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ジェネレーティブデザインによる軽量・頑健な最適設計を実現した金属製筋電義手ハンドの開発


ジェネレーティブデザインによる軽量・頑健な最適設計を実現した金属製筋電義手ハンドの開発

組織名

電気通信大学 東郷 俊太

技術分野

ITものづくり医工連携/ライフサイエンス

ジェネレーティブデザインという最適化設計ツールを使用し、軽量で頑健な金属製筋電義手ハンドの開発を行いました。その結果、筋電義手に必要な頑健さを備えつつ最軽量化を実現できました。更に4指基部の関節に握り方向のみに可動部を持つトーションバネを導入した事で、不慮の外力を受け流しつつも、必要なピンチ力(物をつかむ力)を確保しました。 本研究成果の活用を希望する方のお問合せをお待ちしております。

この技術に関するお問い合わせ

詳細

【簡略図】

 

【背景】

筋電義手は上肢欠損の方の生活を支援するため、筋肉の収縮時に発生する電位差を読み取りその信号を元に手を動かすことができる義手です。本研究室では、小型・軽量で日常生活に必要な動作が可能で、かつ安価な筋電義手を開発しています。研究室が開発した筋電義手は、ロボットハンド、前腕用ソケット、上腕固定部の3つの部分で成り立っていますが、研究室で製作した従来の筋電義手のロボットハンド部分は3Dプリンターによって製造された樹脂製で、日常生活で使用する際の頑健さに課題が残っていました。

この課題を解決するため、福井県鯖江市及び眼鏡メーカーであるシャルマン社との共同研究を行い、ジェネレーティブデザインと言う最適化設計ツールを採用し、軽量化とハンドに必要な強度を両立する金属製の筋電義手ハンドを開発しました。更に、シャルマン社の眼鏡フレームの製造技術を生かし、関節部分の改良を行い、バネ構造を用いる事でハンドに必要なピンチ力(物をつかむ力)を得ることに成功しました。

本技術に興味のある方、また、活用・連携に意欲がある企業を歓迎いたします。

 

【技術内容】

【筋電義手の概要】

本システムの外観図は以下の通りです。
・ロボットハンド、前腕用ソケット、上腕固定部の3種に分かれています。
・ロボットハンドにはモータが内臓されています。
・前腕用ソケットにはコントローラ、電池、on/off信号が付いています。
・上腕固定部には表面筋電図を読み取るためのインタフェースが付いています。
・重さも数百グラム程度であり、コンパクトです。

ユーザーが「このように手を動作させたい」という意思の指示と、計測ユニットからの筋電信号をコントローラへ送ります。コントローラで筋電信号と意思との関係を学習したら,筋電信号より動作の意思を推定し,ロボットハンド内のモータへ指示を送り、手の動作を実現します。

【ハンド部分の改良】

筋電義手を日常生活で自由に使用することを想定すると、どのような動きをしても、ハンドが破損することなく、また軽量で使用する際の疲労がないものが求められます。

そのため、筋電義手のロボットハンド部分について、ジェネレーティブデザインによって必要な強度と軽量化を両立する最適設計を行いました。ジェネレーティブデザインは荷重ケースや様々な要件を元に自動的にパーツ形状を設計します。このジェネレーティブデザインにより複数のパラメータによるシミュレーションを行い、デザインの最適化を行いました。

その結果、筋電義手に必要な強度を備え、かつ軽量化したハンド部分の製作に成功しました。

更に、鯖江市の眼鏡メーカーシャルマン社の眼鏡フレーム製造技術を応用し、ハンドに必要なピンチ力(物をつかむ力)を得るための構造を工夫しました。ハンド部分の関節に金属のばね性を活かし、かつ構造を工夫する事で外部からの力を逃す事が出来るデザインの検討も行いました。関節部分に使用するバネの検証を行い、トーションバネ(コイルばねの一種)を以下の理由から採用する事にしました。

➀コイル破損への安心感がある

②異なるバネ圧への交換も容易である

③見た目上の違和感が無い

④丁番構造にしたので指の横方向へのブレを抑えられる

ハンドの重量とピンチ力(物をつかむ力)の違い

 

成人用義手のハンド部分の重量としては370g以下が理想的とされていますが、新しいハンドはその重量を十分に下回ることができ、また、UEC e-Hand(従来のハンド)と比較して約2倍のピンチ力(物をつかむ力)を得ることができました。

 

【技術・ノウハウの強み(新規性、優位性、有用性)】

(1)日常生活動作(Activities of Living : ADL)ができる

開発した筋電義手は、人が必要とする最低限の日常生活動作(Activities of Living : ADL) を行うことができます。

ヒトの手は手首の動作を含めて25運動自由度を持っており、取り得る姿勢も多種多様です。これらを電動義手で実現するにはヒトの手と同様な自由度が必要になります。そのため、電動義手についての研究の多くは、多自由度化することでより複雑な動きを実現してヒトの手の動きや機能に近づけることを目的としています。しかし、多自由度の制御が可能な電動義手を用いた筋電義手は実用化には至っていません。その主な要因はサイズおよび重量です。自由度に応じた数のアクチュエータが必要になるので、電動義手の多重度化は重量とトレードオフの関係にあります。したがって、多自由度の義手は低自由度のものと比べて、片手で支えるには困難なほど大きくかつ重くなってしまいます。

本筋電義手は、日常生活動作を行う上で必要な機能を満たしながら、かつ、小型性・軽量性を両立しています。

 

(2)頑健な金属製、且つ小型・最軽量

本筋電義手は、頑健な金属製であっても、ジェネレーティブデザインによる最適化設計により小型性・軽量性を実現しています。

 

【連携企業のイメージ】

本筋電義手に興味のある方、また、介護・リハビリ用機器メーカ等、本装置の事業化・普及に意欲がある企業からのお問い合わせを歓迎します。

 

【技術・ノウハウの活用シーン(イメージ)】

1)上肢欠損の方が本筋電義手を装着することで、日々の生活において必要な手の動作を実現できることを目指しています。人が必要とする最低限の日常生活動作(Activities of Living : ADL)を行うには、(a)握力把持、(b)精密把持、(c)側面把持、(d)鉤握り、(e)三面把持、(f)指差し、(g)ジェスチャーが必要とされています。

更に、ADLのうち、握力把持が35%、精密把持が30%、側面把持が20%を占めており、これら3種類の把持姿勢でADLの85%が可能となります。

必要な手の動作機能を最低限の自由度で満たしている電動義手はそれだけ軽量になり、日常生活で使用するには適しています。

2)手・腕が麻痺している方がリハビリ用途に活用可能です。

通常、腕の麻痺が起こると手を握り込んだ状態で筋肉が固まってしまいます。

 

【技術・ノウハウの活用の流れ】

本技術の活用にご興味があればお気軽にお問合せください。

 

【専門用語の解説】

筋電義手

義手の一種です。筋肉は脳からの命令として発せられる微弱な電気的刺激を認識した神経から分泌されるアセチルコリンを受容体が受け止めることによって収縮します。この時発生する電位は微弱であるものの、体表面でも検知することができます。これを「表面筋電位」と言い、筋電義手を動かすスイッチとなります。

操作法はユーザーによって異なりますが、切断してしまった部分を動かす筋をスイッチとする場合が多く、例えば、手首を切断した場合、手首の掌屈(掌側へ手首を曲げること)する時に発生する表面筋電位を「ものを掴む」、背屈(手の甲側へ手首を曲げること)する時に発生する表面筋電位を「ものを離す」といったように、義手の動きと表面電位の発生方法に一定のルールを設けることで操作を行います。

このように表面電位を感知し、その出力が一定の閾値を超えることでスイッチをオン・オフさせて動作されるのが筋電義手です。内蔵されたモータにより、ものを掴む、離す等の動作(把持)ができ、擬似的に本人の意思で動く手を再現します。

 

ジェネレーティブデザイン

素材の種類・重量・コスト等のデザインの制約となる条件を設定して、コンピューターが基本となるデザインをもとに、短時間でさまざまなデザインを生成する方法です。人間が無意識のうちにとらわれる伝統・習慣と関わりのない、斬新なデザインが得られることが特徴です。

 

ピンチ力

指先で物をつかむ力のこと。例えば、人が手で蛇口をひねったり、がま口を開け

るときなどに必要な力です。

 

日常生活動作(Activities of Living : ADL)

人が日常生活を送るために最低限必要な日常的な動作のことを指します。

具体的には、起居、移乗、移動、食事、更衣、排泄、入浴、整容の動作のことです。

介護の現場などで、高齢者や障害者の方の身体能力や日常生活レベルを図るための

指標として用いられています。

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