法政大学 生命科学部 環境応用化学科 教授

明石 孝也

  • その他
  • 環境/アグリ

還元噴流床を用いたレアメタルの分離・回収

当研究室では,使用済みの廃電子部品や機械部品,いわゆる都市鉱石からレアメタルを分離・回収するための還元噴流床装置を開発した。これまでの研究で,使用済みLED照明からのガリウムの分離・回収と金の濃縮をターゲットとした技術開発を行った。現在は,自動車用排ガス触媒の廃棄物からのパラジウムの濃縮も視野において,還元噴流床装置の改良を行っている。

省エネルギーや光熱費削減を目的として,2011年以降に大量のLED照明が市場に普及した。その後の技術開発によりLED照明の発光効率が高まると,2015年秋頃からLED照明の更新がなされ,旧式LED照明が大量に廃棄されるようになった。そこで,法政大学は企業と連携してLED照明のリサイクルスキームの構築を行った。このリサイクルスキームのうち,アルミニウム,銅,貴金属などに関するリサイクルの事業化は2016年から始まった。

また,LED照明の発光部に用いられるLED素子には,レアメタルのガリウムと金が用いられており,これらをリサイクルすることは循環型社会を構築するための重要な課題である。当研究室では,LED素子中にGaNとして含有するガリウム成分を酸化ガリウムとして分離・回収するため,熱還元-酸化法を利用した噴流床式反応炉を用いた装置設計を開発した。GaNから構成される廃LED素子からガリウムをGa2O(g)として分離するために,極微量の酸素を含む還元ガスを大量に供給する必要がある。本装置設計では,これを実現するために,噴流床式を採用した。なお,この方式では,分離されたGa2O(g)は噴流床の上方で酸化され,ガリウムはGa2O3 (s)として回収される。また,本装置設計に基づき卓上型リサイクル装置を製作し,この卓上装置を用いて廃LED素子から酸化ガリウムを分離・回収することに成功した。この装置を用いた処理によって,LED素子に含まれる金は焼成残渣として噴流床部で濃縮される。なお,LED素子に含まれるGaNは酸に溶解しにくい。よって,LED素子からのガリウム成分をリサイクルする場合,希少金属のリサイクルで一般的に用いられる湿式精錬の手法よりも,当研究室で開発した還元噴流床を用いた乾式製錬の手法に優位性がある。

現在,次世代パワーデバイス用の半導体Ga2O3の開発が活発に行なわれており,ガリウムのリサイクルに対するニーズも高まると予想される。また,本技術はインジウムの分離・回収にも適用できるため,Cu- In-Ga-Se化合物半導体(CIGS)太陽電池やIn-Ga-Zn-Oアモルファス半導体(IGZO)液晶ディスプレイや酸化スズドープ酸化インジウム(ITO)透明導電膜を用いた電子機器からのガリウムやインジウムの分離・回収への活用も想定される。

さらに,2020年より,還元噴流床を用いたレアメタルの分離・回収の研究として,自動車用排ガス触媒の廃棄物からのパラジウムを濃縮するための研究も開始した。法政大学生命科学部山本兼由教授らがレアメタルを蓄積する大腸菌のゲノム育成に成功し,この方法を用いて貴金属のパラジウム(Pd)を高蓄積することに成功している。そこで,当研究室では,このパラジウムを高蓄積する大腸菌からパラジウムをさらに濃縮し,大腸菌を炭素資源化するために,当研究室で開発した還元噴流床装置に改良を加えている。このプロセスは多量のCO2を排出することなく大腸菌を炭素資源化するために,CCU(Carbon Capture & Utilization)の観点からも重要である。