東京電機大学 理工学研究科/理工学部 生命理工学専攻 教授

椎葉 究

  • ライフサイエンス
  • 環境/アグリ

環境と健康に資する竹バイオリファイナリー

▼はじめに
孟宗竹はイネ科であり国内外でその繁殖力の強さと地球温暖化の影響もあり、バイオマス量を増大させています。
孟宗竹は、地球上でも最も成長速度の高い植物であり竹の繁殖分布は年々拡大ししています。
このように国内に膨大なバイオマス資源でありますが、その利用法については。世界中で研究開発されているものの、竹の焼却処理による竹炭の脱臭剤への利用などありますが限定的です。ただ、孟宗竹による温室効果ガスの二酸化炭素の吸収力は非常に高いため、孟宗竹をバイオマス資源として広く利用することが必要と考え、その利用法について研究開発してきました。

 

▼研究紹介

東京電機大学理工学部生命理工学系食品バイオ工学研究室では、世界で初めて竹から特別な薬品や溶媒を用いることなくソフトな方法(低コスト)で、様々な機能性を持つ成分の分離・調製する技術開発とその機能性のエビデンスデータを得ました。

今回、これらの大学発の研究技術を発展させて、健康食品素材、化粧品成分、ペット用飼料などへ製品化(実用化)し、日常生活用品として利用することで再生可能資源によるバイオマス資源循環型社会のモデルを構築することを目的としています。

1.竹からの成分抽出と調製
このように国内に存在する未利用バイオマス資源として大量に存在し里山に存在するため比較的運搬しやすく原料として利用しやすいメリットもあるにも拘らず、工業的な利用法が開発されなかったのは、竹に含まれている硬質の植物繊維や分解されにくいリグニン成分の性状や構造があり、その物理学、化学、生物学的処理方法とその利用法の研究は行われてきたが工業的実用化までは至っていません。そのような中で、減圧マイクロ波処理法は、植物等に含まれる揮発性物質を短時間で極めて効率的に抽出することが可能であり、抽出後の残渣は細胞壁が一部破壊された状態になることが特徴です。

2.竹からの調製成分の機能と利用
2-1)減圧マイクロ波処理抽出水の成分(BMW)の機能と利用
減圧マイクロ波処理成分(BMW)は、特殊な構造したテルペノイド系成分やポリフェノール類を含んでおり、これらの成分は、皮膚の抗菌性を高める成分や、多くの中高年が悩む乾燥肌と光老化に対して皮膚の乾燥防止作用を有しており、化粧品や抗菌、抗ウィルス性を利用した日常生活用品への利用が考えられます。

2-2)蒸圧・酵素処理抽出竹エキス(BOS)の機能と利用
減圧マイクロ波処理後の残渣から蒸圧処理で抽出竹エキス(BOS)には、ヒドロキシ桂皮酸類やその配糖体(竹オリゴ糖)を含有しており、抗酸化物質による老化防止作用をもつ成分、コレステロール上昇抑制効果など脂質改善や免疫賦活化活性を持つ成分、神経系・免疫系の不調や成人病に対して効果をもつ成分を有しているデータが得られています。これらは、化粧品や健康食品への利用などが考えられます。

3.想定される用途
・BMWの抗菌・抗ウィルス作用、抗酸化、老化防止作用、UVカット作用による化粧品原料としての利用(特許申請中)
・BOSは、強い抗酸化性、低級脂肪酸を産生する腸内細菌の活性化作用により脂質代謝の改善や免疫作用の改善作用による健康食品分野への利用(特許出願中)
・竹細胞組織成分が乳酸菌の生育を促進する作用が明らかとなり、ペットの健康促進機能をもつ飼料への利用

4.実用化に向けた課題
・実用化体制の整備
・効果試験や安全性試験の実施
・実用化に向けた、品質管理・サプライチェーン・製造拠点の体制の整備
そのための研究資金、開発資金の調達