク構築のポイントとローカル5Gの活用、無線活用アプリケーションに着目

Industry Alphaとキャンパスクリエイトは共同で「倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト」を立ち上げ、倉庫DXの推進支援やサービスベンダー間の連携促進に取り組んでいます。

これまで以下のような、「倉庫DX」をテーマにしたイベントを行ってきました。

  • 2024年12月「倉庫DX実現に向けたスタートアップの革新サービス紹介セミナー」

搬送の自動化・ロボット化に焦点を当て、スタートアップ各社による先進的ソリューションや、実装に向けた具体的なアプローチを事例とともに紹介。

その内容はこちらをご覧ください。

  • 2025年3月「倉庫DX実現に向けた先端技術活用勉強会」

倉庫DXの構成機器「AMR」と、そうした搬送機やロボットの倉庫内有効活用で期待される「ローカル5G」を取り上げ、活用のポイントや技術的展望を紹介。物流業界におけるドローン活用の取り組み紹介および見学ツアーも実施しました。

その内容はこちらをご覧ください。

  • 2025年7月「配送系・倉庫のデータ活用によるスマート物流勉強会」

今後の物流革新を担うCLO(物流統括管理者)の確保・育成における潮流と、物流システム全体を最適化するための戦略的データ活用、「配送系」「倉庫」を含めた物流全体を効率化するための手法・ノウハウを紹介しました。

その内容はこちらをご覧ください。

第4回目となる今回は、倉庫におけるネットワーク構築のポイントとローカル5Gの活用、物流業界における無線活用アプリケーションの広がりについて、提供ベンダーなどが登壇。会場には今回も、物流事業マネジメントや倉庫運営を担当される方々などが、情報収集や交換、新たなビジネス機会創出を求めて、多数参加されました。

プログラムの最初に、主催のキャンパスクリエイトより今回の趣旨を説明しました。

「スマート物流の現場では無線Wi-Fiやローカル5Gといった『無線通信技術』の重要性が増していますが、最適な無線インフラの構築は簡単ではありません。様々な検討事項が必要であり、運用後にトラブルが発生することもあります。自動化機器を導入するほどに無線通信インフラの重要性は高まります。倉庫DXを大きく前進させる可能性を秘めている無線通信技術の一つがローカル5Gです。今後、ローカル5Gの機器価格の低下、RedCap(省電力・低コストの通信規格)対応端末の普及、免許取得手続きの簡素化が進むことで、より活用しやすくなることが期待されています。これにより、自動化ロボット、デジタルツインといった、倉庫内での多様なアプリケーションの普及が加速するでしょう。

本日は、こうした最新事情や取り組みをご登壇者に発表いただきます。本勉強会をぜひ、自社の倉庫DX推進や、スタートアップとの連携などによるオープンイノベーションを考えるきっかけにしていただければと思います」

次いで、以下の講演が行われました。

  • 自動化・省人化における倉庫のネットワーク構築と注意点

物流事業部で倉庫や製造現場の課題解決に取り組み、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)といった自動化・省人化ソリューションを国内外のメーカーから提案しているフジテックスが登壇しました(本イベントを共催、および会場を提供)。

倉庫の自動化・省人化を進める上で不可欠な無線ネットワークの安定稼働には、事前の調査と適切な対策が重要です。実際に倉庫や工場でのネットワークトラブルとして、現場レベルでは「Wi-Fiが繋がらない・遅いエリアの発生」「機器・ロボットの動作停止や誤作動」「移動中の通信途絶」「ケーブルなどの物理的な破損」、経営レベルでは「システム全体の停止による業務ストップ」「サイバー攻撃による情報漏洩や業務停止」「機器増設によるネットワーク負荷の増大とコスト増」「災害時の事業継続計画(BCP)への懸念」がいわれています。そこで同社による、「Wi-Fi不通」や「ロボット停止」に対する解決事例を紹介しました。さらに、推奨される対策として、「電波調査:安定した無線環境を構築するため、事前に専門家による調査を実施。将来的な拡張性や外部電波との干渉も考慮する」「セキュリティ対策:ファイアウォールなどの入口対策だけでなく、マルウェア感染後の被害拡大を防ぐ出口対策も重要」「BCPの策定:停電に備えたUPS(無停電電源装置)の導入や、バックアップ回線の契約、災害に強い機器の設置などの検討」が挙げられました。

  • Celonaが起こす倉庫DXに必要なローカル5Gの破壊的イノベーション

双日グループのIT中核事業会社で、商社系Sierとして顧客のニーズに合わせた複合的なプロダクト・サービスを提供する、双日テックイノベーションが登壇しました(本イベントを共催)。

倉庫DXの鍵と目されるローカル5Gですが、その普及には「端末・アプリの未対応」「Wi-Fiで十分という認識」「コストが割高」「運用の難しさ」が課題となっています。一方で現場では、5G 対応のスマートカメラや自律ロボット、AMR、AGVなど「インダストリアルインテリジェンス」の実運用が進み、物理AI(ヒューマノイドロボット)や倉庫のデジタルツイン化も見据えられています。これらの先進技術を実現するためには「インダストリアルAIスタック」(デバイス、コネクティビティ、エッジクラウドの技術群)が重要です。特に通信を担うコネクティビティ層ではWi-Fiとローカル5Gを適材適所で使い分けることが大切で、広範囲で移動体が多く、厳しい環境の倉庫にはローカル5Gが適しているといえます。そこで、従来のローカル5Gが抱える課題を解決するCelona社のソリューションが紹介されました。LANに統合、マイクロスライシング、運用が簡単、低コストといった特徴があり、スマート倉庫で100台以上の高速走行ロボットの通信を安定化させ、アクセスポイント数を1/10に削減した導入事例などが紹介されました。

  • AMR等ロボットの最適システム運用による 倉庫DXと、ローカル5Gの有効活用に向けて

AI・ロボット・数理アルゴリズムを活用して、工場・倉庫のスマート化ソリューションを開発するスタートアップ、Industry Alphaが登壇しました(本イベントを共催)。

スマート倉庫の運用では無線通信の「遅延」が致命的で、多数の搬送ロボットが交差点などで互いに動けなくなる「デッドロック」、カメラからの映像データ送信が遅れることで、システムが在庫の有無を誤って認識する「誤検知」、エレベーターなどの設備とロボット間の連携が途切れることによる「システム連携の停止」などは避けねばなりません。Wi-Fiでは対応が難しいこれらの問題を解決するのがローカル5Gです。これにより、 アクセスポイントの切り替えがスムーズで、階をまたぐ移動などでも通信が途切れにくかったり、リアルタイムな大容量データ送信で、カメラ映像などの送信も遅延なく行える。また、システム間の同期とジャストインタイムの実現により、設備間の滞留時間をゼロに近づけ、全体の効率を最大化することができたりします。さらに、5Gの機能を簡略化した新規格「RedCap(Reduced Capability)」は低コスト・低消費電力・小型化を実現しており、これまで搭載が難しかった搬送ロボットにも組み込みやすく、スマート化の普及をさらに加速させると期待されています。

  • 物流現場のDXを進めるクラウドカメラ

インターネット経由で映像がクラウドに保存され、PCやスマホからいつでもどこでも現場の映像を確認できる、クラウド録画サービスのシェアNo.1のセーフィーが登壇しました。

物流現場が抱える「労働力不足」「物流需要の増加」「DXの遅れ」といった課題に対し、「クラウドカメラ」は手軽に始められるDXの一手として、業務効率化や品質向上に大きく貢献するものです。セーフィー社のクラウドカメラは、LTE通信機能を内蔵したモデルもあり、Wi-Fi環境がない場所でも電源さえあればすぐに利用可能。取り付けもマグネット式などで簡単に行えるのが特徴です。そこで、同社のクラウドカメラによる物流現場のDX活用事例を多数紹介。たとえば、バース(トラック接車場所)管理の効率化事例では、事務所にいながらバースの状況をリアルタイムで把握でき、ドライバーへの指示出しのために現場と事務所を往復する手間がなくなり、担当者の業務効率が向上しています。また、遠隔からの複数拠点の一元管理事例では、全国に点在する物流センターの状況を本社から一元的に把握でき、現場に行かずともリーダーが各拠点の進捗管理や支持だしを行えるため、働き方改革にもつながりました。ほか、マテハン機器の保守・トラブル対応の迅速化事例、検品・梱包工程の事実確認および品質向上事例、生産性の可視化と改善事例が紹介されました。

 

 

 

  • 物流業界でのスマートグラス活用について

アメリカに本社を置くウェアラブルデバイスメーカーで、法人向けに特化してスマートグラスを提供する、ビュージックスジャパンが登壇しました。

同社のスマートグラスは製造業や物流業界での活用が進んでおり、日本でもまもなく物流現場に特化した新モデル「LX1」を展開する予定です。そこで、物流現場にスマートグラスを導入することで業務改善が期待できるポイントとして「ペーパーレス化とハンズフリー化の実現」「外国人労働者との円滑なコミュニケーション」「作業効率の向上とミスの削減」「教育・研修の効率化」「遠隔からの作業支援」などが紹介されました。たとえば、スマートグラスのカメラでバーコードなどを読み取ることで、ピッキング作業などをハンズフリーで行えたり、AR(拡張現実)によるナビゲーション機能で、作業者が目的の棚まで迷わず移動できたりと、物流現場の生産性向上やミスの削減に貢献します。また、リアルタイム翻訳機能を活用することで外国人労働者も即戦力として活躍でき、人手不足の解消にも役立つでしょう。このようにスマートグラスは「未来のデバイス」ではなく、現実的な課題を解決するための具体的なツールとして期待されます。

最後に、Industry Alphaより閉会あいさつがあり、盛況のなかでイベントは終了しました。その後も会場では、名刺交換や交流を行う様子が見られました。

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