「倉庫DX実現に向けた先端技術勉強会 ~倉庫における「AMR」・「ローカル5G」の有効活用/ドローン物流の未来に向けて~」を開催しました

2025年3月4日、Industry Alpha株式会社と株式会社キャンパスクリエイトは「倉庫DX実現に向けた先端技術活用勉強会 ~倉庫における「AMR」・「ローカル5G」の有効活用/ドローン物流の未来に向けて~」を、2024年9月に竣工した都内最大級の街づくり型物流施設である「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」にて開催しました。

物流2024年問題を契機に物流業界で業務効率化が喫緊の課題となるなか、解決の鍵を握るのは「倉庫DX」です。Industry Alphaとキャンパスクリエイトは共同で「倉庫DXオープンイノベーション推進プロジェクト」を立ち上げ、倉庫DXの推進支援やサービスベンダー間の連携促進に取り組んでいます。

2024年12月に開催した「倉庫DX実現に向けたスタートアップの革新サービス紹介セミナー」では搬送の自動化・ロボット化に焦点を当て、スタートアップ各社による先進的ソリューションや、実装に向けた具体的なアプローチを事例とともに紹介しました。その内容はこちらをご覧ください。

今回は「倉庫DX」をテーマに行うイベントの第2回目として、倉庫DXを検討するうえでの代表的な構成機器である「AMR」と、AMRなどの搬送機やロボットを倉庫内で有効活用するうえで期待されている「ローカル5G」を取り上げ、基本的な事柄から活用のポイント、今後の技術発展の見通しを紹介しました。さらに特別企画として、物流業界において普及が見込まれるドローンをテーマとして取り上げ、取り組み説明と研究開発拠点の見学ツアーも行っています。

当日は、倉庫DXに関心がある物流事業者、倉庫保有者、各種ベンダーなどの方々にご参加いただき、情報交換や新たなビジネス機会の創出に役立ててもらいました。(タイムスケジュールは下記画像のとおり)

最初にキャンパスクリエイトより開会のあいさつがありました。

「倉庫において、さまざまなロボット・搬送機器や先端サービスの普及による省人化・省力化の達成を目指していくなかで、複数の移動体の安定制御やAIの活用などの高度情報処理を行うには無線通信が重要です。そのため、ローカル5Gなどの次世代通信技術の普及も進めていく必要があり、そうした取り組みも今後ご紹介をしていきます。

倉庫DXは物流2024年問題に対応するために必須であり、さらに配送系のDXや2026年に荷主企業に義務付けられる物流統括管理者(CLO)の取り組みにも大いに関連しています。しかしながら多くの重要情報が物流業界で知られていないと感じています。引き続き調査研究を進め、倉庫DX取り組みのポイントを体系的に整理していくとともに、本取り組みが物流事業者様、倉庫保有者様、各種ベンダーの方々の事業活動や業界の発展に役立っていければ幸いです。スタートアップが開発した新規サービスも紹介していきますので、ぜひ着目ください」

プログラムの前半では、以下の講演が行われました。

  • AMRの活用「0から分かるAMRの基本と有効活用のポイント」

AI・ロボット・数理アルゴリズムを活用して、工場・倉庫のスマート化ソリューションを開発するスタートアップ、Industry Alphaが登壇しました(本イベントを共催)。

AMR(Autonomous Mobile Robot)はガイドレスで自律走行する、人と共存できるロボットです。磁気テープ式やQR式で定められた線上をロボットが動くタイプと違い、AMRはLiDAR(ライダー)センサーで周囲の地図を作成して自らの位置を推定するので、現場でテープやQRを張る必要がなく、広いエリアでの使用に向いています。レイアウト変更にもWeb上で対応します。センサーで障害物を検知するので、人の多い現場でも運用しやすいといった特徴があります。有効活用していくには、荷物の受け渡し方法やタイミング、エレベーターや自動扉との連携など、オペレーションをふまえたシステムの全体設計が必要です。そのためIndustry Alphaでは、AMRに対して経路指示や状態管理を行うFMS(Fleet Management System)を開発しています(ここで、FMSがAMSや人、周辺機器を媒介し、連動した自動化を実現した事例を紹介)。各工程が自動化・連動すると、全体の稼動データの取得が可能となります。それを元に稼動を改善し、バーチャル空間でシミュレーションができるような世界観を目指していきます。

  • AMRの活用「あらゆる台車やラックをAMRに変えるホイール型AMR

物流事業部で現場課題の改善や解決、倉庫の移転・立ち上げ支援などを行っているフジテックスが登壇しました(本イベントを共催)。

フジテックスへの物流の自動化・省人化の問合せは2年間で1.5倍と急増しており、なかでも保管・搬送でのニーズが高いです。ソリューションとしてさまざまな機器がありますが、なかでも比較的容易に搬送を自動化できる、自律型ホイールAMRを紹介しました。フジテックスではノルウェー発のスタートアップと戦略的パートナーシップを結び、低コストで自律駆動化を実現する「wheel.me」を展開しています。その運用事例が動画で紹介されました。導入にあたりwi-fi環境は必要ですが、アダプターでいろいろな搬送物に取り付けられ、数日で設置可能です。物流倉庫であれば、長尺ものや大型設備などの工程間搬送、廃段ボールの倉庫内回収、作業現場が複数分かれている箇所への作業帳票を回すといった単純な工程作業の代替に適しています。

  • ローカル5Gの活用「倉庫DXを支える産業無線 ~ローカル5Gとwi-fiの実践的比較」

明治電気工業、オムロンと3社で次世代無線技術を活用したスマートファクトリーの実現を目指す共創プロジェクトを進行中の、ネットワンシステムズが登壇しました。

wi-fiは6GHz帯でプラス700MHzの拡張が総務省で検討され、エンタープライズ向け大手各社もwi-fi7対応製品を発表済みですが、最新のwi-fi7でも「クリーンな6GHz帯は現時点で屋内での使用に限定」「端末が増えるほど、通信効率や安定性が低下」「ローミング時に複数AP間を移動するため通信が断たれる」などの技術的課題があります。ローカル5Gであればクリアできるため、安定性やパフォーマンスを重視する場合はローカル5Gと使い分ける必要があります。今回紹介したのは、ネットワンシステムズのイノベーションセンターである共創空間「netone valley」にて行った取り組みです。ここでは、さまざまなロボットモデルによるデモを通じて、ローカル5Gとwi-fiの特性差異を比較検証した結果を発表しました。

  • ローカル5Gの活用「5G RedCap:IoT時代の新しい通信ソリューション(次世代の接続性を支えるミドルレンジ技術)」

40年以上にわたる通信技術製品出荷台数500万台以上の実績を持つネクスが登壇しました。現状の5Gはオーバースペックであり、端末の消費電流が高くて扱いづらい、端末や基地局が高価といった課題があります。これらを解決するのが、フルスペックの5G機能を必要としないデバイス向けに設計、軽量化された5Gの新たな通信カテゴリである「5G RedCap(Reduced Capabirity)」です。倉庫DXにおいては、自動搬送ロボットの通信や、RFIDタグのリアルタイム読み取り、監視カメラとAI解析などにおいて、その低コスト・省電力・広いカバレッジというメリットにより、倉庫業務の効率化と省人化に貢献すると期待できます。今後、2026年の3G終了後に5G化が加速し、LTE IoTアプリは5G RedCapに移行、2027年にはMVNOの5G SAサービスが見込まれ、5G RedCapが主流になると予測しています。

セミナーの後半では、「ドローン物流の未来に向けて」と題して、三井不動産、日鉄興和不動産、ブルーイノベーションの3社より、当イベントの会場である「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」と併設の「板橋ドローンフィールド」について紹介がありました。

  • 「東京23区内に誕生した都内最大の街づくり型物流施設『MFLP・LOGIFRONT東京板橋』~物流・地域社会・産業創造の拠点を形成」
  • 「東京都内初の物流施設併設型ドローン実証実験の場「板橋ドローンフィールド」

日鉄興和不動産ではビル事業・住宅事業・物流事業に加え、全国の日本製鉄グループの製鉄所エリアを中心に地域再生事業に注力しており、「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」も日本製鉄・東京製造所の跡地を活用しています。板橋区との協議により、水害時等の緊急一時退避場所や板橋区の備蓄倉庫を備えるとともに、日常的にも敷地の10%を広場や緑道として地域に開放しています。また、屋根全面に太陽光発電を設置しており、余剰電力を区内73の小中学校へ供給して板橋区の2050年ゼロカーボンシティ実現に貢献しています。

三井不動産ではロジスティックス事業で76物件の事業を展開しています。「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」は「街づくり型物流施設」の一つの集大成と位置づけており、首都圏物流インフラに好アクセスな立地や、業界トップレベルのスペックなどが特徴です。そして新産業創出としてドローンに着目し、ドローン事業者に対して実験・研究の場を敷地内で「板橋ドローンフィールド」として提供しています。

そこで、日本のドローンビジネスのパイオニアであるブルーイノベーションも長距離/長時間・自動運行に対応する高性能ドローンポートの開発に取り組んでいます。ブルーイノベーションではBlue Earth Platform(BEP)という、独自のデバイス・データ統合プラットフォームを展開するとともに、プラントや送電線の点検・自動巡回点検やドローンポートなどの導入コンサルから運用、人材育成、データ管理・分析まで幅広く提供しています。

最後に、Industry Alphaより閉会あいさつとして、「海外出張でアメリカや中国に行くとロボット化などのレベルの高さに驚きますが、同時に現地企業からは日本の製造業や物流業の技術を賞賛されたりします。今回、皆様の発表を聞いていて、やはり全体像や全体最適が重要だと改めて感じました。工場や倉庫のスマート化は総合格闘技のように、通信もロボットもドローンも関わるものです。本日のように関係者が集まる機会をぜひ活かしてもらい、全体で盛り上げていきましょう」と締めくくられました。

そうして引き続き、数名ごとに分かれて「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」と「板橋ドローンフィールド」の見学ツアーを実施。梁下有効天井高5.5m、床の積載荷重1.5t/㎡を確保した広大なスペースを実現した倉庫や、板橋区災害時配送ステーション、フラッパーゲートが設置されたエントランス、テナントワーカーの休憩やミーティングに使えるLounge、パイロット育成などが行われるドローンのフリー飛行フィールド、屋上テラスでドローンの自動操縦・自動充電を行うドローンポートなどが説明、紹介されました。

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