電気通信大学 大学院情報理工学研究科 基盤理工学専攻 牧研究室 研究員

北田 昇雄

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白血病抑制活性を示すシーズ化合物群の開発

▼研究概要
急性Tリンパ芽球性白血病(T-ALL)は難治性希少白血病であり、分子標的薬がいまだに存在しないため、特効薬開発が急務となっている疾病です。当研究室ではT-ALLに抑制活性を示す天然化合物をもとに、構造を簡素化した低分子化合物を有機合成することにより天然化合物と同等以上にT-ALL抑制活性を示すシード化合物を多数保有しております。T-ALLに限らず、他の白血病に活性を示す化合物も幅広く保有しておりますので、これらの材料の創薬開発やさらなる用途探求に意欲的な企業/研究所を歓迎します。

▼技術内容
T-ALL及びその他白血病細胞に増殖抑制活性を示す低分子化合物ライブラリの提供、また類似化合物の合成を行うことが可能です。
T-ALL細胞に抑制活性を示す低分子化合物を創製するために、活性を示した天然物化合物の構造を参考に、多数の低分子化合物を合成し、T-ALL及びその他白血病細胞に対する細胞抑制活性に対する構造活性相関を取得いたしました。
構造活性相関を取得するために、
・天然物より簡素な構造であること
・天然物より高い活性を持つこと
・天然物より白血病細胞に対する特異性が高いこと
これら3つを目標として合成を行いました。
天然化合物の複雑な構造を、活性を下げることなく簡素化するために、部位ごとに分けて構造改変を行うことで可変部位を特定し、置換基による効果を明らかにいたしました。その結果、70種の化合物ライブラリを構築し、T-ALL及び他の白血病への抑制活性に関する構造活性相関を得ることに成功いたしました。

この情報をもとに高活性化合物であるRa#61の創製を達成し、構造を大幅に簡素化した上で、天然化合物よりもIC50を1桁以上向上し、また、特異性の向上にも成功しております。

今現在もこの化合ライブラリをより良いものとするため日々更新しております。
当研究室の有機合成技術を用いて任意の化合物を合成することも可能です。

▼技術の強み
T-ALLは近年多くの研究者によって研究が進められているものの、その詳細な発病機序は解明されておりません。そのためにT-ALLの分子標的薬の開発も思うようには進められておりません。しかし、その中でも有機合成を軸にT-ALL細胞に抑制活性を示す多くの化合物を保有していることが当研究グループの強みであります。
また、化合物ライブラリをもとに最適化された化合物の合成も可能ですので、常に更新し続ける化合物ライブラリの提供が可能です。