早稲田大学 先進理工学部 応用化学科 専任講師

須賀 健雄

  • ものづくり
  • 機能性材料

相分離プロセスから見たUV硬化の新展開

UV硬化反応の代表例である光ラジカル重合は、簡便かつ極めて迅速(数秒以下で完結)で、印刷インキ、塗料、接着剤、フォトレジストなど多くの産業分野で汎用され、成熟した技術と見られている。また3Dプリンターなど光造形技術でも硬化速度の向上が求められている。

一方で高い重合基濃度、架橋による硬化収縮をはじめ、ゲル効果、酸素阻害などに起因して、硬化物内部の架橋網目構造の不均一性や顔料・ナノ粒子、ポリマーなど各種添加剤の表面偏析や凝集、相分離など複雑な内部構造を与える。

所望の材料特性、機能を得るには、塗工液の組成やUV硬化条件など熟練した技術とノウハウの蓄積に依存しているのが産業界の実情と言える。

高分子合成分野では、ここ数年で、光レドックス触媒やアミン、ホスフィンなどの有機触媒の存在下、重合鎖末端の共有結合(C-X結合, Xは臭素やヨウ素など)を「熱」ではなく「光」照射で可逆的に活性化することで、精密重合の進行/停止(On/Off)を繰り返し任意に制御できる時代を迎えている(光精密ラジカル重合)。

本研究室では、迅速なUV硬化反応に「光駆動型」の精密ラジカル重合機構を組み込み、敢えて遅く、つまり重合過程の時間軸を制御することで、硬化膜内部のミクロ相分離構造、特に「共連続ナノ構造」を硬化と同時に形成する手法として見出した。

多官能アクリレートなどを母材とし、機能付与のための添加ポリマーと光開始剤をそれぞれ加える従来技術(汎用UV硬化)と対比しながら、添加ポリマーと光開始剤を結合させた「光解離性高分子ドーマント」を用いる本技術(精密UV硬化)の優位性を、成形・相分離形成プロセスの視点から紹介する。

 

[本技術の特徴]

・透明性を維持しながら、塗膜硬度と曲げ特性、親疎水性(防汚特性)、光学特性(低反射など)をはじめ多様なニーズを満たす各種ポリマーコーティングの形成法。

・UV硬化と同時に、構成成分が互いに3次元的に絡み合う連続相を形成し、配向制御の必要もないユニークな共連続ナノ構造を与える。ナノ多孔体、セパレーター、触媒担体、3Dフォトニック結晶などへの応用も期待される。

・独自手法で調製した光解離性高分子ドーマントは室温大気下で安定に貯蔵可能。

・通常のUV硬化プロセスがそのまま適用でき、面内のパターニングに加え、深さ方向も構造制御できる。