株式会社キャンパスクリエイト

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連携事例

テーマ名 生体組織凍結保存袋およびその封止技術の研究開発と事業化
企業名 上田製袋株式会社
参考写真
生体組織凍結保存袋およびその封止技術の研究開発と事業化
生体組織凍結保存袋およびその封止技術の研究開発と事業化
概要

 

(連携のきっかけ)
2009年のインターフェックスジャパンのブースで初めてレーザー溶着技術に出会いました。弊社は主として医療用の滅菌バッグ(袋)を熱板溶着で作る会社ですが、新たな溶着方法として無限の可能性を感じ、すぐにコンソーシアムに入会しました。

 

(技術内容)
ヒートシンク式レーザ樹脂溶着法は、透明な樹脂フィルム同士をその表面に密着させた放熱板(ヒートシンク)を介して熱を適切に放熱させることで、フィルム表面は損傷させずにきれいなまま、内部のみを溶着させる技術です。その主たる溶着対象材料の一つであるフッ素樹脂は、優れた物理特性、化学特性を有するものの、その融点の高さから従来の熱版方式では溶着が困難でした。そうしたフッ素樹脂がきれいに溶着できることは画期的な技術と言えます。
一方、一部の医療分野においてフッ素樹脂が活躍し得る領域を見出すことができました。それは生体組織移植分野で、検体からご提供頂いた生体組織(例えば心臓弁、血管など)を凍結保存しておき、それらの移植が必要になった患者さんが現れたときに、凍結保存していた生体組織を常温解凍して移植に用いる、という治療がすでに開始されています。ここでは、生体組織の長期安定保存を実現するために液体窒素温度(マイナス196℃)という極低温環境での保存が行われていますが、その保存用の容器(バッグ)の素材としては適切な選択が必要になります。即ち、一般的に多く流通しているバッグ用の樹脂素材、塩化ビニル、ポリエチレン、EVA樹脂などは全て、液体窒素温度では脆化し、割れたり破れたりする恐れがあります。生体組織の保存用バッグにおいて破れが生じると、内部に保存されている貴重な組織が汚染され移植に使用することができなくなりますので、生体組織の凍結保存用のバッグには液体窒素温度での高い信頼性が求められます。

 

この点、フッ素樹脂は液体窒素温度にも耐えられる素材であり、フッ素樹脂を用いた凍結保存用バッグの実現は、最も好ましい解決策となります。そうしたフッ素樹脂フィルムを使いたいとのニーズと、その難加工性を解決するヒートシンク式レーザ樹脂溶着法は、非常に良いマッチングとなりました。

 

なお、一部の外国製品でフッ素樹脂を用いたバッグが提供されていますが、これらは価格が非常に高く、更に海外製品として供給も不安定で将来的な不安もあり、国産バッグの安定的な調達が望まれています。本テーマは、医療用機器/器具の国産化という大きな方向性にも合致するものです。

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※生体組織保存液を封止した凍結保存バッグの一例

 

(研究開発の成果の概容)

ヒートシンク式レーザ樹脂溶着法を応用したフィルムの溶着装置を試作しました。これは、レーザーとしてCO2ガスレーザー(赤外波長)を採用し、大面積ヒートシンクが組み込まれており凡そA5判程度の大きさの溶着対象フィルム(ワーク)に対応できます。ワークはXYステージ上に配置され、レーザーの点描画の特性を生かして直線や曲線の自在な溶着線の加工を可能としています。従ってバッグの用途によって大きさや形のフレキシブルなデザイン作成に対応できます。

 

一方、生体組織を保存する医療現場、研究現場などでは、オンサイトで封止するための手段も必要となります。我々は、移動可能な病院向けの封止装置も開発しています。バッグに保存液などの液体を入れた状態で、中身をこぼさないような形で装置にセッティングでき、同じくレーザーによりそのままバッグの口を閉じることができます。

 

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※溶着装置外観(開発品)

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※病院向け封止装置(開発品)

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※バッグ形状のフレキシブルな作製例

 

フッ素樹脂にも多くの種類があり、CO2レーザとの組み合わせでは得手不得手もありますが、FEP(四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合樹脂)、PFA(四フッ化エチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)などは非常に相性が良く、最適溶着条件の導出のノウハウなども蓄積しています。適切に溶着されたフィルムは、その断面を観察しても2枚のフィルムの向き合う中心部の界面だけが溶けて一体化し、表面は熱損傷していないことが示されます。

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※100μ厚FEPフィルムを2枚重ねて溶着した例

 

詳しくは下記をご参照ください。

透明プラスチック同士を表面がきれいなまま接合するレーザ溶着技術

http://www.open-innovation-portal.com/corporate/manufacture/lawp.html

 

(実用化状況について)

展示会や弊社ウェブサイトなどを通じて、徐々にですが本技術が認知されてきており、「フッ素樹脂材料でこんなものを作りたいがこれまで対応できるところがなかった。」といった試作依頼なども頂くようになりました。まだまだ製品として確立した形での上市には至っておりませんが、試作のご要望にもお応えする中で弊社としてもノウハウを積み上げつつ、技術のブラッシュアップに努めております。

 

(特許取得)

「凍結保存用バッグの製造装置」「凍結保存用バッグの封口装置」「凍結保存用バッグ、および封入方法」についてそれぞれ特許を出願し、「封口装置」については先行して国内特許が成立しており、更に海外出願の手続きも進めています。

 

(東大との共同研究)

東京大学医学部附属病院組織バンクとの共同研究、東邦大学医療センターとの共同研究を進めており、関係するドクターの方々にアドバイザとして参画頂くことで開発推進体制を構築しています。

 

(キャンパスクリエイトから受けたサポート内容)

コンソーシアムでの情報提供は大変参考になります。また具体的な装置開発においては、レーザー溶着技術の適用に関する技術サポート、溶着手法に関するノウハウの提供など日常的にご支援を頂いています。

資金面では公的補助金の採択が非常に大きな支えとなってくれていますが、そうした補助金への応募に際して、申請書の作成など助成金事業での相談サポートも頂いています。結果、

ものづくり中小企業・小規模事業者試作開発等支援補助金(中小企業庁)、おおさか地域創造ファンド重点プロジェクト(大阪産業振興機構)、医療機器研究開発支援事業補助金(大阪府)、中小企業知的財産活動支援事業費補助金(ジェトロ)等に採択され、資金面では大いに助かりました。

 

(研究者と連携した感想)

黒崎先生は非常に温厚な方で、何かにつけご相談しやすくご援助賜りました。先生は民間企業に籍を置いておられたこともあるので、弊社の立場などもご理解頂き、的確なアドバイスを頂いております。また、佐藤先生には日頃より主としてご担当頂いております。お忙しい中大阪へも度々お越し頂き、技術サポートから企業連携の仲介、補助金対応支援まで適切なご指導を頂き、よろずご相談できる心強い存在です。特に技術的なサポートは大変ありがたいです。レーザーのみならす周辺情報や技術も教えてもらえるので、社内への技術導入に役立っています。

 

弊社の主力事業である滅菌バッグを各医療機器メーカー様に継続的に供給していくことに加えて、凍結保存用フッ素樹脂バッグを事業化することで、我が国の医療に貢献し、弊社の経営理念にも述べている「安心の笑顔の起源」となる会社を目指しています。今後とも一層のご支援ご鞭撻をお願い申し上げます。

 

上田製袋株式会社 代表取締役 上田克彦