東京薬科大学 薬学部 助教/兼 電気通信大学 大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻 牧研究室 共同研究員

齊藤 亮平

  • ライフサイエンス
  • 機能性材料

ホタル生物発光を応用した生体内可視化技術

近年、がん研究や脳科学、感染症などの基礎医学研究の領域において、生物発光を使ったイメージング技術が広く利用されるようになってきた。これまでも蛍光物質を用いた光イメージングは行われており、ライフサイエンス研究には必要不可欠な測定技術であった。生物発光イメージングは蛍光イメージングとは異なり、励起光を必要としないため、自家蛍光由来のバックグラウンドを抑えられ、観察対象物を容易に観察でき、特にマウスを生きたまま観察したいときに優良とされている。

自然界に存在する発光生物の中でも、イメージング技術に最も応用されているのが、ホタルである。ホタル生物発光反応は、2段階の基質‒酵素反応である。まず発光基質ルシフェリン(1)が発光酵素ルシフェラーゼの触媒作用によりAMP化され、AMP化体 (2)が生成する。その後、再度ルシフェラーゼの触媒作用により、AMP化体 (2)が酸化されて励起状態のオキシルシフェリン(3)が生成し、これが基底状態に遷移するときに黄緑色(ca. 560 nm)の発光を示す。

このホタル生物発光反応は基質や酵素を改良することで、天然の黄緑色だけでなく、生体組織を透過しやすい赤色から近赤外光に発光波長を変化させることができる。本研究グループでは、発光基質ルシフェリン(1) の構造類縁体を数多く合成することで、生体組織に対する透過性の高い赤色や近赤外光の発光基質の開発に成功し、高感度イメージングを実現してきた。また、その中でも有用な発光基質TokeOni (AkaLumine-HCl), seMpai は富士フィルム和光純薬工業、メルクグループ シグマアルドリッチ社から上市されている。

今回は、これらの発光基質開発の経緯と実際のイメージング例について、最新情報を交え、発表する。