東京電機大学 理工学部 電子工学系 准教授

荒船 龍彦

  • ものづくり
  • ライフサイエンス

可視光画像解析による血流評価システム

▼開発の背景
近年,我が国では高齢化および食生活の欧米化に伴い,糖尿病や高血圧などの成人病を背景に,閉塞性動脈硬化症などの末梢性動脈疾患(Peripheral Arterial Disease: PAD)と,それに伴う下肢難治性潰瘍患者が増加している.PADに伴う下肢難治性潰瘍は治療に難渋することが多く,下肢血流,創傷治癒の状況を考慮して軟膏治療や手術治療が検討される.治療の鍵となるのが組織血流の評価であり,現在tcpO2が主流の機器として用いられている.しかし同機器は原則として1地点の皮膚酸素分圧を測定する機器であり,実際の治療に際して足趾全体の血流評価を行うためには複数解の測定を行う必要があり,スクリーニングの手技としては煩雑であり時間を要する.また現存するものはいずれも工学であり地域におけるこれら疾患の治療の主体となる中核病院,予防医療の主体となる医院やクリニックでは入手が容易でない.そこで,本研究では,PADに起因する下肢難治性潰瘍の治療成績向上を目的とした,経皮酸素分圧測定(tcpO2)に代わる,新たな表在血流の虚血スクリーニング手法の開発を目的とした.

 

▼血流変化計測と血流動態把握
開発した血流動態導出システムの評価実験を行った.健常者男性2名を対象に,左右どちらかの下肢,外顆直上に血圧測定用のカフを巻き,第Ⅰ趾にパルスオキシメータを装着する.250~300mmHgの圧でパルスオキシメータの値が駆血により低下しプラトーを示す時点まで,もしくは最大5分間の駆血を行い,その後駆血を解除する.解除前より連続的にビデオカメラを用いて足背の色調の変化を動画として30fpsで記録する.測定時間は2002年にJournal of American College of Cardiologyによって報告された血管拡張性反応(FMD)のガイドラインに準じて,駆血解除前から15秒刻みで2分間を目処に行った.
測定された動画から開発した画像処理アルゴリズムを用いて血流動態導出の画像処理を行った.
画像処理のパラメータについては,ノイズが目立ず,かつ画像中の赤色色調変化領域を十分把握できるように試行を繰り返し,最適値を導いた.

 

▼考察
下肢の駆血,駆血解除の処置により,足趾皮膚表在色調における赤色成分の変化を強調するよう画像処理を行い,2次元として血流動態が活発な領域の可視化を行った.血流変化と相関が高いと考えられる領域の強調画像を取得した.
足趾の付け根の赤色変化の上昇に関しては、足の動脈のアーチから指動脈が分岐するところであり、分岐直後は指動脈2本分が再潅流で血流量が増えるために、特に変化度が上昇した可能性が示唆された.

 

▼結論
PADに起因する下肢難治性潰瘍の治療において,経皮酸素分圧測定(tcpO2)に代わる,1点ではなく,同時多点の新たな表在血流の虚血スクリーニング手法の確立のため,ビデオカメラによる駆血・駆血解除の皮膚表在色調変化計測と画像処理を組み合わせたマッピングシステムを構築し,健常者の下肢におけるシステム評価実験を行った.
その結果,駆血解除における血流動態の活性化によって皮膚表在色調の赤色成分の変化から,血流動態領域を間接的に動画として取得することに一定の成果をみた.