物質・材料研究機構 機能性材料研究拠点 光機能分野 プラズモニクスグループ 主幹研究員

岩長 祐伸

  • ライフサイエンス
  • 機能性材料

高感度なバイオ分子検出メタ表面センサー

▼ 背景
・予防医学に役立つ定量的な高感度かつ短時間でのバイオ分子検出センサーへの世界的な需要
・感染症にも応用可能な高精度かつ高スループットな検査法への喫緊の需要
・検出データ運用型のセンサーシステムへの需要

▼ 狙い
・タンパク質分子から核酸分子までの広範な対象を検出可能なセンサーシステムの実現
・高精度な抗原・抗体検出の実証(メタ表面センサーの性能実証1)
・高精度なDNA/RNA検出の実証(メタ表面センサーの性能実証2)

▼ 概要
1.メタ表面センサーシステム
(A) 全誘電体型のメタ表面センサーチップの外観写真と拡大像(左上).
(B) 蛍光増強性能の実証(緑線).メタ表面上に分散した蛍光分子R590からの蛍光測定を行った.
増強効果のないシリコン平坦基板と比較して、約1000倍の蛍光強度増強効果がある.黒破線はメタ 表面の反射率スペクトル.右軸に対してプロットしている.M. Iwanaga, Appl. Sci. (2018).
(C) PDMSチップとメタ表面基板からなるメタ表面センサーおよび蛍光測定配置
(D) マイクロ流路系の配置図

2.抗原・抗体検出の例
診断用癌マーカー分子CEA検出:診断基準値より十分に高精度
典型的なIgG抗体検出:
(E) 5 pg/ml の極低濃度においても検出に成功.
(F) 血清中の標的検出の特異性も良好

3.DNA/RNA検出の例
DNA検出に関する原理実証実験を行った.高感度検出に成功.
モデルケースとして、一本鎖の標的DNAに蛍光ラベル[HEX]を付け、プローブDNAは相補的なDNA配列を持ち、メタ表面に固定するためにビオチン末端修飾を行った.

(左)固定模式図。(右)5 fmol/mlにおける蛍光検出像。

▼ 応用分野と今後の展開
・高精度な分子検査・診断への応用
・POCT検査機器に向けた要素の改良と小型装置構築
・検出したビッグデータの解析やデータサービスの創出

▼ 実用化へ向けた課題
・各ターゲット分子に対する検出プロトコルの最適化
・分子操作、蛍光測定の自動化
・データ運用のソフト面の整備