琉球大学 工学部 工学科機械工学コース 教授

屋我 実

  • その他
  • 環境/アグリ

FPGAと圧電素子による流体制御

〇はじめに
近年,環境問題が議論される中でいわゆる音に関連する環境も重要視されている.特に筆者の専門である流体に起因する音や騒音は極めて複雑な現象である.

例えば高圧プラント等で発生する騒音の特徴ある流れとして,内部を流れるガスがより速くなり音速に近づくと同時にバルブ等で断面積が変化すると通常の流れ場には現れない衝撃波が発生する場合ある.

この衝撃波は物理量の不連続な変化を伴うため,圧力変動が大きく機器の振動や大きな騒音の原因となる.スケールは違うが超音速で飛行する飛行機が頭上を通過する瞬間に発生するソニックブームも衝撃波が原因である.したがって通常このような衝撃波はできるだけ避けるために機器の設計がなされるが,本研究室ではこの衝撃波やそれに至る高速流れを積極的に利用することを目的として,様々装置を開発している.

本発表では特に上記流体に起因する音の原因となる流れの圧力変動に着目し,これを後述空気力学特有の性質を利用して制御するための装置を紹介する.

 

〇実験装置と方法
実験は高圧乾燥空気をいったん貯気槽にためて,空気の流れをよどみ点状態にしたとバルブを介して測定部に導きノズルを通過させた後に大気に噴出する.ノズルはいわゆるラバルノズルとなっているため,そのスロートにおいてタイトルにもなっているピエゾ素子が設置されており,それを電圧駆動することでノズル下流の圧力変動を制御する.概略図を図1に示す.図にはピエゾ素子の位置とそれを制御するためのFPGAの関係も示している.高圧空気の流れがいったん流路内面積が狭くなった後に広がるとその広がり部分に衝撃波が発生する.その位置にセンサーを設置し圧力変動をピックアップすることで,制御用信号として取り出しFPGAに取り込む.それをリアルタイムでデジタル処理した後にピエゾ駆動用アンプの入力用信号として出力する.実験条件は高圧空気の圧力poを変化させ,複数の位置において圧力センサーで圧力変動を測定することで圧力比と測定位置の関係を調べた.

図1:概略図

 

〇実験結果
図2高圧空気がノズルによって加速された後,衝撃波が発生している様子の一例を示す.矢印で示された2つの位置がスロートと衝撃波である.このように大気圧の1.4倍の圧力を印可させるだけで衝撃波を発生させることができ,その圧力変化を信号として取り出すことができる.次にその流れの状態で測定した圧力変動の時間的は変化とその周波数解析の結果を図3に示す.図には参考のため圧力センサーで測定した値と,上記FPGAでデジタル処理した信号を比較のために示している.図より圧力センサーからの信号を直接表示したものに比べ,FPGAによってデジタルフィルターを介して取り込み表示した信号は滑らかになっているのが確認できまる.また周波数解析の結果より300Hz以上の高周波成分がカットされているのがわかる.

図2:高圧空気がノズルによって加速された後,衝撃波が発生している様子の一例

図3:圧力変動の時間的は変化とその周波数解析の結果

 

〇今後の課題
今後はデジタル処理とそれを使った制御系の構築に適したFPGAをさらに応用し,高圧空気とピエゾ素子を組み合わせて最適制御のシステムを構築する予定である.