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平成30年度大学等における産学連携等実施状況 レビュー

文部科学省にて「平成30年度大学等における産学連携等実施状況について」が掲載されています。簡潔にレビューします。

https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/1413730_00005.htm

 

主な概要として下記の通りまとめられています。

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(1) 研究資金等受入額
○研究資金等受入額(共同研究・受託研究・治験等・知的財産)は、約3,432億円と、前年度と比べて約143億円増加(4.3%増)した。

(2)民間企業からの研究資金等受入額
○民間企業からの研究資金等受入額(共同研究・受託研究・治験等・知的財産)は、約1,075億円と、前年度と比べて約115億円増加(12.0%増)し、本調査開始後(平成15年度以後)、初めて1,000億円を超えた。
○このうち、共同研究については、約683億円と研究資金等受入額全体の約63.5%を占め、全体の伸びを牽引している。

(3)民間企業との共同研究
○民間企業との共同研究において、「研究費受入額」は約683億円と、前年度と比べて約74億円増加(12.2%増)した。また「研究実施件数」は27,383件と、前年度と比べて1,932件増加(7.6%増)した。受入額・実施件数ともに近年増加傾向にある。1件当たりの受入額は2,493千円だが、1件当たり1,000万円以上の共同研究に係る受入額は約329億円と、前年度と比べて約42億円増加(14.5%増)し、共同研究全体の半数近くを占めている(約48.3%)。

(4)知的財産
○特許権などの知的財産権等による収入額は約59億円と、前年度と比べて約17億円増加(38.6%増)した。このうち、特許権における収入については、約44億円と知的財産権等収入額全体の約74.2%を占め、全体の伸びを牽引している。

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全体的に実績は伸びていますが、伸び比率で考えると共同研究費の増額分、特に大型共同研究の伸びが目立っていますが、更に目立つのは知的財産で、前年度と比べて38.6増は特筆できます。

 

個別実績(機関別データ)については、新規の区分のデータが増え、前年度版よりもかなり細かくまとめられています。特別試験研究費税額控除のexcelデータなども掲載されています。

 

平成29年度大学等における産学連携等実施状況について

https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/sangaku/1413730.htm

 

また、経済産業省にて大学ファクトブック2019が公表されています。突き合わせながら見ていくと実態をより理解しやすくなります。

https://www.meti.go.jp/policy/innovation_corp/daigaku_factbook.html

 

下記の概要資料をもとに大枠部分をまとめ、レビューします。

https://www.mext.go.jp/content/20200109_mxt_sanchi01_000003783_02_01.pdf

 

【民間企業との共同研究】 ※7ページ

・実績はおよそ比例的に年々伸びていますが、受入額の伸びは平成29年度は15.7%増に対して平成30年度は12.2%増、実施件数の伸びは平成29年度は10.6%増に対して平成30年度は7.6%増と若干伸び傾向が鈍化しています。少し気になりますが、最近では1企業で年間10億円の共同研究費という事例もニュースになっているので、まだまだ伸びる要素はあります。一方、伸びを牽引しているのが一部の大学なのだとすると、多くの大学は実績増加傾向はスローなのかもしれません。

 

【知的財産権等収入額】 ※11ページ、12ページ、13ページ

・前年度38.6%増と大幅に増えています。伸びを牽引しているのはやはり特許権です。

・内訳をみると全体的に伸びていますが、ランニングロイヤリティが大幅に増えているのは特筆でき、今後も安定的に増加していく見込みが高いと言えます。

マイルストーン収入・不実施補償が大幅に増えており、その要因は気になる点です。

・特許出願件数も昨年よりおよそ10%弱、増加しています。

 

【クロスアポイントメント制度】 ※14ページ

・クロスアポイント制度を導入した機関が前年より25.3%増です。国立大学はもともと多くが導入していましたが、私立大学の導入数増加が目立っています。

・一方、他機関からの受入は「企業区分」に対して「企業以外の区分」が圧倒的に多い状況です。

 

【URA】 ※15ページ

・URAを配置している機関数は169機関と、前年度と比べて23機関増加(15.8%増)しており、このうち、URA配置人数は1,459人と、前年度と比べて234人増加(19.1%増)しています。

・一方、国立大学のURA人数はほぼ横ばいで、公立大学等、私立大学等が特に増えています。新しく組織整備する機関が増えているように感じられます。もともと私立大学の方が国立大学よりも数は2桁多いため、今後も増える可能性が高いと考えられます。一方、研究大学強化促進事業の主な支援対象は旧帝大の国立大学が中心であり、また、研究資金等受入額の伸びを牽引していることもあり、その状況下でURA人数が横ばいなので、この事業が終了したときに国立大学のURA数がどうなるかは注視が必要です。

 

【個別実績】18ページ~

・「民間企業からの研究資金等受入額」で大阪大学が全国1位となりました。19ページを見ると共同研究件数が東京大学が500件以上多いことが分かり、それを踏まえると組織対組織に関わる継続的な取組が実績に表れています。

・上位10位までの順位は前年度とほとんど変わりません。一方、早稲田大学の順位増が目立つように映ります。

・「知的財産権等収入」では東京大学が12億円を超えました。平成29年度は約9億3千万円だったため、大幅に増えています。大阪大学は約6億7千万円と3位となり、平成29年度は約2億3千万円だったためおよそ3倍、名古屋大学は約3億5千万円と4位となり平成29年度は約1億17百万円だったためこちらもおよそ3倍となっています。この2校以外では、信州大学が約1億49百万円と7位になり、平成29年度は約48百万円だったためこちらも約3倍となっています。他、横浜市立大学、三重大学、名古屋工業大学が大幅に実績を増やしました。東京大学が大幅に増えたことはもちろんですが、TLOの部署が無い大学が大幅に成果を出している傾向が見て取れます。なお、名古屋大学に関しては昨年の日本経済新聞にて特許収入が大幅に増加したことが掲載されていました。

 

名大、特許収入4倍に 東大・京大に迫る

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO48846430S9A820C1L91000/

 

・特許権等実施収入でみると、京都大学が単独2位です。振り返ると2015年度の日本経済新聞では下記のように掲載されています。京都大学のips細胞に係る知的財産権活用については「iPS アカデミアジャパン株式会社」が関わっていますが、昨今ニュースに取り上げられているとおり、ipsの実用化が注目されます。

 

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京都大が約4億1千万円で続き、2大学で全体の5割弱を占めた。京大は「特許収入の半分以上がiPS細胞関連」(広報課)といい、1件あたりの収入は約57万円で東大(約35万円)を上回った。

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大学の特許収入、初の20億円超 13年度、産学連携が進展

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG26H9S_W5A120C1CR8000/

 

大学の知的財産収入が増えたということは、大学のシーズの社会実装が一段と広まっていることを意味していると考えられます。今後も更なる普及が期待できます。