搬送ロボットが行き交うスマート工場/倉庫群を、コックピットから一元管理する未来を目指す~Industry Alpha株式会社~

AI・ロボティクス・数理最適化を活用したソリューションで工場・倉庫の省人化・省力化を目指し、2022年8月に設立したIndustry Alpha株式会社。「スマート工場・スマート倉庫をデザインし実現する」をミッションとして、多様な自立走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)を展開しています。代表取締役の渡辺琢実さんに、製品/サービスの特徴や強み、5Gを活用することで実現できること、目指す世界観などについて聞きました。


薄型で柔軟に対応できるKagheloと、ものの出し入れが得意なAkatsuki

―まず、御社の事業について教えてください。

渡辺:「世の中のロマンを具現化し、人々の心を動かす」というビジョンでスマート工場・スマート倉庫の実現に取り組んでいます。

最初はAIベンチャーとして、ソフトウェア主体で提案を行おうとしましたが、製造業・物流業ではそもそも搬送ロボット自体が不足していると分かり、今は「Kaghelo(カゲロウ)」という薄型の自動運転ロボットを中心に製造・販売を行っています。

―薄型の自動運転ロボットには、どのような強みがあるのですか?

渡辺:薄さ185mmとさまざまな搬送物に対応可能で、現場に合わせてリフトを調整し、パレットや台車を搬送します。あらかじめ仮想空間上にルートを引いておくので、押されても自分の位置を見失いません。そして薄さに加え、耐荷重も大きいのが他にはない特徴です。さらに充電の持ちが良く、自動運転の精度も高いです。

競合では、ハード主体の会社だと薄さや耐荷重で突出したロボットは作れますが、ソフトの自動運転技術はそれほどでもなかったりします。逆にソフト主体の会社ではハード面が苦手など、双方に優れたものが少ないのが現状で、そこが当社の強みとなっています。

―搬送ロボットの種類は他にもありますか?

渡辺:高さ方向を調整して棚や机から搬送物を取り出したり置いたりできる「Akatsuki(アカツキ)」もあります。

まずはこうした搬送ロボットをきっかけとして、スマート工場やスマート倉庫を作るのが目標です。これらが複数台になったときにアルゴリズムで効率的に稼動させ、最終的にはそのサイトにおける移動の全プロセスを管理するスマートファクトリーを目指しています。扱う搬送物の種類やサイズ、ラインの状況により、どういうタイプの搬送ロボットが必要ないし活躍できるかは異なります。当社はその全体設計からできるのが、ビジネス面での強みといえます。

搬送ロボットの遠隔操作で、世界にオペレーション網が拡げられる

―具体的な取り組み事例を教えてください。

渡辺:大手自動車メーカーと工場のさらなるスマート化・自動化について検証を行っています。また、スマートメーター製造の大崎電気工業様でも1年以上前から導入されており、運用・保守をしています。NTT東日本様とはローカル5G、搬送ロボット、群制御モジュール、検品AIを活用したフレキシブルな生産ラインの構築に取り組んでいます。

そのほかにもいろいろな企業からの引き合いをいただき、商談も複数件進んでいます。

―搬送ロボットを導入する際に、難しいことは何でしょうか?

渡辺:全体を見ながら、オペレーションとどの技術を導入すべきかを描くところが難しさであり、醍醐味です。たとえば、搬送行程にロボットを入れる場合に、A地点からB地点までの搬送のみを自動化しても、それぞれの地点で人間が搬送物を上げ下ろしする必要があれば、全体の効率化にはなりません。その連結をどうするか、今はできなくても将来を見込んだ拡張性を備えて導入できるかで、成果は大きく異なります。そのように、オペレーションを含め、全体観や長期目線を意識して提案を行うようにしています。

また、現場に即したカスタマイズは必須ですが、ビジネスにおいては汎用性を高める必要もあります。お客様で調整しやすい仕様や、ラインナップを取り揃えるなど工夫をして、個社ごとの事情に応えていかねばと考えています。

―このサービスに5Gを活用することで実現できることを教えてください。

渡辺:遠隔操作ですね。やはりハードウェアを扱うので、何かエラーが起きたときには現場に赴き、オペレーションによるものか機械によるものかを判断し復帰作業をせねばなりません。それを遠隔で行えるようになれば、場所を問わず導入しやすくなり、運用保守コストも削減され、結果的にエンドユーザーのコスト低減にもつながります。

その遠隔操作では、画面で現場の動画を見ながらロボットを操作するので、遠隔操作のロボットへの反映と実際の動画に遅延があれば衝突などのトラブルにつながります。それが、ローカル5Gや次世代通信であれば遅延も少なくなり、遠隔操作がより実現しやすくなります。

これが進めば、99%の自動化と1%の遠隔操作による復帰を期待できるため、よりダイナミックに自動化を展開できます。また、海外展開したときの運用保守体制を作る際にも、日本やそれ以外から遠隔操作でき、24時間監視体制が作れるでしょう。SF的ですが、コックピットの大画面で各地の搬送ロボットを管理すると考えるとワクワクしますね。

低遅延・大容量の5Gで、大量に行き交う搬送ロボットを同時に制御

―低遅延以外には、5Gのどのような点が有効なのでしょうか。

渡辺:大量のデータを互いに干渉せずに受信できるので、広いエリアで同時に大量の搬送ロボットやその他の機器を制御できるのです。そうすれば、工場での運用をもっと自由度高く組み立てることができるでしょう。現在でもWi-Fiにて複数台のロボットを同時に運用していますが、Wi-Fiの制約内での設計をしています。前後行程のアームロボやコンベアといった他の機器と連携するときに、5Gの低遅延かつ大容量・多接続の通信環境を用いると無限大の可能性があります。

―将来的に目指す世界観はどのようなものですか?

渡辺:現在のアルゴリズムでは、搬送ロボットを複数台稼動させるところまでですが、これを、生産計画や出荷計画の自動化にまで発展させたいです。そうして工場倉庫の入口から出口までを全てカバーしたOSのようなものを作りたいですね。

また、「Kaghelo」「Akatsuki」という製品名は、万葉集から付けたものです。ロボットはアルファベットと数字を組み合わせた名称が多いものですが、もう少し愛着が持てるよう、また、日本発のプロダクトとして世界に送り出したいという思いで命名しました。

―この技術に興味をお持ちの人へアドバイスをお願いします。

渡辺:工場や倉庫で人材不足が深刻化する中、AIやロボットによる自動化に取り組むべきと考えており、局所的な自動化にとどまらず、拡張性を考慮した全体設計に基づき自動化を実現したいという関係者の方がいれば、ぜひお話の機会をください。技術的な観点やこれまでのノウハウと皆様の現場のご知見を掛け合わせて良いご提案ができるかもしれません。一緒に未来を創っていきましょう。

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