日本大学 理工学部 物質応用化学科 助手

原 秀太

  • その他
  • 機能性材料

ポリマーの靭性を飛躍的に向上させる添加剤

▼ 背景
有機無機ハイブリットポリマーにおいて,無機成分が持つ特性を最大限活用するためには,無機成分の濃度を高めることが必要である。
しかし、無機成分の過剰な添加は,ポリマーの機能である柔軟性,加工性、形状記憶特性などを著しく低下させる,つまり、無機成分の特性と高分子の特性は,トレードオフの関係にあり,材料を設計する際,これらの最適条件を探索しなければならない。

有機無機複合材料の開発において、両者の特性を引き出すためには,有機界面と無機界面の設計が重要となる。
特に、PMMA/titania複合材料は,PMMAとtitaniaの水素結合により架橋密度が増大し,靭性が低下するという課題があった。
この課題は,チタニアがナノサイズになるとチタニア表面積が増えるため,より顕著となる。
筆者らは,高融点(Tm=80°C)のイオン液体であるTetrabutylphosphonium Chloride (TBPC)とPMMAのエステル基が結合することを新たに発見し,このシステムをPMMA/titania複合材料に応用した。
その結果,TBPCがPMMAとtitaniaの結合を阻害し,この複合材料のガラス転移温度を低下させずに透明性(可視光透過率(>90%))・靭性 (破断エネルギーを28倍)を向上させることを明らかにした。
さらに、TBPCが形状記憶特性を改善することも見出した(Poly chem. 10(35), 2019)
しかしながら,この論文で使用したチタニアとPMMAを繋ぐ架橋点は共有結合であるシリル基をもちいていたため,溶融することは不可能であった。

▼ 特許の概要
この特許では,チタニアとの水素結合を切るTetrabutylphosphonium Chloride (TBPC)を添加剤として使用するだけではなく,チタニアとPMMAが熱解離可能な架橋構造を組むように5%の重量でアクリル酸が含まれたpoly(MAA-Co-MA)を用いることで,130℃の温度未満では架橋ポリマーとして振る舞い,130℃以上の温度では溶融するチタニアハイブリットポリマーを開発した。
チタニアとの架橋を導入する意味は,チタニアとPMMAの相分離の防止と形状記憶特性を持たせるためにある.チタニアとの相分離は,溶融成型しても確認できず,高い透明度を維持した。
これは,アクリル酸とチタニアの結合が熱可逆的であるため,130℃以上の領域では流動性を保ちつつ,部分的な架橋により相分離を防ぐために可能となる。
また,形状記憶性能は,130℃以上で成型された形を記憶し,90℃以上120℃未満で形を変形させ冷却した後,再び90℃以上120℃未満に加熱すると,99%の復元性を持って,130℃以上で成型された形に復元できた。
これらの成果は,アメリカ化学会のApplied polymer material誌に掲載が決定されている。